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それからしばらくの間、何をするでもなく黒川さんに抱きついていた。
首元の匂いをスンスンスンスン嗅ぐ。
黒川さんはもっと嗅げというように頭をぐっと押さえつけてくる。
「…いい匂いします…」
「そうか?」
正直に言うとヤリたい。
もう久しぶりの黒川さんがかっこよく見えて仕方がない。
しかもフェロモンの香りはどんどん強くなるし、触れられている所は熱い気がする。
「はっ…」
頭を撫でられ、思わず熱い息を漏らしてしまう。
「…華、お前ヒートはいつだよ、匂い強いけど」
言われて考える。
ヒートは2週間くらい先の予定だったから違うはずだ。
それを伝えると黒川さんはそうかと頷いた。
久しぶりの番にあてられて、ヒートが早まるなんて事があるのだろうか。ヒートかどうかはさて置き、とりあえずヤりたい。頭の中はそれでいっぱいだ。
「…ヒート、とは関係ないんですけど、あの、あの…ですね……」
視線でどうした?と訊いてくれてるような黒川さんには申し訳ないけど、俺、はしたない事考えて、それを伝えようとしてます。
何度深呼吸をしても『セックスしませんか?』なんて言えるわけない。
人生勇気が必要な時はある。多分今みたいな状態の時だ。
「失礼します!!」
綺麗な顔を両手で包み、思いきって唇を重ねる。
下唇を軽く食むと、声にならない吐息が聞こえた気がした。
「っ」
一瞬驚いた様子で身を引いた廉さんだが、すぐに後頭部を掴まれ再び唇が触れる。
「ん…!」
スムーズに侵入してきた熱い舌に思考回路が麻痺した。
今までにないくらいの強引さで咥内を荒らされる。
「ん、ぁ」
いつ息継ぎをしていたか忘れてしまった。
鼻で息をしたらフェロモンをダイレクトに吸ってしまうし、口で息しようにもままならない。
「っはぁ、はっ」
最後にちゅっとリップ音をたてて離れた唇。
力が抜けて、くたっと上体を預けた俺を黒川さんは複雑な表情で見下ろす。
「…お前、今のどこで習った?礼をしないとな」
そんな表情なのに、俺の頬を撫でる手の動きがやけに官能的で吐き出す息が熱く震えた。
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