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第14話
漸く会がお開きになった時、ごんは珍しく酷く酔っていた。
あー、このままではごんも収穫ゼロで終えそうだ。まぁ、無理に押し付けてもか…。
「いやー、ごんごんがこんなに酔うなんて珍しいな!」
「久世が飲ませすぎなんだよ!」
久世があっけらかんとして笑うので、俺が叱咤する。しかし相変わらず久世は飄々と、どこ吹く風でケタケタ笑うだけだ。
駄目だコイツ。いつか痛い目みろ!
「なつ先輩〜、おんぶ〜、足もふらふら〜〜。」
「っ、重っ。」
ごんが後からガバリと俺にのし掛かる。
「あの…ごんちゃん大丈夫ですか?うちここから近いから…その…。」
「……あ。」
そうか。ゆうちゃんは、ごんといい感じだった。ごんを連れて行きたいのかな?
不純ではあるが…まぁ…もうお互い大人だし、丁度よいか…。
「うん。じゃぁ……っ!」
どくん
「おっと。」
ごんを押し出そうとしたところで、何故か体が硬直したように動かなくなり、不安定な所で固まりそのまま転けそうになる。それを佐倉が支えてくれてくれて、何とか踏みとどまる。
何だ?
「…あ、ありがとう。」
心音がどくどくと煩く、手が僅かに震え冷や汗が吹き出した。
なんだ?なんだこれ?
「…なつ先輩、権野送るの手伝います。」
「あぁ、うん。頼む。」
「なつ先輩は、権野と同じ家に住んでいるのですか?」
「うん。俺、悪魔に身元割れちゃっているから。その対策で。」
「……ふーん…。」
佐倉は俺の返答に目線をずらし、何か考えるような仕草を見せた。
どうしたのだろう?
「てか権野、くそ重。なつ先輩、やはりタクシーを呼びましょう。」
「あぁ、そうだな。」
しかし直ぐに視線をにごんにうつしてそう提案した。
「おーい、ごん!大丈夫か?」
「うーん…。」
大通り沿いのコンビニへタクシーを呼び、佐倉がコンビニで買ってきた水をごんに飲ませる。しかし俺の問いかけに、ごんはむにゃむにゃと答えるだけだった。
「なつ先輩にもお茶買ってきました。タクシーも呼んだので、権野なら一度隅に座らせでもして、なつ先輩も少しは休憩して下さい。」
「ありがとう。」
佐倉がお茶を差し出すので、俺はごんを座らせて佐倉に近寄った。
「!」
「家に着いたら、猫を連れて直ぐにベランダへ出て下さい。」
手を引かれ引き寄せられたと思ったら、俺の耳元で佐倉がボソボソと言った。
「…。」
佐倉の顔は真剣そのもので、冗談を言っているようには見えない。
「先輩、権野を乗せるの手伝って下さい。」
「あぁ。」
程なくしてタクシーが到着し、佐倉と2人でごんをタクシーへ押し込む。助席に佐倉が、ごんと俺が並んで後部座席に座った。タクシーは軽やかに走り出すが、俺の頭の中は疑問符のオンパレードだ。
にゃん吉も?何故?
「うぅーん、なつ先輩〜。」
「はいはい。ごん、もうすぐ家に着くぞ。」
ごんは隣に座る俺に甘える様にくっつく。お陰で俺はさっきの佐倉の言葉の意味を考える暇もない。
「お客さん、この先は右?」
「はい。右に入った後、道なりに進んだ先の黒いマンションです。」
まずい。もう家に着く。
結局あまり考える暇もなく、タクシーはマンションに着き俺たちは佐倉と分かれた。
ベランダにって…、ごんの家はマンションの5階だけど…。佐倉も飛べるから?そこで落ち合おうってこと?
「よっと…。ごん、着いたぞー!」
「んー。」
マンションに着いたが、ごんは相変わらずだ。玄関にぺたりとうつ伏背に倒れる。
「…たく…。」
「にゃ〜ん。」
そうこうしていると、玄関までにゃん吉がお出迎えに来た。
「……。」
どくん…どくん…どくん…。
何故か、緊張で手が湿る。俺は努めて自然な動きで、ごんにすりすりしていたにゃん吉を抱き上げた。
どくん…どくん、どくん、
無言でベランダのあるリビングに向かう。別に、ごんを疑っているとかじゃないけど…。
どくん、どくん、どく、ど、ど、ど、ど、ど
これは後ろめたい事じゃない。なのに、心音が煩い。ガチャリと鍵を開け、ベランダに面した窓を開ける。
「……さ…っっ!!」
やはりベランダには佐倉がいた。俺がドアを開けると、ベランダの柵に腰掛けた佐倉が弾かれた様に立ち上がった。俺は佐倉の方へ一歩踏み出し…、たと思った身体が動かない。俺は驚愕に目を見開く。
「にゃっ‼︎」
にゃん吉が硬直した俺の手から離れ、佐倉に向かって走った。
「何しているのかな、なつ先輩。」
「!」
ふわり
さっしに手をかけ固まる俺の手の上に、ひとまわり大きい手が重なる。見上げた俺と目が合うと、ごんが冷たい目をして笑った。
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