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「り、んどうさん…っ…」 「金条さん、どうされました?」 「あっ、ごめんなさい勝手に来て。俺、俺、あの、黒川さん今忙しいですかね、一応メッセージ送ってみたんですけど、」 安心で少し潤んだ視界を誤魔化すように数回瞬きして早口で言うと、凛堂さんはニコッと笑って社長は会議中なので仕方ないですと言う。 レンズの奥の瞳に全て見透かされそうで思わず目を逸らした。 「なので私が代わりに参りました」 ・・・当たり前か・・・仕事中に抜けてくるなんて無理か。・・・期待してたわけじゃないけどね。 それから『まぁ、ここは目立ちますしこちらにどうぞ』とエスコートされ通されたのは冷房が効いた小さめの応接室だった。 「…すご…」 壁もローテーブルもソファも全部黒だし照明もオレンジで落ち着いた雰囲気。お洒落なバーのちょっとした個室みたいだ。 「もちろん広くて明るめの応接室もありますがこちらの方が落ち着くかと思いまして…暗い所は大丈夫ですよね?」 「…はい、本当にありがとうございます…」 頭が上がらない。 凛堂さんは俺が何かおかしいから落ち着くような部屋を選んでくれたんだ。何も言ってないのに。 「制服はどちらに」 「あ、鞄にあります」 「後ろを向いていますので」 くるっと後ろを向いてスマホを操作し始めた凛堂さんにハッとする。 …あ、着替えろってことか。 ちょっと恥ずかしいけどここで一人にされても心細いし怖いし、やっぱり最善の対応をしてくれた凛堂さんに感謝しながら素早く着替えた。

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