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2 side 黒川 廉

今日は体育大会本番。 グラウンドのスピーカーからは生徒の選手宣誓が聞こえてくる。 俺は今日だけ理央の保護者だから(華を見るため)朝早くから優斗と早野と共に某高校の体育大会を観戦しに来ていた。親父が『暑いからパス〜』なんてふざけ事抜かしながるから一人は心許ないしとりあえず優斗と早野を誘った次第だ。 まだ午前9時といっても太陽は容赦なく照りつけてクソ暑いし、これだけ生徒の人数がいると華がどこに居るかも分からない。 「え、人数多すぎじゃない?」 「…これはさすがに無理ですね!」 保護者用のテントの下で体育大会の競技種目が書かれたプリントを片手に早々諦める二人。 でも無理では済ませない。 まず手配させた新しい体育教師がまともか確認しなければいけないし、華がでる二人三脚は理央とペアだって佐伯から聞いて、明らかに馬の合わない二人が無事にゴールできるか見届けなければならない。 それに華がクラスメイトとどんな風に過ごしているかも気になるし、やっぱり理央も血が繋がっていないとはいえ弟だ。転校して上手くやれているか少しは気になる。 あと佐伯がちゃんと華を護れているかの抜き打ち検査でもあるし、清水爽が本当に華にとって安全なのかも確認しなければ… 「チッ、駄目だ。気になる事が多すぎる…」 頭の中で今日この目で見なければいけない物をまとめようとするが、多すぎて目眩がしてくる。 隣で優斗が『過保護すぎて嫌われるぞ』なんて言ってるが気にする余裕はない。 「あら〜由奈がいたわ〜」 「…華は…どこだ母さん」 「背が高いからきっと後ろのほうねぇ〜」 イライラしながら3年生の列を前から順に華を探していると不意に耳に飛び込んできた男女の会話。 「「?!」」 『華』という単語に俺と優斗が反応する。 声の出処を探そうと周りを見てみるが、それっきり華という単語は聞こえてこず中々見つけられない。 「廉、廉、あそこ」 そんな俺に隣に立っていた優斗が斜め右前の方向を目立たないよう控えめに指さす。 「…似てるな…」 そこには華に良く似た堅い表情の男性と、それとは真反対にフワフワした雰囲気の女性がいて、二人はグラウンドを眺めていた。

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