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「言え」
ぶるぶる首を振る。
教えて貰ったとかそういうのじゃないのに。
誰にも触らせてないよ。俺はあなたのものだから。
「っ廉さん、だけ…俺、ずっとずっと、廉さんだけです」
甘えた声になってしまったのは自覚済みで少し恥ずかしい。
身体を密着させるように覆いかぶさってきた廉さんはあっという間に俺のベルトを外す。
そのままチャックを下ろされ下着の中に入ってきた手が、次に何をしようとしているかはすぐに分かった。
「あっ駄目ですよ、シャワーしてなっ」
目をぎゅっと閉じて廉さんの腕を掴む。
反応しかけていたものをとり出され、それに綺麗な指が絡みつくのを見ていられなかった。
ヤクザで社長でかっこいい廉さんに男の性器なんて触らせたくない気持ちと、こんな風に優しく触れるのは俺だけなんだという優越感が交ざりあって心地良い。
「触らせて」
「だめです」
ゆるゆる首を振る俺の顔はきっと満更でもなさそうなのだろう。
キスだけで我慢できずに溢れ出した汁を塗り広げるように、遠慮なく上から下まで大きい手で擦られる。
「だっ、駄目、ダメです、あとでっ」
「うんうん、先に一回イこうな」
廉さんはだめだめ言い続ける俺を黙らせる為にキスを続ける。
一緒にイきたいのに、俺だけ先に気持ちよくなるのは嫌なのに。
「ん、ぅ、待って待って待って、ほんとに!!」
「ん…待っててくれてありがとうの気持ち受け取れよ」
「はぁ?!」
何が『待っててくれてありがとうの気持ち』だよ。
何か別のもので返してくれよ。てかもうまた触れ合えただけで十分幸せなんですけど。
訳の分からない事を言った黒川さんは更に手の動きを速め、俺は一気に絶頂へ連れていかれる。
「ン、っん〜〜〜、あっ」
頭の中が真っ白になり、腰が大袈裟に跳ねた。
「はぁ…はっ…」
「…ゴム取ってくる」
ティッシュで手を拭いたあと、シャツのボタンを外しながらソファから下りる廉さんの手を掴んだ。
「使わないとか…、ダメですか」
「は?」
目を瞠り俺を見下ろす廉さんに一瞬たじろぐが、言ってしまったからには全て話すしかない。
「俺、正臣さんに言ってきたんです。俺は死にませんって」
「聞いたんだな」
そう。俺は聞いた。
廉さんが記憶を失う原因の一つになっていた大きなストレスの部分を勝手に知ったのだ。
「最後は許可されたのか分からないけど、でも!」
「嬉しいけどもう少し落ち着いてからにしよう。な?仕事とか色々あるし」
優しく微笑みながら俺の髪を梳く廉さんはやっぱり落ち着いていて、俺より大人なのを実感した。
…そんな顔されたら引き下がるしかないじゃないか。
「…すみません…」
手を離すと、廉さんは頬に一回キスして寝室へ向かった。
「…はぁ…」
久しぶりの射精でぐったりした身体と上手く働かない思考。
「あれ?」
そこで一つ違和感に気付く。
どうせヤるならベッドがよくない?大体いつもベッドだったし、ベッド以外の場所でしたのを数えると片手で足りそうだ。
こっちでしたら片付けとかめんどくさそうだし、廉さんが戻ってくるまで待ってられない!
「よいしょ…!」
年寄りのような声を出しながら、少しだけ力の入らない脚を踏ん張り立ち上がる。
そうと決まれば廉さんの後を追いかけよう!!
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