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胸か心臓だかわかんないけどそこら辺がチクチク鋭く痛む。自分でこの感情が何かは分かっている。病気なんかじゃない、目の前の光景にシンプルに嫉妬している。だってつまんないだろ。自分の番 兼 恋人が他の男と腕組んでるとか。有り得ない。自分にこんな感情があった事も有り得ない。
理央は見た感じαじゃなさそうだから俺と同じΩかも。αはΩと違って複数の番を持てるっていうけど、…。
頬を染めて可愛らしく黒川さんに笑いかける理央をじっと観察する。項は制服の襟で見えない。
──まさか、ね。
「廉〜次はクラゲ見たい!その後イルカショー!」
「はいはい引っ張るなって…」
館内が暗くてよかった。ここは特に暗い深海魚のコーナー。次はクラゲらしい。理央に腕を引っ張られる黒川さんの何か言いたげな視線を感じるが中々顔をあげられない。
さっき浮かんだ最悪の想像を振り払うように頭を振って二人の後ろからついて行く。
「廉!見て!これ可愛いよ」
「…ふーん」
黒川さん以外の男が今の理央のセリフを聞いたら100人中100人が『お前の方が可愛いよ』と返すだろう。何度も言うがそれくらい理央はかわいい。俺は?もちろん可愛くない。何で身長は同じくらいなのに理央は可愛いんだ。
「華」
「いっ、てぇ!」
「──駄目!廉は俺とイルカショー行くの!」
不意に伸ばされた黒川さんの手。思わず俺も手を伸ばすが触れる直前でばしっと理央にはたき落とされる。じんじん痛む手を摩ると黒川さんの咎める様な視線が理央を捉えた。
「お前いい加減にしろよ」
「…」
「おい聞こえてんのか」
「…トイレ…いってくる」
黒川さんに怒られるとそう言って近くのトイレに行った理央。俺も何か言われるのかな、いや俺は何も悪くないよな、と思いながら何となく俯く。
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