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ただいま
派手な見た目からは想像出来ないほど安全運転な黒川さんは家の近くのコンビニに車を駐車した
「ここなら家からすぐだろ。明日の9時、ここに待ち合わせな。着替えと制服持って来いよ」
「え?は?」
「気を付けて帰れよ。また明日」
要件だけ手短に言うと手を振りさっさと駐車場を出ていった黒川さん。コンビニの駐車場で突っ立って考える。なんで俺の家が近いって知ってんの?着替えと制服?今日は土曜日だから明日泊まるってこと?でそのまま学校?普通に嫌だよ
「本当になんだあの人....」
それよりとりあえず家に帰らないと...
走って5分、家が見えてくる。玄関先に父が立っていて俺を見つけた途端駆け寄ってきた
「華っ!お前今までどこに居たんだ!!!」
「あ...えっと、母さんと由奈いる?」
普段俺とはそこまで話さない父が珍しく鬼気迫る顔をしているのに驚きつつ、項とか見られたらバレるし説明するべきだよなと思いリビングに4人集合してもらった。
真正面に父、その隣に母、妹の由奈は俺の隣
怒っているのか心配してくれているのか分からない顔の父、泣き腫らした目をしている母と由奈
「ただいま....連絡せずにスミマセン...」
「本当に心配したのよ私....でも無事だったから良かったわ....」
「母さん泣くな。華、今まで何してたか説明しなさい」
じわ....と涙目になりながら微笑む母に喝を入れる父。そんなに厳しく言わなくても.....怯みながら昨日あった出来事をぽつぽつ説明する
「昨日...スーパーの帰りに...知らない人と?その、色々あって...」
「色々....?」
「ねぇお父さん、おにいちゃん.....跡ついて、る...」
由奈は昔から俺が言いたくても言えない事を察して行動する事が多かった
それは今回もそうで、俺の項を見た由奈の顔から血の気が引いていく。リビングの空気が一瞬で凍った
父は難しい顔をして母は泣き崩れる
「ごめんなさい華、私がスーパーに寄ってなんて頼むからこんな事に」
「泣かないでよ....」
「私が....私のせいよ...それは...同意じゃないのね?ごめんなさい....」
ボロボロと大粒の涙を流して謝罪を繰り返す母を抱き寄せる父。由奈も私のせいなんて言い出して皆ぐちゃぐちゃになる
「...母さんと由奈のせいじゃないよ...運命、の番....だったんだし」
とりあえずこの空気をなんとかしたくて苦し紛れに言ったのは何回か言われた『運命の番』だという事だった。もちろんそんなの信じてないし信じたくない。運命ならもっとロマンチックなのが良かった。初対面で名乗りもせずに勝手に噛んどいて何が運命だって思った。
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