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俺だけの
両頬を手で挟まれながら、戯れるように軽いキスを繰り返す。
そろそろ物足りなくなる頃だが、これ以上は止めておかなければ。
「んー」
「…こら」
華が珍しく唇をぺろっと舌でつついてきて、思わず受け入れようとしたが耐える。ここで許すと風呂に行くタイミングを逃してしまう。
多分、これから数日間はベッドで過ごすだろう。その前に風呂に行っておかなければ。
「風呂行くか」
「はーい…」
本格的にぽやぽやし始めた華の手を引き、浴室へ向かう。
「脱げるか?脱がそうか?」
脱衣所に着いても棒立ちのままの華に問いかけると、小さく頷く。
いつもなら『自分で脱ぎます』とか、『先に入っててください!』と返って来るだろう。今日そうではないのは、ヒートが始まったから。
「ばんざーい」
「はーい」
すっかり甘えモードになった華は、大人しく両腕を上げる。
さっきまで蘭のせいでモヤモヤしていた。でも華がこんなにリラックスした姿を見せてくれるのは、後にも先にも、きっと俺だけだ。表情筋が緩みまくっている自信がある。
シャツを捲り、腕から抜き取った時に晒された身体は、やはり以前より細かった。
ある程度筋肉もついているが、お世辞にも健康的とは言えない。
言い方は悪いが、こんな身体なら肌が出ている写真は撮っていなさそうだと、安堵のため息が出る。
モデル、辞めてくれないかな…。
俺の華なのにファンが沢山できて、焦りや寂しさ、嫉妬が入り交じってムカムカする。華は俺の腕の中で笑ってくれてるだけでいい。
下着まで全て脱がせたら、先に浴室へ押し込んだ。
「……ッフ…」
まさか下着まで脱がせてくれるとは意外だ。今回のヒートは割と重いかもしれない。思い切り身の回りの世話が焼ける、とワクワクしてきた。
これは華と出会って二年目位に分かった事だが、華のヒートは軽い時と、今回のように、何でもさせてくれるくらい重い時がある。
軽い時は普通に自我を保っており、記憶が曖昧になるなんて事は無い。普段より少し大胆になるくらい。
重い時はもう色々大変だ。主に俺の理性が。
まるで赤ちゃんを世話するみたいに、何から何まで俺にやらせてくれるのだ。特にお気に入りは食事の時。
あーんして、嬉しそうにスプーンを咥える姿は、国宝級に可愛い。
始まってから3日間くらいは、常にふわふわの笑顔で甘えてくる。その破壊力は、たまったもんじゃない。
今回はどこまでやらせてくれるのだろうか、とニヤニヤ。
自分も素早く衣類をドラム式洗濯機に放り込み、浴室へ入った。
「熱くない?」
座らせ、シャワーをゆっくり頭からかける。
「きもちいー」
「よかった」
にへっと笑う華に、自分の口からも笑い声が漏れた。
かわいすぎる。百億万点。
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