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覚悟のふたり②
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亮治を見つけたい。そうは思っても、どこを探せばいいのか、真人にはわからなかった。仕事が終わった後、おとなしくなったスマホからとりあえず亮治の高校時代からの友人・牧野に連絡してみたけれど、
『しばらくあんな男とは会いたくない』
と、電話越しに語気を強めて言われてしまった。
せめて亮治が足を向けそうな場所だけでも教えてほしいと伝えると、牧野は言った。
『亮治を見つけ出したところで、真人君が幸せになれるとは思えないよ』
言われなくてもわかっている。これは賭けなのだ。だからこそ、真人はきっぱりと言い返した。
「幸せになりたいなんて、思ってません」
真人がそう言うとは、思っていなかったのだろう。電話の向こうで、牧野が黙った。
「ただ、普通の話をしたいだけなんです。『こう』なってから……僕たちは言い争いしかしてこなかったから」
『もしも君達が一緒になったらどうなるか……君はわかってると言いたいんだな』
「はい」
『すべてとは言わない。けど、多くのものを失うことになってしまうかもしれない。ご両親だって――』
「心配しなくても、父と母を捨てる覚悟なんて、とっくにできてますよ」
『……』
「誰を好きになってしまったと思ってるんですか」
そう言うと、緊張に張られていた牧野の声がため息とともに緩んだ。
『……強いな、君は』
そして牧野は亮治が行きそうなところを予想してくれた。
『居場所を失った人間は、死のうともしない限り、たいてい人の多いところに行く。亮治はそうだな……辞めたとはいえ会社があったわけだから、とりあえず新宿に出てるんじゃないかな』
そんなザックリした予想が、真人にはありがたかった。いる可能性のある街が絞られただけでも、手がかりになる。
『それに、亮治のスマホには男が出たんだろう。得体の知れない男を何日も部屋に泊める男がどれだけいるか……少なくとも、僕は一、二回会っただけの無職の男を、家に泊めたりはしない』
「ということは、顔見知りということですか?」
『その線は十分ありえるよ。前に関係をもっていた男とか……。それか、その手の人間が集まるところを物色して、泊めてくれる相手を探したか』
「その手の人間……?」
『ああ。いろんな性癖の受け皿としてある場所――新宿だと二丁目界隈がそういうところだ』
多種多様な性癖の受け皿になっている場所――。話には聞いたことがあるけれど、もちろん真人は行ったことがなかった。
家族にも友人にも見放された男が逃げるには十分な街だと、牧野は言う。
真人は聞けば聞くほど、亮治がそこにいるような気がしてならなかった。スマホを持つ手が震えた。
『探しに行くのかい?』
そう訊かれて、真人は迷わず答えた。
「行きます」
『そうか。なら、気をつけて。本当にいろんな人間がいる場所だ。歌舞伎町などの他の場所に比べて女性には安全かもしれないが、その気のない男からすると、少し驚いてしまうようなことがある場所でもあるから』
「いろいろ教えてくれて、ありがとうございます。先生は行ったことがあるんですか? その、新宿二丁目というところに」
牧野はフッと乾いた笑いを鼻から洩らした。
『秘密だ』
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