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白林と早野は気を利かせ、理央と後から合流した佐伯を連れて昼食に行った。 「華、その方、お知り合いかしら?」 「……」 母親のおっとりしているけれど少し緊張している声に華がピシッと固まる。 華は俺を見たあと困ったように目を泳がせた。 「えっと…」 ここは俺が何か言わなければいけないのに、声が出ない。 喉がカラカラに乾いて心臓は爆速で動いている。多分この先こんなに緊張する事は無いだろう。 口を開閉するだけで何も言わない俺を一瞥する父親。 「華、来なさい」 華は父親から呼ばれロボットのように不自然な動きで横に移動する。 暑さのせいでは無い汗が毛穴という毛穴から吹き出した。 まずは挨拶、挨拶をしなければ。 ぐっと両手を握り締め、緊張のあまり強ばる表情筋を叱咤し口角を上げる。 そして父親の方に体を向け挨拶をする。 「ご挨拶が遅れて申し訳ございません、息子さんとお付き合いさせていただいてます。黒川廉と申します。」 きっちり最敬礼をする。 しっかり笑えていただろうか。 「…君が」 そう言ったきり黙ってしまった父親に再び汗が止まらなくなる。何かおかしな事を言っただろうか。 もしかしてやっぱり土下座謝罪から始めた方が… 「今日はもう帰る」 「っあの、」 「あなた〜せっかく会えたのに〜」 険しい顔でくるりと背を向け歩き出した父親。 伸ばした手は虚しく空を切る。 「ここは暑いし、明日うちに来なさい。積もる話もあるだろう。」 少し振り向いた時に見えた横顔は華によく似ていた。 「黒川さん、黒川さん」 両親が去ると華が頬をひくつかせながら寄ってくる。 きっと良くない雰囲気が不安だったんだろう。 「…お父さんとお母さん、…何か苦手な食べ物はあるか」 「えっと…父さんはナスが苦手で、母さんは何も。」 なら手土産は何でも大丈夫か。 とりあえず今日はすぐにスーツを新調して、その後は手土産を買いに行かないと。 「黒川さん…俺…なんて言われても黒川さんについて行きます」 「……」 不安そうに俺を見上げる華。眉はきゅっと寄っていた。 思わず暑いのも、ここが学校なのも忘れて手首を引っ張って抱き寄せる。 「ちょっと!」 触れたところから感じる心音はとても速い。きっと俺も同じくらい速い。 砂のせいで少し指通りの悪くなった髪を撫でる。 「大丈夫だ」 自分にも華にも言い聞かせるように呟く。 認められなければそれまで。 俺と華は番だ。家族の繋がりよりも強い物で結ばれている。 「ほら、お前も理央たちの所に行け」 体を離して背を押す。 小さく頷き、歩き出した華に手を振り俺も学校を出た。

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