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第3話 · 直也の遍歴 ~ その2

悲 恋 高校時代への懐古 ……………   1992年秋〜 冬 札幌 · ススキノ……… 。   ……‥直也の高校時代は、1年までは、まあまあの人生だったが、 2年になってからは、ひどい有り様だった……。   …‥…特に、2年の秋頃の試験で、クラスでの順位が、 45人中44位になったときは、 頭の中が、 が〜んとなり 直也は思わず " 俺よりできなかったのって誰だろう ?! "と、あたりを見回した………。 試験が近づくと、仲の良い女子生徒からは、 「 勉強してるの 〜 ?!」「 遊んでばかりいるんじゃないの〜 」 とよく、注意を受けた…‥ 直也は 「うん ! まぁまぁ!」と答えてはいたが、実際は、 ほとんど勉強に、時間を割くことはなかった………。 ……… ……直也は、 家 ( 自宅は、すすきのの一角 ) の近くという事もあり、 ススキノやそれより北側のの繁華街を、週の半分以上は 徘徊していた…… クラブ、カフェバー、ライブハウスなどを廻り…… 音楽を聞き、酒に酔い、踊り呆け、 …… ショッピング、ビリヤード、ダーツといろんなことをした…… 軍資金は、母親の酒屋の倉庫から 酒を、 箱ごと頂戴し ﹙悪い事とは解ってたが﹚ ススキノの飲み屋さんに、6~7掛で売ってみたり、 母の酒屋の配達の手伝いをしたりで、稼いだ………      …………………。 ………… …………………   ……高校は、真面目な連中が 8割、 夢やぶれた系2割といったかんじであった…‥ 制服はなく、私服で良かったのだか、 ヤンキーになりそうな子とかは、皆無であった……… 中学生の頃のような…‥ ……男同士の恋愛ごっこを… 行動で起こせる雰囲気は、まったくなかった。 …‥‥直也は一学年下のきれいな子を、離れた所から見つめたり、   体育館で遊んでいる、タイプの先輩を目で追ったり……  そんな、単調な日々を送っていた………。 ……………………… ……月日がだいぶ過ぎ去った、2年生の終わり頃……   銀世界の札幌の、繁華街の雑踏を、歩きながら、 直也は、午後3時過ぎには、都心部の南2条通りに面した、 真っ黒く塗装した木製のドアを押していた…… ‥…外から入った瞬間は、中が真っ暗で、店内の様子が全然わからないが‥… しばらく慣れてから、左側にある、 10m位のカウンター席の空きを探して、座る…‥   ……慣れるといっても、照明はとっても暗く、カウンターの中の、   2、3か所の下向きライト、カウンターバックの食器棚と 数枚のポスターを照らす、わずかな光量のピンライト、   ボックス席は、小10箇所程で、ロウソクの光ほども無い位、   暗いライトが、数箇所、置いてある……‥。    ロックや R&B が、ガンガンなっていて、会話はほとんど出来ない……。   客のほとんどは、一人ないし、二人の来店で、 店内は、流れる音楽以外は、いたって静か。 音楽に浸るにはピッタシの場所といえるだろう‥…… 。   ……‥カウンターの奥のほうから、 紺色の店のロゴ入りT シャツをつけ、 細身のネイビーカラーのブルージーンズを履いた、   きれいな顔の男性スタッフが、 『 にこッ 』としながら、近づいてくる …‥…。 ……もう1ヶ月位前から、何回か来ているので、 顔を覚えてしまった、憧れの兄ちゃんだ…… 年齢は、恐らく、22~23歳あたりだろう …… ………カウンター越しに、顔を寄せてきて、自分の耳を直也の口に近づける…‥ 一瞬、その耳にキスしたくなるのをグッと抑えて、 その人の耳に「 コーヒー 」と伝える………頷きながら、にこッ と笑う彼。 ……‥そうなのだ 〜直也は、今、この人にちょっぴり恋している最中…… なるべくコンタクトを取りたくて、数回、注文を頼むようにしている…… コーヒーの後は、ビールや洋酒を飲んだりしながら、 3~4時間以上いるのは当たり前だった ……… 。   ……翌日、 ……この人の名前を知ったのは、 違うスタッフに、鎌をかけて聞き出したからだ…… …… ラストまで残って音楽が終わった直後 〜   直也は、カウンター内の、憧れの彼ではない、違うスタッフに聞いてみた……‥ 「あれッ、きのう昼間いた人、誰でしたっけ~ 名前忘れちゃった !!」 「 えっ、誰のこと ? 」 「…CD 頼んでて〜、」 「 昼間だったら …『 名取 』 …かなぁ ? 」 スタッフは、チラッとシフト表を見ながら、「 何時ぐらい ? 」 「 昼3時過ぎには来たから… 」 「 じャ、やっぱ〜 名取 だ、…あした入るよ〜6時から ! 」…… 「 どうも、すみませ~ん 」直也は会釈しながら、ほくそ笑んでいた……    この店の音楽も好きだったが、せっかく行くのなら、 なるべくは 名取さんのいる時間に、行こうと思っていた…‥ ………翌日、 夜 9時頃に店に着いた直也は、 例のあこがれの彼『名取さん』が、カウンターの一番奥、背中を向けながら、 次に流す曲の、セッティングをしているのを見つけた。 ……‥直也は、ウキウキしながら、奥の方まで歩き、  カウンターの椅子を引いて、席につく……  何気なく振り向いた、名取さんと、目が合う‥…  ニコ ッと笑いながら顔を近づけてきた、名取さんに、ビールをオーダーする……… ……日付が変わり、閉店の時刻が近づいた頃には、   直也は、ビール、バーボン、その他の酒のせいで、   結構酔って、ハイテンションになっている……   ……閉店20分前、名取さんが、 お客さんの会計や店の後片付けをしだすと、   直也は、音楽を聴きつつ、名取さんの姿を追いかけてしまう……… 店の閉店時間が済んで、しばらく経った頃、 一段落ついた名取さんが、缶ビール片手に、  直也の隣の席へと来る…‥ 「 最近、よく来てるね?学生さん?どんな曲聴くの?」   直也は、高校生という事を隠して、 名取さんの質問にたどたどしく、答える…‥‥  内心、名取さんの、きれいな横顔に見とれているのを、感づかれないようにと 思いながら………  ‥‥…    ぽーっとしている直也に、 突然、名取さんが、 「 今度、飲みにでも行く 〜 ?」と誘ってくれたので、……… 直也は思わず答えた…「 うん… !行く〜 !」……  願ってもない、展開に、直也は天にも昇る気持ちだった…… ………………。  …………………… ………………ところで、地獄まで落ち込んだ高校の成績については、 直也は、このままでは、まずいと思い、以前よりは時間を削くようになった。 クラスで仲が良かったメンバーは、 良い成績の者が多く、直也に勉強するように声がけしたり、 勉強会を開いて、サポートしてくれたりと、 直也はとても感謝していた。 「 こんな、お馬鹿な俺なのに、いいのかなぁ~ 」と………。 ………この高校では、クラスのほとんどの者は、2年生の終わりまでに、 3年生のカリキュラムの、3分の2位は終わっていて、 これからは赤本の問題を解いたり、予備校の講習会に出たりして、 大学受験まっしぐらなのだ…… ……… ……但し、直也は3年生の勉強をしっかりしないことには、 卒業も危うい。これじゃ、落第するかもしれないとの危機感を、抱き 毎日の勉強のスケジュールを、繊密にたて、一応は、実行している…… ………………………… ……………………このあたりで、名取さんとの、話に戻すと……… ………この日は、名取さんから、酒を飲みに行く誘いを受けてから、 半月後の夜で、直也は、もうすぐ春が来そうな札幌のネオン街を、 急ぎ足で歩いてる…… そう!! きょうは、約束の、当日!!…… …いつもより、時間をかけて体を洗い、オーデコロンもつけ… 下着はディーゼル、そしてリーヴァイスのブルージーンズ、 上はカステルバジャックのTシャツと、レザーのブルゾン、 …………まるで、何かを期待している様な、このワクワク感。…………… …‥深夜11時を、わずかに、まわろうとしている‥… いつもの様に、店のドアを開け、 カウンターの奥まで進み、椅子に座る…… 目の前の、レコードの入れ替えしている後ろ姿が見え、 名取さんと分かり、 ジーンズに覆われたそのカッコいい尻のあたりを見詰める…… ……‥名取さんが、パッと振り返ったので、あわてて、 違う方に、目を反らす……  ……‥いつもと同じ、優しくてキレイな微笑み……… ……そして、暗がりの中、近づいてきたその耳に、 「 コロナ 」とオーダーし、今かかっている曲に入り込んで行く……… きょうに限って言えば、目的は、音楽と名取さん、半分づつだった…… ……………… ……………… ( …… この店は、洋楽を、レコード& CDでかけながら、 喫茶兼バーの営業といったかんじで …… フードはほとんどなく、コーヒーと酒がメインの店。 店内は真っ黒の内装で、照明もほとんどない……… ヴァンヘイレンや、セックスピストルズ、スティング、U2 など、 懐かしい曲をガンガンかけるので、直也は気に入っていたし、 ビールも世界各国のが置いてあり、選ぶのが楽しかった………… ) ………………来店してから、1時間半経った頃、 " もうすぐ、閉店だぁ "……直也は時計を見て、店内を見回してみる ……… カウンターの反対のハズれに一人と、ボックス席に、3組四人がいるだけ……… しばらくして、その人達も、5分後には、いなくなった…… ………閉店後15分位過ぎ、かたずけも終わり、音楽もOFFに…… 後はスタッフの着替えだけ……… 少し待っていると、「OK、お待たせ !! 」の声がしたので、顔をあげる…… そこには、ジーンズはそのままで、 シャツは超派手な、アニマル柄のTシャツを身につけた、 ハーフような顔の名取さんが、直也の目の前に立っている……‥ ……もう一人のスタッフが、着替えを終えてきたところで、 皆、ジャンパーやブルゾンに手を通し、店外へ…… 名取さんが、スタッフに、 「 じゃぁ〜、お疲れ 〜 」と声をかけ、別れる…… 「 少し歩くけど 〜 」 「ほとんど酔ってないから、大丈夫 !ぜんぜん OK 〜 」と直也 …‥ 。 南7条通りまで、とぼとぼと歩いた先の、ビルの地下…… 小さめのクラブか、ミュージックバー、といったかんじの店内へ……… ……‥名取さんの所とはまるっきり違う、ド派手な作りで、ビックリする……    照明は7色に光り、客も男女入り乱れて……‥ 踊り狂う者、べったりとくっつき、抱き合っている者、 スコールを何度もやり、へべれけに酔っている者、などなど…… 音楽の音、人の喧騒の声、どちらも大音量で、カオス状態………。 直也は、おもわず、「すっごい、店だね !!」と、感嘆の声を洩らした…… …… 二人は、まず、ビールで乾杯 〜 。 直也は、名取さんと会話する時は、顔を、 名取さんの顔に、ふっつくぐらいまで、近寄せなければならなかった…… それは、半分は嬉しかったが、半分は悟られないようにと注意をしつつの 行動だった……… ……… ……時間が過ぎてゆく中、直也は、楽しくて、 どんどん羽目を外して行く〜 ビールを何本か飲み…‥その後 、 直也はバーボン、名取さんはラム酒…… 何を会話したのかは、余り覚えていないが … ゲラゲラ笑い合ったのだけは、記憶にある……… ………〆は二人ともテキーラ、 6時に近づいた頃には、互いに酔いがまわり、 それぞれの肩に手を回していた…… …「 酔ったぁ〜 !、歩けないかも〜 !!」……「 オ~ライ、うちに来れば 〜 」 …… 名取さんに抱えられながら、タクシーに乗る…‥… その後は、記憶がそれ程なく…‥ パッと目を覚ましたら、 広めの シングルベッドの上に… 服を着たまま、二人とも横たわっていた…… 部屋は厚手のカーテンの為、結構暗い……時計を見ると12時を過ぎている。 ………直也は、首を回して 、見慣れない部屋の中を見廻す…… " あっ、そうか 〜!名取さんの部屋か 〜!! " と納得しながら 左側に目を向けた。  ……名取さんの横顔が見え、寝息をたてている。 タオルケットが腰の辺りに、ほんのちょこっと、まとわりついている。 …… 直也は、頭の中が段々、冴えてきて、この状況をどうしようかと 迷った……悩んだ…… " だけど、チャンスはそうあるもんじゃない!! 今しかないかもしれない 〜そう、 今なんだよ 〜! " ……と自分に言い聞かせ、奮い立たせる…… 決心した直也は… ……体を名取さんの方に向け、右手で 〜 タオルケットをゆっくりと、腰からはずし、膝元までさげる。 手のひらを…… 名取さんのジーンズの太ももの上に置いてみる…… ……反応はなにもなかった…… 次は、手を少しずつ、ジーンズの上を這わし、上の方へと動かす… ……ついに、その手を、名取さんの股間の上まで持ってきて停める…… …… 彼は、静かなまま、横たわっている‥‥… 直也は、その手に少しづつ刺激を加えていく〜 一瞬、彼が 「 う〜 ン 」と唸ったが、まだ無意識の中だろう……。 直也は自分が興奮していくのが、わかった。 無性に名取さんにキスしたかった 、そして、 彼の、股間のあの部分をまさぐりたかった ……… 。   ………少し経つと、彼の股間がなんとなく固くなって来てるような気がして、 " 錯覚 ?! " " もしかして、起きてる ?! " 横顔をチラチラみながら反応をみていた………。 ……この時の直也は、もう、自分を、抑えることができなかった。 自分の男の部分もガチガチに勃起し… 錯覚と思っていた彼の股間も 〜 今では………… はっきりとその硬さを、直也の手の中に伝えてきていた…… …………… 彼がもう、眼を覚ましているのはわかっていた… 目を閉じたままだったが、 まぶたが動いているし、寝息も聞こえなくなっていた…… ……直也は、思いきって、彼のファスナーを 右手の親指と人差し指で徐々に、下ろしはじめた…… 彼が突然起き上がって、怒ったり、 軽蔑した眼差しを向けないように、願いながら……… ……それでも、手は、だんだん大胆になっていた…… ……開いたファスナーの間に、指を差し入れ、 硬くなってきている彼の分身を確認する。 更に、ファスナーを完全に拡げて、ボクサーパンツの上の、硬くなった 膨らみを手全体でまさぐった ……‥ パンツに、名取さんの男の分身がクッキリと浮かび、 ドクドク脈をうっている…… ………刺激し続けていくと、パンツに染みが浮かび始めた…… 直也は、我慢出来なくなり、パンツの中に手を入れ…… 彼の分身を、 開放するべく、パンツを下の方へ、少しだけ降ろした…‥!! 熱い彼のものを握りしめた直也は、リズムを刻みながら、 上下にしごき始める!! 彼は、かすかに、呻き声を 1〜2 度、発しただけで、ほとんどが無言のまま………。  直也のほうが、かえって息使いが、段々荒くなっていく…… 直也は、そーっと上半 身を起こし、彼の、その熱いものを口に含もうと、 顔を 少しづつ近づけていく……… ……直也の唇が、彼の分身の先っぽに、触れた…… そして、直也は、舌を少し出して、彼の膨れ上がった鬼頭を舐め回してから、 次に、口を大きく空けて彼のものを、口に含んだ。 一瞬、彼から、「 ウッ !」っと呻き声が聞こえた…… 直也は、憧れの名取さんの、いきり立つ男の分身をしゃぶれる 喜びに浸りなから、一心不乱につづけていく…‥ ………だか、その時 !!!   「 ピンポーン ! ピンポーン ! 」と玄関のチャイムが鳴った… 直也は、驚いてパッと口を離し、すぐに起きあがり、トイレに駆け込んだ !! 名取さんもサッと立ち上がりジーンズを治しながら 〜 玄関へと向かう。 …… 玄関のほうから、解錠する音と、 「 よっッ 、寝てた 〜 ?! 」「 おぅ〜 、入れよ 〜 、今、起きた 〜 」 来客者との会話が聞こえる……トイレから出た直也に …名取さんが、その人を紹介する 〜 「 こっちは、バンド一緒にやってる 佐野 ッち! 」 「 こっちの彼は、店のお客さんで 、きのう一緒に飲んだ、直也君! 」 お互いに「よろしく 〜」と挨拶を交わし、椅子に腰かける。 しかし、直也は、気は動転しているし…… 恥ずかしさと気まずさが入り交じった、 なんとも言えない心境で、 もう、いたたまれない気持ちだった……… …… 名取さんは、何事も無かったように、 音楽をかけたり、ドリンクを出したりしているのだが…… リビングとキッチンを行き来している時……一瞬、直也と目があった。 普段とかわらぬ優しい目ではあったが、直也は、 「この、ホモ野郎〜 !!」とか、 「 君は、オカマちゃんか 〜 ! 」とか、言われている様な気がして 目を伏せたまま、顔を上げられなかった…… ………そして、 急用を思い出した風を装い、座って 5分もしないうちに、彼の部屋を出た……    その帰り道、" 何であんな事しちゃったんだろう、 " あ~あ、今度会うときは、どんな顔して、会えばいいんだろう ?!" と悔やむと共に、 " でも、もしかして、俺を受け入れてくれたの 〜 ?! 名取さん、もしかして、ホモっ気あるの ~ ?! " と、いろんな考えが交錯し、こんがらっていた。 …………… ………しかしながら、当分は、名取さんの所には、顔を出すつもりは、なかった…… 何故なら、希望的な憶測もあったが、 " 所詮、無理な話しだよなぁ〜、そっちの人だったら、こんなカッコいい人が、 ゲイの巷で、噂にあがってないわけないものね〜。"  ………直也は、自分にそう言い聞かせていた………… …………… ……………   それから、半月ぐらいはたった頃、 デパート1階のレコード& CD 売場で、名取さんにばったり会ってしまった…… 直也は、3年生スタートの日で、一人、ショッピングに来ていた…… 後ろから、背中をトントンされたので、 振り返ってみると、「 よッ !元気 〜?!」… いつもの、ニコッとした笑顔の名取さんが、そこにいた。 「 どうしてた 〜?最近 来ないね〜?!」と尋ねるので…‥ 「 ちょっと、体調悪くて … 」 「 そっッか ~ 、じゃぁ、体調良くなったらおいでよ〜 」……… 「 あの店さ 〜 テキーラ取ってあるって〜 」 直也は、微笑んで…‥ 名取さんの眼をみながら、「 うん… ! 」と答えていたけれど、 けれども、二度と、名取さんの前には、姿を出すまいと決めていた……‥ ……それは、レコード売場の奥にいた、 二十歳ぐらいの、きれいな女性が、 名取さんの側まできて……… 楽しそうに、そして嬉しそうな笑顔を名取さんに向けながら、 その彼の腕に、自分の腕を絡めたためだった…………… 名取さんが、その女性に直也の事を、 「 お店のお客さんの直也君 〜 」と紹介し、 直也にはその人の事を 「 地元の知り合い … 」としか言わなかった 。 だが、直也の作り笑顔は段々こわばり、 もう、この場にはいたくなかった ……… 惨めだった。…… " 俺を、哀れんでいたの 〜?、好奇心 〜?!、 ほんとうはどっちも好きなの 〜? " と無言の問いかけをしながら…… そして直也は、 「じゃぁ 〜!………近いうちに 〜!!」と、 『 ニ カ ッ 』 と笑顔を向け、その場を、用事で急いでいるかのように、 足早に走り去った……………逃げるように!! その瞬間、その偽りの笑顔は、もう、涙目になっていて、 直也は、どこをどういうふうに、歩いているのか、 どこへ向かって行けばいいのか、 答えが、解らなかった………… 。 …………… ……………… …………………。

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