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「ごめんって…」 「ふぇぇぇえ・・・っ」 「・・・ごめんって言ってんじゃん・・・」 泣き続ける理央と俺を繋ぐマジックテープをベリっと剥がして立ち上がる。 肘と膝を擦り剥いた。体操服も砂だらけになった。 体が痛いしそれよりクラスメイトの視線が痛い。 傍から見たら転校生を虐めてるようにしか見えないかもしれない。高校生にもなってそんなわけないと思ってもらえるのを祈るばかりだ。 まだ寝転んでいる理央を置いてグラウンドの端に行く。 ここは俺のお気に入り。 みんな自分の練習に一生懸命で誰も俺が居なくなった事に気付かない。 「俺も可愛くなりたいなー…」 いや、違う。 愛くなりたい、というか、上手く立ち回りたい。 俺は学校で爽以外には話しかけないし話しかけられない。 何でか分からないけどクラスメイトと目が合ってもすぐに逸らされるし、話しかけられても事務的な事だけ。 由奈は目が合ったらニコってするようにしてるとか言ってたから真似したら友達できるかな。 「…無理か。」 想像してため息をつく。そんなのできないしできたらこんなに悩んでない。 「金条サーン、少しは仲良くできねーの?」 少し遠くから聞こえてきた声に顔を上げる。 てくてく歩いてきた琉唯くんはめちゃくちゃ面倒くさそうな顔をしている。 俺だってできる事なら仲良くしたい気持ちはある。 「…できるわけない、俺 琉唯くんと組みたい。だめ?」 「駄目、もう組み合わせ担当に提出したし」 俺の隣に来て同じように座る今日の琉唯くんは敵だった。誰も俺の味方してくれない。 ぶすっと下を向いて草をむしる。 まともに練習できないやつと居るよりここで草むしりして学校に貢献してる方がマシだ。 「てかお前、血」 ハッと琉唯くんの声音が変わったのに気付いて隣を見ると、琉唯くんの視線は俺の膝に注がれていた。 「…あ…うん。こけた。」 「保健室行って消毒液と絆創膏持ってくる」 「大丈夫、琉唯くん場所分からないだろうしちょっと行ってくる。」 そう言っても『いや、怪我させといて無視とか若に怒られる』とブツブツ言っている琉唯くんを何とか静かにさせて保健室へ向かった。

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