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社長とヤクザと恋人

今、俺は人間って驚きすぎたり唐突に理解の出来ないことを言われると思考停止するのを実感している。 「よし、今すぐここで全部脱げ」 いつもと変わらない様子でそう言われたのが多分5分前。いや、5秒前だったかもしれない。理解ができなくて時が止まってる。 俺の考える力はまだ夏休み中らしい。 ついさっき倉庫から拉致られたと言ってもいいスピードであっという間に黒川さん宅に連れて来させられた。 そして靴を脱いだ途端さっきのセリフを言われてハイ分かりましたって従える人間がいるのか?いたら是非とも会いたい。 「早く脱げよ」 「…なんでですかね?」 腕を組んで俺を見下ろしながら早く、と急かす黒川さん。なんかデジャブだし俺に拒否権なんかない。 ヤクザとカタギ。社会人と高校生。これで番でもなく恋人でもなかったら一発で逮捕されていた所だ。 「触られた所は俺が洗う。洗った後は消毒だ」 触られた所って先生に? 「そしてお前は来週いっぱい出校停止。以上。」 いや、なんで?俺知らない間にインフル発症してた?それならちょっとウケるかも。 「…えー…っと」 「脱がないなら俺が脱がすけど」 じりっと近寄ってきた黒川さんから逃れるように俺もじりっと下がる。 けど玄関の広さなんかたかが知れていて、俺の背中は直ぐに冷たい玄関ドアに当たった。 洗ってもらうのは恥ずかしい、けど黒川さんに洗ってもらったらこの不快感もマシになる気がする。でもやっぱり恥ずかしい。 「…ぅ」 「ほら」 じとっと睨んでみても脱がせるのに変わりはないらしい黒川さん。 全身に突き刺さるような視線の中、俺はしぶしぶTシャツの裾に手をかけた。

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