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第9話 · 共に生きるということ

情 愛 2000年 · 春から …………… 歓楽街·ススキノの中で……… 二人の同棲は2年経った…… この春、圭一は、 田舎に帰ることになっている…… 親との約束の為、 家業を継ぐ決心をした圭一は、 直也に、帰る日時を伝えた。 それを聞いた直也は、圭一に見つからないところで、 涙を流した……… ……あっという間に過ぎた2年間……… 二人は体が溶けるほど愛し合い、 共に生き、お互いを大切に、し合ってきた……… ……直也は、こんなにも、 圭一のことが好きでたまらなくなっていたなんて、 自分に驚いていた…… 圭一が離れてしまうなんて、 考えられなかった。 もうすぐ、いなくなってしまうことを忘れたいため、 直也は、圭一に、、 毎日、激しいSEXを求めていた……… 圭一も、本当は、故郷に帰りたくはなかったのだろう。 直也の激しさに呼応するかのように、 圭一も狂ったように、 喘ぎ悶えた……… ………同棲を始めた直後に、圭一は、直也に 「 お尻に入れていいよ !! 」と言い、 直也の男を握ってきた… !! 直也もかすれた声で 「 わかった … 」…と言い、 ドレッサーのひきだしから、ワセリンを取り出して、 圭一のアナルに塗り込み、 更に、中指にたっぷりつけて、 圭一のその穴の中へと進ませた…… 圭一は、最初は「 あッ ! 」と嗚咽だけ だったが、 指を回すと、 「 あぁ~ッ ! 」と喘ぎ始めて、 直也に「 入れて ~ 」……甘い声を出してくる。 ……直也は、 ワセリンをどっぷりまぶした自分のモノを 圭一のそのひくひくしているアナルに、 あてがった……… そして、ほんの少し…… 鬼頭の先端を進ませ、圭一の顔を見た…… …‥圭一は、目をつぶり、口を、半開きにして 「 あぁッ ~ !! 、あぁッ !! 」喘ぎ始めてる。 直也は…… 徐々に股間を前に出していき、 自分の男が、圭一のアナルに のめり込んでゆくのを見ながら、 圭一の、懇願の声を聞いていた……… 「 あぁッ ~ !! 、待って ~ ! 、 動かないで ~ ! お願い ~ ジッとしてて ~ ! 」 直也は動かず、じ ~ ッと待つ…… 待ってる間、上半身を、倒し、圭一の唇を求めて 顔を近づけ、キスをした…… 二人の舌が重なり合い、圭一は 又、喘ぎ出してきた……直也は、圭一の耳に口を近づけ 聞いてみた…‥… 「 動いていい ~ ? 」 「 いいょ ~ 、ゆっくりやって ~ 」 ……直也は、静か ~ に、 自分のモノを、圭一のアナルの奥へと、入れて行き、 腰を前後に、波を打つように動かし始めた…… 段々、腰を早めていき、直也も快感で呻き声を出していく…… 圭一は…… 最初の痛みが薄れてきたと見え、 今は、感じまくり……眉間にシワを寄せている…… 「 あぁッ !!! いいよ ~ !! あッ、あなた ~ !!! 感じる ~ !! 、」 狂わんばかりに、よがって、 直也の体にしがみついてきていた…… 絶頂を迎えると、、二人は、互いの名を呼び合い、 激しく、腰を、動かしながら、登り詰めていった…… ……………… ……この頃から、直也は圭一と愛し合う時、 ほとんどと言っていいほど、 アナルを求めるようになり、夫婦そのものになっていった……… ……直也にとって、圭一は、 恋人を通り越した夫婦の女役という、いわゆる奥さん という存在で( それも出来の良い )、 圭一には、直也は優しくて、少しズボラなところもある夫であった…… ………………… ……… 同棲してから、二人は浮気も、 まずしなかったし(…… と思う、少しはあったかもしれないが … )… 空いた時間は 、いつも一緒で、 趣味や趣向が合う事も、行動をいつも共にする理由でもあった。 …… 圭一は、絵画やファッションに生きる、 人間だけあって 部屋の装飾には、才能を発揮し…… 昔の小学校の教室のような 板張りの 二人の部屋を、 絵画や、塑像、クラフト、それにタペストリーや、 間接照明、花瓶などの置物を置いて、 どんどん模様替えし、 南洋のコテージのような雰囲気に作り変えていった…… ……観葉植物や、花も好きなようで、植え替えをしたり 置き場所を変えたりと、忙しそうにしていた……… …………ただ、同棲生活が、2か月過ぎたあたりになると、 圭一は学校を休むことが多くなり 直也は、心配して、聞いてみた。 「 最近、休み多いよね ~ 、大丈夫 ~ ? 」 ………それというのも、1ヶ月程まえから、 圭一は、モデルやブティックの仕事を始めていて、 負担が多くなり、大変になってきているのだ…… 「 あのさ ~ 、話があるの ~ ! 、僕ねぇ ~ 学校辞めようと 思ってるんだけど ~ 。」 「 えッ 、どうして ~ ⁉ 」 「 絵、描いててもなんか、イメージが違ってきて、 スランプぎみだし、それに、ブティックの仕事楽しいし、 ファッションショーにも、もっと出てみたい ~ ! 」 直也は、真剣に圭一の、目を見詰めた…… 「 う ~ ん、そ ~かぁ ~ 、後悔しない ~ ? 、」 圭一の笑顔が、決意を語っていて、 来年の夏までは、圭一の実家に、秘密にしておいて、 秋にでも話し、 それで2年後の春には、圭一は、故郷に帰って 農家を継ぐと……… ……同棲生活は終わり 離ればなれになるけど、 連絡は取り合い、 時間がある時は会おうねと、 二人は納得し合って、この取り決めをした…… …… けれども、離ればなれになったあとも、 恋人関係を続けたままだとか、 絶対、浮気をしないとか、 決まった日付に会うとかは、ウヤムヤにした…… それは、恋人同士が離ればなれの場合、 つき合っていくのが、 とても難しいこと、 遠い所から、相手を束縛するなんて無理があること…… などを、直也も圭一もわかっていたからだ……… 直也は、近い将来 、 圭一が田舎へ帰ってしまうことについては、 なるべく考えないようにした。 考えてしまうと、圭一がいない現実は、 とっても悲しく辛いもので、直也は知らず知らずに、涙目になっていた……… ……時間が進むなかで、直也は、 圭一を笑わせるべく、ふざけたり、おどけて見せたりして、 悲しい顔を向けないように、頑張った…… 圭一も一緒に笑ってくれて、 直也を優しい目で見返してくる……… 「 でも、この瞳もいずれ見れなくなってしまうのか …」…と、 自分に言い 聞かせながら直也は、 滑稽な役を演じていった ……… ………この年の夏が来るころには、直也の家族は、 おお方、二人の関係を分っていた……‥ 直也は、皆んなに、恋人とまでは言わず、 仲良くしている奴と紹介してたが、 ( オネエ言葉とか一切使わないし、仕草も女っぽくないのでゲイだと思 わないだろうと、)…… けれども、圭一の美しさと、目から漂う色気、 直也に添い従うような素振りで、 きっと周りの人に、 普通の関係ではないものを感じさせたのだと思う…… ……それでも、直也の家は 、体裁をあまり気にしないというか、無頓着というか、 家族の団欒に圭一が入るのを、 まったく気にせず、受け入れてくれた。 …… これは、父親がとてもリベラルな人で、 ( 新聞社の人間だから、当たり前かもしれないが ) 人に迷惑をかけないこと、犯罪を犯さないこと、 この2点を守れば、 どんな職業に就こうが、どんな性癖があろうが、 もっと言ってしまえば、 どんな人生を歩もうと、自由に生きて行けばいいと 考えていた事が影響していた………… …‥ 圭一が直也の実家に、 ついて来るようになると、夕食の席に加わったり、 直也の一家団欒のなかに入り、しゃべったりするようになった…… ………何かの用事で、一族が集まったとき…… 直也が圭一の居場所がどこなのか探してみると、 直也の姉や、義理の姉の輪に入り座りながら、 楽しそうに会話を、 交わしていた。…‥ 直也は、圭一が家族と仲良くしている姿をみて、安心し、 嬉しくなっていた……… ……………………… ……この年の、夏の終わり近く、 札幌から近くの銭函海岸に、二人で海水浴へと出かけた…‥… 前日は、直也は当然仕事があり、 直也を気に入ってくれてる女性二人組の学校の先生に、 結構飲まされ酔ってしまい、 アパートに着くなり、バタ~ンキュ~とソファーに倒れ込んだ…… ……圭一が、寝室から出て来て、 直也の服を脱がせながら着替えをさせ、 冷たい水を冷蔵庫から持ってきてくれた。 直也は、2~3杯、水を飲んでから 「 ごめん ~ 起こした ~ ⁉ 」 「 うぅん、大丈夫 ~ 、起きてた ~ 、」 圭一が更に、聞いてきた。 「 あした行くのやめる ~ ? 」 「 午後からにしようか ~ ⁉ 」 「 うん 、それまでに用意しとく ~ ! 」 二日酔いが残った直也は、 昼過ぎまで寝てしまい、 銭函海岸に、直也の実家から借りた車が、 着くころには、 時計は、3時半を過ぎようとしていた…… それでも、8月末の日曜は、人手がまだまだあり、 …‥海岸は、いたる所に、 グループが出来ていて、どの人も楽しそうにはしゃいでいる。 直也は、先に歩きながら、座り易い場所を探して、 グループの間を抜けていった…… ………石がごろごろしている方へと行き、海辺から10mぐらいの 石の配置が丁度いい具合の場所に、 二人のエリアを造り、夏の海を眺めて… 石の上に寝そべりながら… 直也は、二日酔いなのにもかかわらず、クーラーボックスの中から、 缶ビールを取り、飲みだした。 圭一もライムスカッシュを飲みながら、 食べ物がいろいろ詰まったバスケットのふたを開き、 直也の前に広げた。 「 食べてみて ~ !、美味しいかなぁ ~ ⁉ 」 直也は、 食べ物がびっしり詰まった、色とりどりの バスケットの中を覗きながら、 サンドイッチを取り出し口に入れた。 「 おいし ~ !! 、 圭 、凄いよ ~ ! 、 感激 !! 、」 直也は、ほんとに感激していた…… 圭一が直也の寝ている間に起きて、 海に持っていく バスケット用の料理を作り、 きれいに、盛り付けをして用意してくれてる。 圭一のその気持ちが、嬉しくて、気分は舞い上がっていた……… ……海に入る気は、あまりなかったが、 せっかく来たんだから、二人は、 日光浴だけでもと思い、 家から履いてきていた、海パン姿になった…‥ 石の上に敷いたシートの上で座りながら、 体をもぞもぞさせて、 圭一がハーフパンツを脱ぎ、直也もジーンズを脱いだ。 圭一は、Tシャツだけはそのままで、 直也だけ上半身も脱いでいた…… ……二人の海パンは、 ビキニ型の海パンで、 デザインが同じ、ド派手な色の、少し色違いのもので、 見る人が見れば、 ゲイカップルのペアルックに、 すぐに結びつけて考えたはずで、 周りもそういう目で見てたかもしれない。だが、 二人は全然気にしなかった…‥ …‥直也などは、 逆に、遊び心で、周りに見せつけちゃえぐらいの気持ちをもっていた…… ………… ……食事をしながら、 昨日の仕事の話しなどをしたあと、 一度、直也だけ、海へ入ってきた…‥ 残りの時間は、二人で日光浴と思いつつも、 圭一は、 顔や脚に日焼け止めクリームを一所懸命に塗っている。 “ 火傷するのが嫌なんだろうな ! ”……と思い、直也は笑っていた。 一段落したあと、 眠気が襲ってきたので、二人でほんの束の間の仮眠タイムに入った…… ……………… ……… 直也は、顔にそよ風があたる気がして、 うつろな中から、目を、覚まし、 周りを見てみた……… ……人ゴミがなくなり、 グループや二人組などのシートが、ポツンポツンと点在しているだけに なっていた…‥ 家族連れなどの姿は、もう無くて 静かな海辺になっていた…… ………夕暮れ時が、またたくまに、あたりを包み 直也は圭一と二人、 ウォークマンのイアーフォンを一個づつつけ、 MDの音楽を聞きながら、 タバコをくゆらせていた…… …‥缶のチェリーハイボールを廻し飲みしなから…… ………黄昏が進みゆく中、 立ひざで座る、圭一の両脚の間に、 直也は、背面から入り ~ 圭一と同じように海の方を向きながら座った。 圭一の膝小僧に直也は、 両方の腕をまわしてつかみながら…… ……二人は、 茜色に染まっていく夕焼けと…… 対照的な、 油絵のブルーを刷毛で描いたような夕闇が、 少しづつ広がる空を見上げていた…… …… 今、こうして体を寄せ合い……、 愛を感じあってることに、幸せを見い出していた…… 二人は、 このまま、ずーっとこうしていたいと、 お互いの、心と体に、できる限り触れていたいと思っていた…… ………………… ………………… ……………、けれども、今、 ここで、直也の股間に、変化が起きていた…‥ 黄昏の時、圭一と体を密着している内に、 直也の男が、徐々に固くなり勃起してしまい、 直也は、 振り返えって、圭一にそーッと 告げた、 「 勃っちゃった ~ ! 」…と、圭一は、ニヤニヤして見てる…… 周りは、 近くとも5ⅿ以上は離れているし、 薄暗くなってきていたので、直也は、 何食わぬ顔をして圭一とのランデブーを愉しんでいた…… ………… けれど、後ろの、 三人組の高校生位の男子の一人が、こっちの方を、 気にしているようだった…… 直也が振り返り、圭一を見たとき、 その肩の向こう側に、 その少年がこっちを凝視しているのが目に入った… 直也は、 いたずら心が湧いて、圭一に益々、密着していった… 圭一は、ニヤニヤしつつも、 直也の股間の前に、両足をまわして、 周りから見えないようにと、……が、足を組んだり、 延ばしたり動かすため、 足が直也の股間に、あたってしまい、 益々、直也のモノは、勃ってしまった……… …‥…直也は、もう、 我慢出来なくなってきて、圭一に帰ることを促し、 圭一も直也の気持ちがわかったらしく、 ハーフパンツに足をいれて、後片付けを始めた…… ……直也は座ったまま、 ジーンズに足を突っ込み、無理やりジッパーを上げ、 二人で、荷物を手分けして担ぎ、車の方へと……… 途中、 後ろの高校生の横を通り過ぎる際、 軽 ~ く、ウインクすると、 その高校生は、目を見張り、こっちを見、その後、 目を、伏せていた…… 直也は、 声を出さないようにしながらも、思わず笑ってしまい、 車の中で、 いきさつを話すと、 圭一は呆れながら、「 男ばっかり見てたら駄 ~ 目 ! 」…とたしなめなが ら、直也のほほを軽くつねってきていた……… …………………………… ………この年のクリスマス、 そして正月も過ぎ、ゴールデンウィークは 約束通りに、二人で小笠原諸島に旅行に行き、 あいも変わらず、仲の良いままだった……… 圭一は、ファッションショーと ブティックの仕事で、 まぁまぁの実績をあげ、今後も何かの折には、 仕事をまわしてくれるなどの、人脈を作る事が、出来たらしく…… 「 また戻って来たら ~ 」 と言われたと、直也に嬉しそうに言ってきていた…… ………………………… ………………………… …………秋冬も過ぎ去り…………、 春が来て、ついに明日は、圭一が田舎に帰る日、………… 圭一の個人的な荷物と、 同棲してから買ったもので、 圭一が欲しいと言った物は、3日前に赤帽が来て、 圭一の故郷へと運んでいった…… 他のこまごましたものは、 明日、圭一が自分で運転して、故郷へ運ぶ事になっている…… ( 圭一は、今年になってから、軽の車を実家から 買ってもらってて、直也の 大通りの家の駐車場に置いていた。 )…… ………日曜のきょうは、 夕方まで、二人は、アパートの方で、 残りの荷物の整理と、圭一の車への運搬を、繰り返した… ……夜は直也の実家で、 送別会を開く事に、 なっていて、それまでには、終わらせていかなくてはと……… 圭一が、 荷物の整理をすべて終え、聞いてくる…… 「 これで全部、終わったね ~ ! 疲れたでしょう ~ ⁉ 」 「 全然 ~ ! あと 、 何日かかっても大丈夫よ ~ ! 」 直也はおどけて見せていたのだが……… 圭一の、とっても優しい目と、 直也の目がぶつかり、一瞬、 泣き出しそうになってしまい、あわてて、 寝室へ走っていき、バタ バタと 乱暴に、外へ出すゴミの袋を整理していた…… ………………… ………もう、すべてが終わり………… 圭一が先に玄関を出て… 直也がうしから二人のバッグをかかえながら 廊下に出ると、 アパートに鍵をかけ終えた 圭一が、 階段を降りる寸前、 直也の手を 握ってきた……… 直也も握りかえしながら、1階まで行き …… 二人、無言のまま、直也の実家へと車を走らせた……… ……夜、直也の実家では、 五人の家族と圭一が輪になり、 食事をしながら、会話に、花を咲かした…… 圭一も直也も、 ニコニコしながら楽しそうに、 二人の前途を、お互い、祝福するかのように………… …… 10時になる前には、 送別会も終わり、家族は、それぞれの部屋へと戻り、 家は、静かになっていた…… ……二人は、 一緒に風呂に入りながら、 懐かし思い出ばなしをしながら…‥ 圭一は、直也の、背中の、 後ろへ周り、ゴシゴシと洗い始めた…… 「 痛てーッ !! 」悲鳴を直也があげると、圭一は 「 ごめんなさい ~ ! 、痛かった ~ ⁉ 」 二人は笑い合いながら、 ゆっくり風呂に浸かり、 2階の直也の部屋へと上がっていった…… …………………… ……‥圭一が、 最初にこの部屋に来てから、 もう2年という月日が流れ…… ……‥直也は、 幸せな時間って、こんなに進むのが早いのかと、 驚き、もう一度、 巻き戻してもらいたいと願った…… これが、男女の普通の関係だったら、 お互いの家族からも、職場からも、 そして、 社会からも 祝福された恋愛をし、更に結婚もして、 共に人生を歩めたのに……… と…直也は悲しい気持ちになっていた……… …………… ……二人は、このあと、 …… 二人が出会った日を 思い出させてくれる直也の部屋で 音楽を静かに流しながら、別れの酒を飲み交わした……… 圭一は、 田舎へ帰ると、すぐにやる事がたくさんあって、 自分の時間をとることなんか 無理だろうと……、 田んぼも、畑もあり、更に家畜の世話も………… 考えただけでも、 ぞーっとするって言った……… どこまで本当で、どこから冗談かは わからなかったけれど…… でも、直也は、全部、本心なんだろうなと思った……… 圭一を、実家の境遇から、 抜け出させる力に、直也はなれなかったと、 自分を悔いた…… 愛する人を、自分のそばに置いとくことが出来ない、 不甲斐なさに泣いてしまった……… 二人は、コークハイを飲みながら …… 直也は、圭一に、 何かあったら連絡するように、 来て欲しいときは、すぐに行くからと 念をおした………圭一は、うなずきながら、ニコッと笑った…… ……この日、直也は圭一と、 最後のSEXをしようと思ったが、 自分の心も体も、動かないことがわかった……… 知らないうちに、 打ちひしがれている、自分がいることを…… …………… ……………… …‥ベッドの中で、直也は、 圭一を背中から抱きしめて、 首すじに口づけを しながら、無理やり明るく振る舞い、 「 圭、ありがと、大好きだよ ~ 」………… 「 あなた ~ 、会いに来てね ~ 」 圭一の蚊のなくような声が、聞こえてきた……… 「 うん 、行くから ~ 」 涙を抑えて直也も言った…… 日付も何もない、 その場限りの言葉と わかった上で、二人は交わしていた……… …………………… …………… 翌朝、皆で、朝食をとり、 出発の時刻、玄関で圭一は直也の家族に 挨拶を交わし、駐車場へと…… 直也だけがついていく… 圭一が車に乗ると、サイドガラスを降ろし、直也を見詰めて、 「 今までありがとう ~ ! 、行くからね ~ 」 「 気をつけて ~ 、」 圭一が、 車を回転させ、道路に出る寸前、 一度止めて、 車の中から… 、 顔を直也のほうへ向け…… 微笑みながら、手をあげた………さようなら……と 直也も、それに応え、手をあげ、笑みを返した。 …‥ 車は車道に出た…… … 直也は、走り去ろうとしている 圭一と、その車を じっと、追いかけるように、見詰め…… ……視界から、いなくなったそのとき、 ひとりでに、直也の目から涙が溢れ出てきて、 止めることが出来なかった……… …………………………… …………………………… …………………… ……圭一がいなくなった直也は、 しはらくは 魂が抜けたようになった。 アパートも 解約の方向で考え、 仕事も身が入らなかった……‥ 圭一とは、 メールとか、たまに電話で会話もしたが、 それも、週に1回ぐらいで、 いろんな意味で、 直也は欲求不満になっていった………… ………… 直也は、 ゴールデンウィークの頃には、実家へ帰っていた…… 家賃がかかるのは無駄な出費になるし 一人っきりは寂しい、 それだったら、親元にいたほうが、 いいだろうと思い、大通りの家に戻った……‥ …………………… ……………… ………初夏になるあたり、直也は、 ゲイバーに顔を出す様になり、新しい子と、 知り合っていた …… 21才の学生で、道央から来ている、 『 正広 』という子と ……… …… 出会ったゲイバーは始めて行った店で、 直也は、2つ離れた席に座る、 真っ白な肌の、 顔立ちの整のった子をみていた…‥ 正広は、常連らしくマスターと 親しそうにしゃべっていた…‥ 直也は、隣の席は空席なので、 左足でモーションを送ってみた。正広も気づいたらしく、 店を出て、ビルの共同トイレに向かった。 直也は1分後にトイレに行って、 鏡の前でヘアースタイルをいじっている正広に、 声を、掛けてみた。 「 もし良かったら、俺と、お茶飲まない ~ ⁉ 」 「 えぇ 、いいですよ ~ 」 「 5条通りにメイプルって喫茶店があるから、1時間後に ~ 」 ……この日のうちに、喫茶店で会い、 2時間後には、直也の部屋でSEXをしていた…… 欲求不満だった直也は、 貪るように相手の体を求め、 以前とは打って変わって、初対面でもアナルSEXを欲し、 その快感に酔いしれた…… …‥‥正広は札幌郊外にある、 総合大学の商学部の3年生だった。 道央のラベンダーで 有名な街の出身で、 夜は、 ゲイバーで毎日、アルバイトしているという……… 二人で、地下街を歩く時でも、 直也の腕に手を、廻してきて、 人の目なんかまるっきり気にしない、 明るい、いつもキャッキャッ騒ぐ、 少しオネエっぽい子だった…… 直也は…‥ ビジュアルもその明るい性格も好きになり、 午前2時過ぎには、 正広の働く店に、いつも行くようになっていた……‥ ……その店は、ゲイバーの中でも、 ギャーギャー騒ぐ、 とんでもない店だったが、 ゲラゲラ笑い声があふれる楽しい所でもあった。 カウンターに座る直也に、 正広は、 ふざけながらも半分は、本気で、唇をすぼめて 投げキッスをしてきた…… 直也は、 照れ笑いウインクで返事を返しながら、 正広のユニークで エロい仕事振りを見て、楽しんでいた……… ……圭一とのメールや電話のやり取りには、 直也は一切、正広の名前は、 出さずに、とりとめのない、 近況報告を、しばらくはくり返していた……… ただ、 圭一の田舎での生活の話しを聞いてて、 ( 手が荒れて酷く、 朝は、5~6時から陽が沈むまで仕事をする ) かわいそうで、涙が出そうだった…… 直也は、札幌で、ゲイバーで飲みまくり、 ましてや、新しい男を作ったなんて言えやしなかった………。 圭一は、 束縛もしないし、自由にしていいと、 いつも言ってくれてるが、 いざとなると、直也は自分の行動を言えなかった…… 夏になっても…… 直也と正広の関係はつづいていて、 正広は、直也の部屋に、 何日か逗留したり、直也が仕事に行ってる間、 一人で留守番をするなど、もう恋人のようにしていた……… ……直也は、こんな正広を受け入れて、 反対することもなく、却ってその無邪気な行動が、 直也の心の平静さを 取り戻してくれていた…… それは、正広が、優しく 誠実な心をもった子で、ユニークで面白い面もあり SEXも情熱的で直也と 相性が合う子だったからだと、直也は思った…‥ 春に味わった あの悲しくてつらかった出来事を、 正広が癒やしてくれていた…‥ …………それでも圭一を忘れることは、いっ時もなかったが…………… ………………… ……………この年の秋が始まるころ、 正広とつき合って4ヶ月ほど経ったころ…… ( 最近は圭一との連絡は、月に2回ぐらいなっていたが、) 久々に 圭一のメールが届いたが ………‥ 暗く、 辛そうな文面になっていて、 直也は、心配になり電話を入れてみた…… 「 もしもし ~ ! 俺 ! 、どうした ~ ? 」 ………圭一の声が聞こえてきた…少し無言のあとに…… 「 札幌へ行くから ~ 、 会いたいの ~ ! 、会ってくれる ~ ⁉ 」 直也は少しためらったあと、 「 うん、いいよ ~ ! 、分った ~ ! 、 日にち決まったたら連絡して ! 」 直也には、一瞬、正広の顔がよぎったが、 圭一の願いを 断ることはできなかった…… 少しして、圭一からメールが届いた “ 電話ありがと ~ ! 、声を聞いて少し元気になりました。 札幌へ行ったら、あなたに相談があります。 田舎を離れ、また、札幌で生活をしたいと思ってます。 日にちは10月の8日と9日に行こうと思います。 日曜と体育の日で連休だから、あなたにも都合がいいかなぁと思って 都合が悪いときは、メール入れてください……。” …… 直也は、数日間考え悩み、 自分の答を出した……… ………………… ……… 連休に入る 2 ~ 3日前に 、 直也は、正広を喫茶店に呼び出し、 その喫茶店の死角になっている、ボックス席で、 正広に頭を下げていた。 「 別れて欲しい !! 、ごめん ! 」……… 正広はびっくりして、キョトンとしていたが、やがて 「どうして ~ ? 、僕、なんかした ~ ? 」…… 直也は、正広には何の原因もないし、 今でも好きで大切に思っていると… 自分勝手かもしれないけど、 大切だからこそ、きちんとはっきりするべきだと……… ……… ……前、つき合ってた人が会いたい……と、 又、札幌で生活したいと、 連絡してきたことを直也は、正広に話した…… そして、顔を見てしまったら、 SEXもしてしまうし、つき合いも復活するだろうと……… …… 正広はゲイバーで働いていて、 友達もたくさんいるし、 性格も明るく楽観的で、毎日楽しくやっている、元気で強い子…… でも、圭一は、違っていて、 おとなしくて、 友達もあまりいなく、家にいるのが好きな子…… 俺が、いないと駄目なんだ……… 俺にふっついて歩くのが好きな子なんだ……と… 直也の説明を聞いて、 正広は、 もう、なにも言ってはこなかった、……… ただ、半分あきれ顔で、笑っていただけだった……… ………………… ……連休の初日、圭一が、 陽が沈みかけていた、夕方遅くに、 直也の実家に着いた…… 駐車場に車が、入ってくる音がして、 直也は、外へ走り出ていた…… ……… 車に目を向けると、 フロントガラス越しに、圭一の こっちを見ている笑顔があった。 直也も思わず破顔して、フロントドアを開けに走った。 「 遅かったね ~ ! 」… 「 仕事おわってからきたから ~ 」……… …… 簡単な会話のあと、 家に入り、家族と挨拶し、直也の部屋へ…… 半年振りに見る圭一は、顔がほんのり日焼けしていて 赤くなっている…… 二人とも向かい合ってソファーに座り、 お互いを見、微笑み合う…… 直也はこんなに遅く、なるとは思ってなかったので 「 昼に来ると、思ってたから ~ 、」…… 「 稲刈りの時期だから、忙しくて、 仕事をしてからでないと出れないの ~ 、」 直也は、圭一のその 境遇を、また哀れみ、悲しい気持ちになった…‥ それでも、 メールにあった通り、 札幌で生活したいということは、 当然、一緒に住んで、 恋人同士に戻るってこと………直也はそう考えていた。 ………圭一が、口を開いてきた…… 「 やっぱり、僕には無理 ! 、 話し合って、どうにか解ってもらった ~ 姉さんが、結婚したらその人と継いでくれるって…… 、」 「 札幌に来るから ~ ! 、来てもいい ~ ⁉ 」 直也に異論は無かった。 むしろ、大歓迎で…また、涙が溢れそうになった。 こんな嬉しい大逆転があるなんて、 一度失いかけた、 なによりも大切だった人が、 戻ってくるなんて、 神様は絶対いると信じて疑わなかった……… ………この日、外が暗くなり、 ススキノのネオンが輝きだす時間に… 直也は、 圭一と以前行った ホテルのラウンジに向かってた。 11階のレストランは、暗く静かで、 クラシック音楽が流れている…… 圭一はあまり肉類は好きではなく、 シーフードかパスタが、好みで これも、直也とは相反している…… ゆっくり食事をしながら、圭一の話しに耳をかたむけた…… 「 将来は、二人で、お店を持ちたい ! 、なんの店でもいい ~ あなただったら、バーか レストラン だから僕も勉強する 、」 「 そのうち、あなたに余裕が出来たら、 ブティックやらせてもらうから ~ 、」 直也は笑って答えた…… 「 アハハ、圭の思った通りでいいよ ! 」 ……………… …‥深夜には、直也が、3年以上前、アルバイトしたことのある ゲイバーへ顔を出した。 顔の判るメンバーは、マスターと古株の二人だけで、あとは、わからな い人達だった。 15人以上は座れそうな細長いカウンターがあり、 その奥に、6人がけボックスが1つある、 こじんまりした店で、 ライトがブルーとオレンジ色のためか、 人の顔がきれいに見え、ハンサム·オン·パレードってかんじだった。 ドアから入ってすぐの所へ二人で座り、 ……カウンターからの声が聞こえる…… 「 あ ~ ら 、いらっしゃ~い 、サキちゃん、久しぶりね ~ 、何にする ? 」 「 バドワイザーと、チンザノロック」 ……連休の初日だけあって、 店は、満杯で、ベロベロに酔ってる人、 隣の若い子を口説いている人、 カウンターのスタッフと言葉遊びをしてる人など それぞれで、カラオケもあるので歌ってる人もいる……… ………店の奥のボックスには、 五名位の若いグループがいて、 騒いでは、歌ったりしていた…‥ 直也と圭一が、 飲み始めてから、1時間ぐらいは経ったろう…… ……… 店内が、騒々しいので 直也は、圭一の耳に口を近づけ、しゃべっているが、 時たま、圭一のほほや、 こめかみあたりに、チュッとキスをしたりして、 二人の時間を愉しんでいた…… 圭一が、 「 駄目 !! 」という目を、 直也にしても、顔は、 ほころんでいて、怒ってるようには、 丸っきり、見えない、…… こんな、圭一との、シチュエーションに 、直也は、幸せを感じていた………… ………………… ……奥のボックスのカラオケが、 また、始まった…… …‥‥若い曲に混じって、20年前位に売れた、 古い曲がはいった。 北海道出身でゲイっぽかった 《 堀江じゅん 》の 『 メモリーグラス 』……が… 直也は、若い子達が、 こんな古い曲歌うんだと思いながら、 奥の方へ首をまわしてみた……… そこには、驚いた光景があった…… 目に入ったのは、ボックスに座りながら、 カラオケの画面を見上げて、歌う、正広の横顔だった…… 直也は、凍りついて、横を見てみた……… ……圭一は何事もない顔をしていて、微笑んでいるだけだ…… でも、直也は、思った…‥ 正広には、 直也と圭一が入ってきたのが、わかったに違いない ………と 直也は、この歌を明るく歌う正広の方へ、顔を向けられなかった…… 正広は、今、どんな気持ちで歌っているのだろう…… “ 自分を恨んでいるだろうか、許してはくれないだろうか ” 直也は心の中で自分を責めていた…… ………… ……そして、 ほんとに圭一は、気付かなかったんだろうか…… この歌が始まると、 直也は、 急に元気がなくなり、無口にもなったので、 一度だけ、圭一が直也を、じっと見てきて、聞いてきた、…… 「 大丈夫 ~ ? 」 直也は一言だけ言った。 「 酔った ! 、帰ろう ~ 」 圭一が、この話しをしてくる事は、二度となかった……… ………………… ……………

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