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第5話 · 直也の遍歴 ~ その4

退 廃 直也の大学生活……… 1996年 秋から 札幌 · 暗闇 のなかで………… ……大学の4年生になっていた 直也は、あいも変わらず、ススキノで、 働きながらの毎日だった。 大学は、試験の時は、当然、キャンパスに行かねばならず… …直也は、寝不足ながら、朝、ベルの音で起こされ、 「 うわ ~ ッ !! やば ッ !! 」といいながら、 地下鉄駅へ向かっていた …… ……………… ただ、直也はもう半分開き直っていた。 というのも、もう、留年が決まりかけようとしていたのだ ……!! 今さら、焦っても、どうしようもあるまいと、 ある意味、超越していた…… 親も、うるさく言ってこないし 、 " まぁ、楽しく自由にやっていくさぁ ~ ! どうにか、なると思うし ~ 、大丈夫 !!! " と自分に言い聞かせていた。 ……学生といっても、もう、生活費は、稼いでいるので、 それほど文句も言われない。 さらに、今は、ススキノの母親の家に住んでるので、 家賃がかからなくお金が貯まるいっぽうだ……‥ 以前から、直也は、 将来、自分の店を持つ時の、開業資金の一部にしようと、 毎月、収入の何割かを、貯蓄にまわしていた…… ………………… ………………… ………駅に着く寸前、 地下鉄が入ってきたホームを、 乗客をかき分け、先頭の車両まで 直也は走った……… ドアが開き、乗降客の出入りが続いている車内の、入り口付近に、 知り合いを見つけ、ドキっ!! とした。 その彼は、同じ クラスの奴で、﹙直也は、ほとんど出席してないのたが、﹚ 20日ほど前、出席した際、隣りに座った人だ……… 彼が、こっちをチラッと見てヒョッコリ頭をさげてきて、 直也も、コクンと頭をさげた。 " 名前、なんだっけ ~ ?? " 、 しばらく考えて、 " ゆ ~ なんとか 、?ゆらかぁ ~ ? … 『 由良 』君だったっけ ~ ! 直也は、名前を思い出したことと、何とか、この混雑の中、 電車に乗り込めたことに、安堵していた。 直也は、チラッ、またチラッ、と彼の方を見てみる…… 彼は、こちらを気にすることもなく、 片手にした本に、目を向けていた ……。 " あれ ~ ! なんか、調子狂ちゃうなぁ ~ ?! " ………直也は、先日の事を、思い返してみた。 この前逢ったときは、小テストがあった日で、 この彼が、隣の席にすわっていた。 試験は、論文形式だったので、 直也は、半分真面目に、半分てきとうに、 書き進めていった。 ………ペンを進めながら、ふと、足元を見ると、 直也のスニーカー上に、かれのスニーカーが置かれていた。 " こら ~ !! 汚すなぁ~ !! " と足を引いてはずそうとした。 けれども、はずれない ~ ! もう一度、はすそうと試みたが、彼が、力を込めてきてるのがわかった … " んんッ、なに ~ これ ? ? " " えッ、そうなの ~ ?!! " 直也は、 途中から、気になりはじめ、 テストの文面も頭をかすめて行き、 柄にもなく、緊張していた。 …さらに、直也は、少しばかり、興奮もしてきたので、気がテストに向くように、自分を叱咤し続けていた…… ただ、この日は、 テストが終わって、構内の学食に、サークルの 何人かと行く約束があったため、 彼とは、離ればなれになり、それっきりだった…………… サークルのメンバーは、 直也がキャンパスに行かなくとも、 ススキノの直也の仕事場には、よく姿を見せていたので、 直也は、このメンバーを、 大学内での唯一の仲間だと思っている…… …………… …………… 電車が、ホームに入り、ドアから、学生が一斉に、溢れ出てくる……… ……直也の10mぐらい前を、その彼が歩いてる …… 直也は、後ろをついて、歩きながら、 この人をどう扱っていいのか、声をかけるべきなのか、 何もなかった事にした方がいいのか…そんなことを考えていた… ゲイだとは、思うけど……、真面目で、おとなしいかんじ、 顔だってそんなに悪くない……、 ただ、直也が行動を起こすには、ためらうものが、 なにか、あったのかもしれない… 単に、タイプじゃなかったから ……それも判らない… ……結局のところ、直也はこの後、何回か、 顔を見たり隣になる時も、あったが、行動は起こさなかった。 たぶん、キャンパス内という事が、歯止めをかけてたのかもしれない…… ……直也は、大学のなかでは、あまり、派手な行動や、 噂がひろまるのを避けたかった。 いちいち聞かれて 対処するのも、嘘を言うのも、疲れるし、 留年、中退、どちらにしろ、 時間の流れるままに …静かに、何事も無かったように生きていたかった…… 直也の生活の基盤は、夜のススキノなので、 どうしても、大学のことは、おざなりになった。 当然、お金、仕事、人間関係意外にも、恋愛、SEXなどについても ススキノを離れて、行動することは、考えられなかった………………。 ………………………… ………………………… ………その古びた映画館は、ススキノの、ど真ん中、 ビルの地下1階にあった。 外国のポルノばかりを上映してて、 ゲイが、多く集まり、直也の感覚では、 入館者のほとんどが、ゲイじゃないかと思えた…… 混むのは、土曜の夜と、日曜は一日中。 直也は 、 今年の正月に初めて入館して、 もう9ヶ月ぐらい経ち、来る回数は月に1~2度だ…… たまに、ゲイスナックのスタッフに、ばったり会ったりすると、 狭い、ロビーの椅子にすわり、話し出す。 「 いい男、いる ~ ? 」 「 あっちに可愛い子座ってるわよ ~ 」 「 きょうは飲みにでるの ~ ? 」 会話は尽きなく、出てくる。 話しながらも、目を左右に向け、 入館してくる人、トイレに行く人などのビジュアルをチェックしていく。 小さめ目のこの映画館は、 上映室に入る、左右のドアの、内側の空間と その前に、 3列に並ぶ、2人がけの座席が、 主なハッテン場となってる。 直也は、この座席に座って相手を待つか、後ろのブースに立つ… 大体が、直也より10才は歳上の人ばかりで、 彼らのすることにまかせて、直也は、ほとんど何もしない…… ……この日、 その人は最初、手を軽く太ももにタッチして来て、様子を伺った。 直也は、ジッとして動かない。 そうすると、その人は、太ももの上をさすりながら、 直也の股間の方へと手を這わして来て、 直也の勃起した男の分身を、握りしめた。 「 あぁ ~ッ !! 」一瞬、直也は、呻いた。 相手は、直也の反応に気を良くし、手を進めてきている ~ …ジーンズのジッパーを静か ~ に下げ、 指を差し込み、 ビキニの中から、直也の男をつかみ外へさらす ~ 上映中は、それほど明るくないので、直也は、恥ずかしさもなく、 相手のやりたいように、任せていた… その人は、最初のうちは、、前を向きながら、 左手で、直也のモノをしごいていた。 直也は、だんだん感じてきて、 背中を倒していき、足を投げ出す形になっている… 股間は、その人のほうへ、なるべく近づけて…… 直也は目をつぶりながら、 腰を少 ~ し動かし、 その気持ちの良さに、身を浸した。次に、 その人は、体の向きを変え、直也に向き合うかんじで、今度は、 右手で、しごきはじめた… 直也は更に、かんじてしまい、抑えられなくなった。 そして、その人の耳もとで、ささやくように言った ~ …「 しゃぶって ~ !! 」……と…同時に、 直也は、後ろを振り返えってみた。 5 mほど離れた立見席(ハッテン場になっている)で、 こっちのことを気にしてる奴が、いないかと…… なにしろ、この世界は、覗き見が好きな奴が、多いので… …あまりジロジロ見られると、気分が削がれてしまう… " でも、きょうは、大丈夫そう ~ !! "……… その人は、横倒しになった体制の直也の腹に、 頭をのせ、硬くギンギンになった直也の男を、口に含みしゃぶり始めた…‥ 周りに、聞こえないようにしながらも、 直也の呻き声と、直也の男を舐め回す唾液の音が、 微かに、洩れていた…… 直也は、腰をゆっくり動かし、男の分身を、相手の 口唇の、奥へ奥へと、入れて行った… 体がしびれるほど、気持ちが良くて、 どうしても腰の付き上げが、強くなってしまうのを、 直也は、抑えきれなかった…‥ …‥絶頂を迎えそうになってきた、直也は、 相手の肩をつかみ合図をだした… 顔を揚げたその人に、「 いきそう ~ ! 」と告げると、 その人は、 右手で激しくしごいてきて、いかせようと、してきた…‥ 直也に、とうとう、 限界がきた。その人の手を外し、 「 あぁ~ッ !! 」と呻きながら、、左手に用意して あったティッシュの中へ、 自分の男を突っ込み、ドクドクと精液を溢れ出していた……… …………………… ……………… ……………… ………… 翌年、直也は、留年していた…… あまり、どうってことはなかった。 予定通りというか、…まぁ、流れるままにというか… ………この年は、直也の家では引っ越しがあった… 父親が、札幌に帰ってきたので…… 大通りに家を新築したのだ。直也もそこに、自室を得て、 住むことになった。 その家は、、両親、祖母、姉 (父親違いの)直也の五人 住まいで、まぁ、快適といえる生活だった……… ……………… …… 男達との、乱れた sex など、 私生活は、ひどいものだったが、 直也の将来に向けた展望というか、見通しというか、 それに関わる 勉強については、一応、努力していた…… 飲食業なので、酒、フード、経営のノウハウ、 そして会社の創り方など …… etc……。 ………………… ……この頃、直也は、 それまで居た会社を辞めていて、 本格的なバーに、勤めていた…… 直也が、入った時で、28周年を迎えるといった老舗で、 ススキノの中でも、有名な店だ。 マスターと主任、それとバーテンダーが、3~4人、 仕事は、厳しかったが、 直也の好きな分野だったので、楽しかった……‥ …‥‥店は、午後5時から午前1時までで、 ピークは、8時から12時ぐらい。 驚いたことに、バーという所は、男性客が7割以上、 客層も、偏っていて、この店が、 たまたまなのか、解らないが、医療関係者と、放送関係者で、 半分以上は占めていたと思う…‥ お客さんが若目の場合、十中八九、研修医か、医学生だった。 若い彼らも含め、お客さんは、皆、紳士淑女で、 態度も言葉も、とても、感じがよかった…… …お客さんが、来店するまでの時間は、 酒について本を読んだり、 バー業務の実践の練習や、テストなどを行ない、研鑽につとめた。 酒の知識が拡がるにつれ、興味がもっと増し、 直也は、仕事では、充実感を味わっていた……… …………… ……………… けれども、直也の私生活は、 その破廉恥な、快楽を追い求めるだけの行動を、抑えきれなかった。 刹那的な生き方に、美意識を感じてるのか、 仕事を真面目にこなせばこなすほど、その反動なのか、 プライベートな時間は、言葉に表せないほど、 乱れていった ………… ………… ………… いつもの、ゲイの集まるポルノ映画館、 直也は、名前も知らない相手と、 倒錯した行為を繰り返した… … ただし、これまでの直也の行為の、 主なものは、手か口唇でのお互いの刺激による 精液の出し合いで、 相手の尻に、男のモノを挿入する、 いわゆる【バックをやる】とか、 【ほんばん】といったものは、 少しばかり抵抗感があり、した事がなかった…… 直也自身も、お尻の方は、挿れられるのは、 まったく駄目で、肛門を触られると、虫唾が走って、 相手を蹴りたくなった…‥ そういう意味では、直也は、完璧な【タチ】だった… …しかし、映画館での行為は、相手にやらせてばかりだった。 それは、タイプでない人の、体や、男のモノを触りたくなかったからだ。 自分勝手と言われれば、その通りなのだが、 それが、若い男の特権だと直也は考えていた…… 暗闇……映画館の中での暗闇、映像の光が、あるにはあるが、 人の重なりや、映画のそれぞれの場面の光の明暗で、 それを形成している…‥ ……直也も、そのエロティックな雰囲気を出す、映像の光が好きだった。 ………… ……ハッテン場になっている 2ヶ所の、座席後ろのブース、 直也もこのブースに立ち、座席の最後尾に座る人 ( もちろん、ゲイなのだが)の顔の横に、 ジーンズの股間をすぐ側まで、近づけ、相手を挑発し、 しゃぶらせたこともあった… …周りが見ていそうな時は、行為を途中で止めて、 二人でトイレに駆け込んでから、精液を出し合ったこともあった… ……こんなことを繰り返しながら直也は、 男の分身が絶頂に達し、精液を放つときの、 あの、とろけるような気持ちの良さのなかに、 この頃の自分の身を置いていた…… 人を好きなる感情や、愛情を有することなどは、 どこか遠くへ置き忘れてきてしまい… 直也は、自分には、それは、 もう必要ないものと思い込もうとしていた…… ……………… ……… だが、これらの乱れた行為を続けた、直也の、心の…… 当の本人も解っていない、深い底の部分に… 直也の心の、葛藤があったのだと思う …………… …………… 。 、

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