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はじめての side 黒川 廉

俺のいない間に成人していた華。 清水や佐伯、そして佐伯に『二度とお前とは酒を呑みたくない』と言われたらしく、本人もどう酔っていたか憶えていないらしい。 俺が一番に飲ませたかったのに。少し悔しい。 悔しいけど、これから華と酒を呑むのは俺だけにしてもらおう。色々心配だ。 * 色々あり、二人で飲んでみようという事になった。 飲んだ方が話しやすくなるかと思ったからだ。 まぁ、糸が見えていたなんて事は、ベッタリくっついてくる華が可愛過ぎてどうでも良くなってきている。 あと華が酔うとどうなるか俺が知りたいだけだ。 あまり気乗りしないようだったが、『うーん』と唸ったのを強制的に肯定と捉える。 気が変わらないうちにと、佐伯に酒を買いに行かせた。 届けてくれた時、玄関先で記憶が戻った事を大号泣されたが、華との時間を邪魔される訳にはいかないので、すぐに帰した。 ビニール袋から、華が好きそうな味の缶を出す。 きっと甘いのが気に入るはずだ。 「はい、乾杯」 「乾杯」 華のグラスに比較的飲みやすそうな酎ハイを注ぐ。 自分のグラスにはノンアルコールのビール。 俺も酔うと意味が無いからな。 「どう?」 華と同時にグラスに口をつけ、様子を伺う。 謎の緊張で、喉を通る冷たく苦い液体がやけにつっかかる気がした。 「甘くて飲みやすい気がします」 ニコっと、それそれは可愛く笑った華。思わず見蕩れてしまう。 そして華はグラスを傾けると、そのまま豪快に一気飲みをした。 「あ!これ美味しいです!桃味?」 「あんま急に飲むと悪いぞ」 想像していなかった、男気溢れる呑み方に驚いた。 一応止めるが、結構お気に召した様で、自分で残りをグラスに注いでいる。 「廉さんが隣にいるから嬉しくて」 そう言った華は、握った手をきゅっと握り直し、俺の手の甲を自分の頬にスリスリとあてる。 まだ見慣れない柔らかな表情の華に、俺の心臓はどんどん動きを速めた。 モデルを始めたからか、表情の作り方というか、自然な笑顔が現れるようになっている。 「ちょっとききたいことあるんだけど…」 そう切り出すが、本当は訊きたくない。 もし、俺の望む答えと違ったらどうすればいいんだ。

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