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ゴクリと生唾を飲み込み、重い口を開く。
「俺が前に赤い糸が見えるって言っただろ?」
まだ華と出会ってすぐの頃、俺は華に有り得ないような本当の話をした。
それを覚えていても覚えていなくても気にしない。
俺がいま一番気にしている事は、華と蘭が運命の相手だったのかどうかだ。
「……」
華が果たしてどんな反応をするのか、顔に穴が空きそうなほど見つめる。
俺の視線を受けた華は、グラスを煽り酒を飲む。
「はい?あ…あ〜…あは!…んフフ…」
そしてこてんと首を傾げたあと華はなぜか、にぱっ!と笑顔になった。
『お前にも、赤い糸が見えたりする?』、そう訊こうとしたが、あまりにも笑顔が可愛すぎて思わず訊くのを止めた。
「?」
「あはは!…んんっ…、フッ…」
俺の怪訝な顔に、しまったと思ったのか口をおさえる華。
だが目が笑っている。
涙袋がいつもよりハッキリ見えてかわいい。じゃなくて、何で笑ってるんだ?
「ふっ、あっはは!!なんですかその顔!!」
堪えきれない!といった感じで吹き出した華に瞠目すると同時に、顔を笑われるとは思っていなかったので、少し落ち込む。
笑われるほど変な顔してたのか俺。
「…」
「いや、あはは!ひひっ、…腹筋いた…っ…なんで、びっくり顔してっ…うっ、あははは」
椅子の背もたれに仰け反りながら、脚をバタつかせ笑い声を上げる華。仰け反り過ぎて、そのまま椅子ごと倒れそうな勢いだ。
こんなに爆笑しているのを見るのは、華と出会って以来初めての事だった。
稀に小さく笑ったりする事はあったが、ここまで大口を空け、そして声を上げて笑うのは珍しく、嬉しさより心配が勝つ。
「おい、おい、危ないって」
背もたれを支えながらオロオロする事しかできない俺。
こいつ酔うと笑い上戸になるのか。
俺が想像していたのは、…頬が少し赤くなって目も蕩けて積極的になる華だったのに…。
あわよくばそのままベッドに〜、なんて考えは呆気なく打ち砕かれた。
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