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「触るぞ」
うんうん、と頷く。
廉さん以外に触らせた事のない場所に忍び込んできた細長い指。くちっと音を立てながら縁をなぞり、一本、二本と数を増やしながら中を蹂躙し始めた。
「あ...んッ」
既に柔く愛液で濡れそぼっているはずのそこを、しつこいくらいに弄る手を叩き、息も絶え絶えに言う。
「もっ、いいから...」
「辛かったらすぐ言えよ」
廉さんは、ふぅっと息を吐き、俺に見せ付けるように数回抜いたあと、先端を後孔にひたりと充てる。
右脚を担がれ露わになるそこに、ぐっと押し進められる。
そのままミチミチと隙間なく侵入してくる熱に、目の焦点が合わずに視界がガタガタと揺れた。
「はあ、あ、あっ…きたぁ…!」
「華っ…、」
絶対に力を抜いた方が楽なのに、身体中が強ばって上手くいかない。
廉さんの辛そうな表情を目の前にしても、ドーパミンがえげつないほど出ているのか『廉さんかわいい』『大好き』しか、頭に浮かんでこない。これは緊急事態だ。
「あっ、ぅ〜!」
フェロモンが、重く伸し掛るように身体に纒わり付く。
息ができなくて苦しくて、でも息を吸うと香りが気持ちよくて。
肺の内側が、お腹の内側が、番で満たされる。
馴染むまで頬や額にキスをされ、じきに緩やかな動きで抜き差しが始まった。
「ぁあんっ、ぅっ、ん」
ぐちゅ、ぬちゅ、と前立腺をピンポイントで押し潰され、つま先をきゅっと丸めた。
スローセックスのような決して激しくない抽挿に、目が回りそうになる。
確かに気持ちいい。気持ちいいのに、つらい。
じんわり追い詰められるのは、以前から苦手だった。それなら強く擦られて前後不覚になる方が、まだ精神的に楽なのに。
「どこも辛くない?」
「辛く、ないけど…ゆっくりなのつらぃ、もっとおく、ごりごりしてよ」
廉さんの胸板をぺちぺち叩いて抗議する。
いつもより肌が汗ばんでいる気がして、興奮してくれてるのが分かって嬉しかった。
「はぁっ…フ…」
ふと動きを止めた廉さんが、俺を見下ろしながら荒い呼吸を繰り返す。
「…薬、…」
眉を寄せながらぽつりと呟いたのは、薬という単語。
抑制剤なら寝る前に飲んだし、いまはエッチしてるから、抑制剤なんていらない。
廉さんは何も服用していないはずだし…という思考は、熱い塊が後孔から抜けていく感覚で途切れる。
「やだ!なんで抜くの!」
「おい待て、本当に一旦、…っ」
大きく左右に開いていた両脚を、急いで腰にまわした。
そうするともう廉さんは身動きが取れない。
背丈がほぼ同じとは言え、廉さんの方が力は強い。無理やり引き剥がす事もできるだろう。
でも、廉さんが俺を傷付ける事はしないだろうと、今この瞬間まで、俺は確かに自惚れていた。
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