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驚きで変な声が出そうになるがグッと我慢する。
スマホは自然に画面を伏せて、横のテーブルに置いた。
「出ないのか」
「はい、全然大丈夫です」
キリっとした顔で頷き置いたはいいが、着信音は止まらない。
「…」
やばい、動揺し過ぎて電源切るの忘れてた。
別に蘭さんとやましい事があった訳じゃないけれど、黒川さんが敢えて自分の双子の蘭さんの事教えてくれなかったのは理由があると思う。
なのにそれを聞く前に俺が蘭さんとお隣さんで知り合いだって知ったら絶対嫌な気持ちにさせてしまう。
しかも一瞬とはいえ、今は見えなくなったが赤い糸が繋がっていたなんて知られたらもう切腹するしかない。
シレっと全て無かったことにして黒川さんに抱きつこうとする俺。
「……」
「あっ!」
まぁ見事に躱されテーブルの上のスマホを取られる。
画面を見た黒川さんは俺と同じように固まった。
「蘭さん…って、蘭、…じゃないよな?事務所の先輩か?」
何と言い訳しても俺と蘭さんは住んでいる所が隣だし、本家に行けば蘭さんはいるからいずれはバレる。
もう知り合いだということを正直に話すしかない。
「…廉さんの、お兄さん……です」
「……」
微かに目を見開いた黒川さん。
次の瞬間、目にも止まらぬ早さで俺のチョーカーを外した。
「!え?」
え?これそんな秒で取れるヤツだった?俺でも毎回少し取るのに手間取るのに向かい側からそんな早く取れちゃうの?
視界にフっと影が差す。
素早く腰を浮かせた黒川さんが俺の背後にまわった。
スルっとうなじを撫でられて俺は身体を硬直させる。
「っ、何」
「少し我慢して」
後ろから感情の読み取れない声が聞こえた直後、うなじに激痛が走る。
…噛まれた!!!
「いっっっ…」
咬まれたのを理解して、混乱する。
なんで今?もしかして痕が消えてた?いやそんなわけない。のに。
その後、数秒間、遠慮の欠片もない力でアルファ特有の鋭い歯が肌にめり込む。
「ぃたい…廉さん、痛いっ…」
最後に痕を馴染ませるように這った舌。
それで更に傷がヒリつく。俺が逃げないようにお腹にまわされた腕をぐっと掴む。
「っっ〜〜〜ぁ…」
痛いのに痛いだけではなく、少し気持ちいいというか、ゾクゾクする刺激。背後から漂う濃いフェロモン。
何より廉さんに噛まれているというのが一番気持ちいいのに影響している気がした。
でももう一度噛まれたら堪らない。本気で肉が抉られてしまう。少しの快感より肉がえぐれる恐怖が勝った。
廉さん、今どんな顔してる?怒ってる?
項を手のひらで覆い振り向く。
「嫌な予感がすると思ったんだよ…何で蘭と知り合いなんだよ…」
怒ってはいないけど、不安そうな表情。
虚ろな目で低く暗い声を発する黒川さんの口元には、微かに赤い血がついていた。
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