40 / 87

真人⑰

 だが、そう思うことが無駄であることを、真人は嫌というほど知っている。年々膨らみ続けているという太陽は、いつか爆発し、地球をも飲みこんでしまうらしい。  爆発して亮治を飲みこんでしまう前に、真人は嫉妬心と独占欲という名の太陽の膨張を、止めなければならないのだ。止められなかった場合には、自分も亮治も、死んでしまう。  亮治の体にしがみつき、真人はわざとらしく喘ぎ声をあげた。いや、わざとではない。正確には今まで抑えようとしていたリミッターを外したのだ。抑えることをやめたのだ。  真人の奔放な反応に、亮治の興奮度合いも増したようだった。 「は、く……っ、俺、もう……っ」  真人の中で、亮治のものがひときわ大きくなる。カリの部分が入り口で引っかかっては、いいところ目がけて突いてくる。  真人は内腿に力を入れ、その衝撃と快楽に耐えた。耐えれば耐えるほど解放したがる欲望。それを解放したのは、亮治の手だった。  亮治は真人を突きながら、解放したくて震えている真人のそれを手に収めると一緒に扱きはじめた。ぐちゅぐちゅといやらしい音が、さらに大きくなる。 「いっしょ、は……っ、イ……っ」 「はあっ、はあっ、イッて真人……イッて……っ」 「や、あ……っ」  互いの吐息が最高潮にまじりあったその瞬間、真人は亮治の手の中で射精した。ほぼ同時というように、亮治も真人の上でグッと息を止める。腰を奥に押しつけるように、逃がさないように……。  真人は自分の腹に、生暖かいものが注がれているのを感じた。ずっと突かれてよがることしかできなかったその場所。そこに注がれる、亮治のものの存在を――。  真人の中でたっぷりと射精した亮治は、ゆっくりと自身を引き抜くと、真人から逃げるように体を離した。ティッシュ箱からティッシュを数枚抜き取り、どちらのものともわからない体液で濡れた自身を拭く。  そして真人の視線から逃げるように背中を向け、 「ごめん、俺、中で……」  と言葉を濁した。  真人も淡々と、ティッシュでベトベトになった下半身を拭く。  きっと亮治は、罪悪感に慣れるまで、必ず謝ってくるのだろう。抱いてごめん。めちゃくちゃにしてごめん、と。  そんな亮治に返せる言葉なんて、真人には一つしかない。  真人は立ち上がり、部屋の片隅に放置されていたティッシュを捨てるように、交わった証拠となるティッシュをゴミ箱に放り込んだ。そして、事務的な声で言った。 「べつにいいよ」

ともだちにシェアしよう!