217 / 225

俺だけの

両頬を手で挟まれながら、戯れるように軽いキスを繰り返す。 そろそろ物足りなくなる頃だが、これ以上は止めておかなければ。 「んー」 「…こら」 華が珍しく唇をぺろっと舌でつついてきて、思わず受け入れようとしたが耐える。ここで許すと風呂に行くタイミングを逃してしまう。 多分、これから数日間はベッドで過ごすだろう。その前に風呂に行っておかなければ。 「風呂行くか」 「はーい…」 本格的にぽやぽやし始めた華の手を引き、浴室へ向かう。 「脱げるか?脱がそうか?」 脱衣所に着いても棒立ちのままの華に問いかけると、小さく頷く。 いつもなら『自分で脱ぎます』とか、『先に入っててください!』と返って来るだろう。今日そうではないのは、ヒートが始まったから。 「ばんざーい」 「はーい」 すっかり甘えモードになった華は、大人しく両腕を上げる。 さっきまで蘭のせいでモヤモヤしていた。でも華がこんなにリラックスした姿を見せてくれるのは、後にも先にも、きっと俺だけだ。表情筋が緩みまくっている自信がある。 シャツを捲り、腕から抜き取った時に晒された身体は、やはり以前より細かった。 ある程度筋肉もついているが、お世辞にも健康的とは言えない。 言い方は悪いが、こんな身体なら肌が出ている写真は撮っていなさそうだと、安堵のため息が出る。 モデル、辞めてくれないかな…。 俺の華なのにファンが沢山できて、焦りや寂しさ、嫉妬が入り交じってムカムカする。華は俺の腕の中で笑ってくれてるだけでいい。 下着まで全て脱がせたら、先に浴室へ押し込んだ。 「……ッフ…」 まさか下着まで脱がせてくれるとは意外だ。今回のヒートは割と重いかもしれない。思い切り身の回りの世話が焼ける、とワクワクしてきた。 これは華と出会って二年目位に分かった事だが、華のヒートは軽い時と、今回のように、何でもさせてくれるくらい重い時がある。 軽い時は普通に自我を保っており、記憶が曖昧になるなんて事は無い。普段より少し大胆になるくらい。 重い時はもう色々大変だ。主に俺の理性が。 まるで赤ちゃんを世話するみたいに、何から何まで俺にやらせてくれるのだ。特にお気に入りは食事の時。 あーんして、嬉しそうにスプーンを咥える姿は、国宝級に可愛い。 始まってから3日間くらいは、常にふわふわの笑顔で甘えてくる。その破壊力は、たまったもんじゃない。 今回はどこまでやらせてくれるのだろうか、とニヤニヤ。 自分も素早く衣類をドラム式洗濯機に放り込み、浴室へ入った。 「熱くない?」 座らせ、シャワーをゆっくり頭からかける。 「きもちいー」 「よかった」 にへっと笑う華に、自分の口からも笑い声が漏れた。 かわいすぎる。百億万点。

ともだちにシェアしよう!