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それからの俺たちはどんどん仕事が増え、撮影漬けの毎日が続いた。
「華〜おつ〜最近上手く笑えてんな」
「そう?ありがとう」
今日ラストの撮影が終わり、休憩していたところ爽の言葉に思わず笑みが溢れる。
白林さんにもこの間、同じ事を言われた。
俺は自分が成長できていないとずっと思っていたけど、しっかり変われているんだと安堵する。
「あ!その顔〜いいね〜」
「まだまだ爽には追い付けないけど…」
嬉しく有り難い事に、俺たちにもファンができた。
最近初めて出待ちを経験してちょっと怖かったけど、そこまで想ってくれるファンもいるってこと。
二人のSNSアカウントは毎日フォロワーが増える一方でも、自分たちが人気になっているという実感がイマイチ湧かない。
だが、嫌でも実感する仕事がくる事を俺はまだ知らなかった。
「お二人さん、休憩中悪いけど次の仕事の話してもいいかな〜」
コンコンというノックと共に入ってきたのは何かの書類を持っている白林さん。
一応俺たちにもマネージャーという存在はいるのはいるけど、白林さんがスケジュール管理をしてくれる事がほとんどだ。
入室してきた白林さんはニコニコしながら俺たちの前のソファに腰掛ける。
そして持っていた書類をテーブルに広げた。
内容は化粧品のPR。思わず二度見する。
「二人にCMのお話でーす」
「…CM…」
「CMっ?!ってコマーシャル?!テレビの??!!!」
「そうそう、市場を広げたいらしくてね」
ほとんどの女性がメイクをする事は知られているけれど、男性がメイクをする、と聞くとまだ驚いてしまう時代。
そんな世の中を変えるというコンセプトで製品を作っているブランドがあるらしい。
「で、やる気は?」
「「あります!!」」
爽と二人で大きく返事をする。
「華!」
「うん、頑張ろう!」
これはチャンスでしかない。
このチャンスをものにして絶対更に売れる。そして一秒でも長く廉さんの視界に入るんだ!!そう新たに気合いを入れ、爽と頷きあった。
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