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オーバーブッキング

「そろそろ行くか」 俺と爽のポテトがなくなったくらいに黒川さんはそう言いながら立ち上がる。もしかして外には厳つい運転手付きの車が…、なんて心配していたのは杞憂だった。 黒川さんの運転でマンションに着く。相変わらずそびえ立っていて少し怖い。隣を歩く爽は開いた口が塞がらない、って感じ。わかる、俺も。 部屋の前に着き、振り返った黒川さんに鍵を渡された。 てっきり黒川さんが開けるものだと思ってたので上手く反応できずに差し出された鍵と黒川さんの顔を交互に見る。 「ほら、開けてみ」 「え?」 よく分からないけど鍵を受け取り差し込む。半回転させるとカチャッと音がして解錠したのがわかった。振り返ると黒川さんは満足そうな顔してるし爽はこのおかしなやり取りになんの疑問も抱いていないようで黒川さんと同じくニコニコしてる。 とりあえずそのままドアノブを引くと中からドドドっと足音が聞こえ、次の瞬間、腹辺りに強い衝撃を感じそのまま後ろに倒れこんだ。 「廉〜!!!!」 「っゥ゛、」 「華!」 謎の物体は俺の腹の上に乗っていてとても重い。犬か?と思ったけどこの間来た時は犬なんていなかったし黒川さんが犬を飼うとは思えない。俺に突進してきたのは言わずもがな人だった。 「…誰コイツ」 「ッヒ、……」 俺に馬乗りになっているのは俺と爽と同い歳くらいの制服姿の男。そいつは俺が黒川さんじゃないと気付くとめちゃくちゃ睨んでくる。怖い。 「廉!コイツ誰!!」 「お前どけ、重いだろ」 「ちーがーうー!!こいつ何!!誰!!!」 「っぅ、゛、」 しかも俺の上で跳ねやがる。跳ねるな、重い、痛い、とは言えず胃の中のバーガーが飛び出しそう。黒川さんは止めろと言いながら助けてくれるつもりは無さそうだし爽に至っては思考放棄して微笑んでやがる。

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