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4 side 黒川 廉
俺の腕の中で、泣き疲れた華。
くたっと脱力し、体重を預けてくるのが嬉しい。
「こら」
「…ムフ」
時折、首筋を甘噛みしてくるのが愛おしすぎて、今すぐ襲いたくなるがグッと我慢。だが、尋常ではない濃さのフェロモンにいつまで耐えられるか分からない。
「…本当に間に合って安心した」
強く抱き直すと、華も更にピトッとくっついてくる。
うどんを作ろうと思っていたが、食べられなかったらと、軽めのりんごにしたのは正解だったらしい。
あれを全て飲んでいたら、と考えると怖い。
持っていた薬の量と、尋常ではない手の震え。肝が冷えたが、止められてよかった。
「…、あの、茶色くなった、ごめんなさい…」
そう、ふと言った華の気だるげな視線の先。
それを追うと、時間が経ち褐変したりんごがある。
「食べる?」
問うと、腕の中にある華の身体が、大袈裟なほどビクンと跳ねる。
「っン…んん、今はいらない」
それを誤魔化す様にモゾモゾ身動ぎする華。可愛い。
わざとではないが、抱き締めていたせいで、耳元で囁く事になってしまった。
ヒートが始まった今、こうして番と密着しているだけでも辛いはず。俺も辛い。
「辛い?」
「…まだだいじょ、ぶ」
現に、俺の腹には華の主張しているブツが当たっているし、華の臀には俺のモノが下着越しに当たっているだろう。
それとなく下から、軽く腰を揺らしてみる。
「んっ!ぅ、…」
「………」
喘ぎ、軽く背を反らし、華の息は荒くなった。
その背を撫であげるだけで、快感に身体を震わす。
なのに、何も言ってこない。何が『まだ大丈夫』だ。
俺も早く華の中に入りたいけど、その気がないなら話は別だ。嫌な思いをさせたくないし。
まぁ、どこからどう見ても、その気がある様にしか見えないが、もはやこれは謎の我慢比べ。
しばらく、抱き合ったまま時は流れた。
「廉さん、…っ」
もうそろそろこっちが限界…という所で、やけに切羽詰まった華の声が。抱擁を解いて、真正面から見つめ合う。
「早く、早くさわって…っ」
華が俺の手を取り、そのまま自分の頬に添えた。
手のひらから、頬の熱さ、少しの汗ばみ、柔らかさなど、大量に情報が伝わってきて危うく鼻血が出そうになる。
いよいよか…?
「…いい?」
「ん、…4年ぶん、はやくぅ」
いつスイッチが入ったのか。一気にどろりと溶けた瞳には、俺しか映っていない。
ヒートの時しか見られない扇情的な行動と表情に、思わず喉が鳴った。
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