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2 side 金条 華
「華」
「あ!お帰りなさい!」
戻ってきた黒川さんは細長い箱と四角い箱を一つずつ持っていた。なんだろう。と思っていると俺の隣に潜り込んできた黒川さんは俺にそれを突き出す。受け取れって事かな?
「俺に?開けていいですか?」
「うん」
どうやら俺へのプレゼント的な物のようだ。なんでこのタイミングなんだろう。
四角い箱は横に置いて、まず細長い箱を手に取る。ラッピングの紙を開けると白い箱が表れる。
上の蓋をパカっと取ると中にあったのはクッションに置かれた黒い腕時計だった。めちゃくちゃシンプルで大人って感じ。普段高級品を見ない俺でもわかる。超高そう。
「早いけど誕生日プレゼント」
「えっ…嬉しいです!ありがとうございます!」
誕生日教えてなかったのになんで知ってんだろ。
ワクワクしながら腕時計を丁寧に取り出し左手首に着ける。なんかすっごい大人っぽい…!黒だから黒川さんみたい!!
「見てください!黒川さんみたいです!あ、いつも黒川さんと一緒に居るような感じ…的な…」
腕時計を着けた左手首を黒川さんに見せると満足そうに笑って頭を撫でてくれた。なんか黒川さんも嬉しそうな顔してる!今のはちょっとキモいかなと思ったけど反応が良かったので良しとする。
次はもうひとつの四角い箱。こっちもラッピングの紙をとって箱の蓋を開ける。
中に入っていたのは紙に包まれた小さな折り畳み財布だった。薄紫で可愛い。
「それキーケース」
「…あ、本当だ。」
黒川さんに言われて財布だと思ってたのはキーケースなのに気付く。確かにチャックとか無いし。革製でこれも高そう。全く知らないブランドだけどきっとハイセンスなブランドなんだろうなぁ。俺、家のスペアキー2回も失くしたしけどこれに付けたら失くさないよな。
「家の鍵これに付けますね。ありがとうございます!」
「…あとこれも」
キーケースをまた箱に戻していたら黒川さんに手首を掴まれる。
「手開いて」
言われた通りに手を開くと、手のひらに置かれたのはどこかの家の鍵。
どこの家の鍵なのか心当たりがあるのはひとつだけ。
嘘だ。え、本当に?手のひらに乗った鍵が途端に重く感じる。
期待でドクドク爆走する心臓を落ち着かせる為に深呼吸を繰り返す。
「…これって、あの…」
「ここの鍵。いつでも来ていい。」
ここの鍵
つまり黒川さん宅の鍵
いつでも来ていいって…それって…それくらい俺とのこと真剣に考えてくれてるってこと?
「…お、俺なんかに渡していいんですか…」
「俺が選んだ華なんだから何も気にすんな」
とても嬉しいはずなのに何故か同時に同じくらい不安になって隣の黒川さんを見上げると、肩を抱き寄せられ一回触れるだけのキスをされる。
「…ぅぅう嬉しいっ、です…」
「よく泣くな、寝るか?」
ここ数日間毎日泣いているはずなのにやっぱり涙はたくさん出てきて頬を濡らす。黒川さんは俺を抱き締めながらベッドに転がる。
寝ますと頷くと優しく髪を梳かれる。それが心地よくて嬉しくて幸せで、でも少し恥ずかしくて気付くとそのまま寝落ちてしまった。
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