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今日は早めにこじ開けられる固く結んでいた唇。
黒川さんの濃い香りに思考が散り散りになっていく。
「唇、切れてる」
「…ん、ぁ…?」
そう言えば噛んだような噛んでないような。
指摘されて、唇がピリッと痛んだ気がした。
でも気がするだけで、今はそんなのどうでもいい。
いつもより強く吸われたり軽く噛まれたりして、擦り合わせる舌は全部黒川さんだから許せるし嬉しいし気持ちいい。
俺にはもう黒川さんしかいないし、これからも黒川さんしかいらない。
「怖かったら言えよ」
両頬をむにむにしながら心配してくれる黒川さんにこくこくと必死に頷く。
心配してるくせにギラギラしてる目も黒川さんだから怖いはずなんかない。
もっともっと俺に欲情してほしい。
俺が大丈夫だとわかった途端、一気に雄っぽく色気を孕んだ瞳に見蕩れて心臓が騒がしく鳴り出す。
考える度に、目が合う度に、声を聞く度、どんどん好きになる。
由奈が押し付けてきた漫画のヒロインも同じような事を言っていたけど、読んだその時は全然意味が分からなかった。
でも今なら分かる。
あのヒロインもきっと一生懸命、王子様が好きだったんだろう。
「どうした?」
「…いや、」
考え事に耽っていたのに気付かれ首を振る。
改めて好きだなと思った、なんて素面だと恥ずかしくて言えない。
言ったらきっと黒川さんはカッコよすぎる笑顔で『俺も』って言うから、俺の心臓が持たない。
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