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3 side 金条 華
「はぁー疲れた〜〜」
風呂も夕飯も課題も終わり、いつものようにベッドに転がる
進路希望表を忘れていたのは俺だけで、呼び出された時、悩んでいる旨を担任に伝えると快く来週まで待ってくれるらしいのでお言葉に甘えてじっくり考えようと思う。
第一希望から第四まである欄。まだひとつも埋まってない。『これだからΩは』と言われないように勉強だけは頑張ってきたので、就職しようと思えばできる成績はある。でも就きたい職業がないのに無駄に働きたくない。四大や専門学校だってそうだ。やりたい事がないのに学んでどうする。金の無駄だ。父さんは進学、母さんは俺のしたい通りに、と言うだろう。
「ん〜〜……」
不意にぽわんと『廉の事じゃなくても何でも相談して。』と文末にあった白林さんからのメッセージを思い出す
いやいやあれば社交辞令、だよな。
いくらああ言ってもほぼ赤の他人の高校生から進路の事を相談されても迷惑だよな、…。う〜ん…でもまともに俺の意見を聞いてくれそうなのは白林さんだけっていうか、、…。俺に兄は居ないけど、白林さん、何か兄ちゃん感あるんだよな。あ、近所のよく遊んでくれるお兄ちゃん?的な
「ん〜、あ〜色々あったし考えるのやーめた!」
今日は週末からのアレコレで疲れたし、うんうん。疲れた勢いって事で!黒川さんには迷惑掛けられまくってるから少し迷惑かけてみよっかな!!
そう深く考えることを放棄した俺は、白林さんのトーク画面を表示し、電話マークをタップした。
数コール後…
『もしもし?華くん?廉と何かあった?』
「あ、えっと、白林さん!こんばんわ」
スマホから聞こえてくるのは白林さんの艶のある声
やっちゃった〜勢いで掛けちゃった〜
「や、特に何もないんですけど、」
『うんうん。何か悩み事でもあった?』
「…え、あ、そうです!」
『俺さ、華くんと同い年の弟がいるんだよね。あ、俺じゃ話しにくいか』
「いっいえ、!白林さんなんか兄ちゃんっぽいなって思ってたので!実は進路の事で相談があって。」
『華くんにそう言われるの嬉しいな〜!どうした?』
かくかくしかじか、全て話すと白林さんは豪快に笑う
「なんで笑うんですかぁ〜」
『いやぁ、青春だね。いいねいいね。俺にはそんな悩み無かったからさ。なぁ、週末さ、白林さんのお仕事見学してみない?進学か就職に限らず視野広めるいい機会になると思うよ?』
先週までの俺が聞くと、『俺はαだから悩みなんか何も無い。人生勝ち組だ。』って聞こえていただろうけど、あんなカッコイイ人でも裏社会にヤクザとして居るのを知っていると、あの人にも色々あるんだな、と思いなんとも言えない気持ちになる。
「お仕事見学?」
まさかの裏社会への斡旋?いやでも俺はその若と番だし、いずれは結婚…する、のかな?プロポーズ?もされちゃったし。どちらにしろ裏社会と関わりを持ってしまった身だ。腹を括るしかないか。
『そんな身構えなくても大丈夫だよ。ちゃんとクリーンなお仕事だからさ。なんなら友達何人か連れてきてもいいよ』
「…日本刀とか銃…とかでは…?」
『ないよ、はは。大丈夫だって。』
「よかった…あ、じゃあ1人連れて行きます!2人でお願いします!」
『了解。土曜日の午前10時にいつものコンビニで待ってて。』
「はい。夜遅くにすみませんでした!」
『おやすみ』
通話時間は10分もなかったはずなのに体感では1時間程話している気分だった。
てかいつものコンビニって…。家の近くのコンビニだろうがなぜ白林さんが知っているんだよ…。
深く考えると負けな気がして、そのままスマホを閉じる事なく、爽にメッセージを送る
『土曜日の午前10時から遊び行かない?俺ん家の近くのコンビニな』
半分嘘のメッセージを送ると秒で既読がつき返事がきた
『まじ?行く!』
返事はもちろんYES。どうしても一人は不安だったから良かった。行き先きも聞かず、俺のことになるとよく考えずに返事をする爽は適役だ。誘って正解だった。
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