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床に寝そべって琉唯くんを待つこと数分。
玄関のドアが結構強く叩かれているのが聞こえる。
俺は動けずにドアの向こうの琉唯くんを待つ事しかできない。すぐに音は止み廊下をドスドス歩いてくる足音が聞こえる。
「おい大丈夫かよ」
寝室のドアが開いて頭上から聞こえてくる声にしっかり反応できない。とりあえず引き起こされてベッドになんとかよじ登る。ものの5分程度でこんなに酷くなるとか思わなかったし自分の準備不足さが情けないし超恥ずかしい。
「飲める?」
「あり、…ぁ」
汗かいてるしと琉唯くんから手渡された経口補水液のペットボトルが手に力が入らないせいで上手く受け取れずに床に落してしまった。
キャップを空けてくれていたから落とした拍子に床に溢れあっという間に水溜まりを作る。俺は相変わらず動けないし琉唯くんがタオルで床を拭いているのを眺めるしかできない。
「ごめ、…」
「しんどいんだろ気にすんな。ちょっと寝てれば」
もう返事するのもしんどい。琉唯くんには申し訳ないけど返事はせずに掛け布団を深く被って中で丸まる。
こうしたら黒川さんの匂いがいっぱいしてハグされてるみたいで安心するし気持ちいいから。
目を閉じるとそれからまた少し寝てしまっていた。
起きてさっきより数倍力の入らない身体を叱咤して掛け布団から顔を出すと、枕元に置いてあるメモ紙に気づく。
『リビングにいる スマホ鳴らせば行く さっさと若呼べ』
置き手紙というには雑な殴り書き。琉唯くんっぽい。
さっさと若呼べ、かぁ…。
見られたくないとか言ってたけど色々きついし今すぐ帰ってきてほしいのが本音だ。
「…はぁ」
まだ昼前。今回も寝たら治るなんて思ってたのが間違いだった。寝る度に酷くなってる気がするし昨日あんなに抱かれたのに一刻も早く黒川さんに触ってもらいたいって事だけが頭を支配する。絶対呼ばないなんて決意はすぐにどこかへ消えた。
もう呼んでしまおう
無理だ
スマホを鳴らせばワンコールで繋がる通話。
中々なんて言えばいいかわからなくて黙っている俺に黒川さんは『華?』と優しい声で名前を呼んでくれる。
黒川さんだ…!!
初めてのちゃんとしたヒートで怖いのと苦しいのと寂しいのが爆発して、涙となって溢れ出る。
「ぅっ…帰ってきて…たすけて」
『どうした?今どこ?』
「べっど、…ヒート、きて…」
『すぐ帰るから待ってて』
声を出さないと聞こえないのにうんうんと頷く。
黒川さん、いつもと違って年相応の普通の大学生みたいな口調が新鮮でかわいいなぁ、とか思うけどすぐに頭の中に霧がかかったように何も考えられなくなる。
いっぱい寝てるのにまた下がってくる瞼。
抗わずにそのまま目を閉じた。
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