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第18話
ごんから逃げるには、なんとか佐倉と連絡が取れれば良いのだが。
そもそもごんの言う「もうひと段階先」はいったいどれくらいで辿り着くんだ?きっとそれは佐倉の言っていた最終段階だ。佐倉はそれを防ぐため、セックスをするなと言っていた。言われなくても、俺もそうしたい。しかし、体を操られている状況で、どう拒否できる?
頭を抱えているところでピコンとスマホがなった。
「久世先輩かぁ。」
お前が見るのかよ。
ごんは手慣れた様子で俺のスマホを見て、はいと俺に渡す。見てみると、俺が長期休むと聞いたからと、心配のメールだった。戸野からも同様のメールが入っていた。
「…久世が飲もうって。」
「え、だめ。」
久世が来るなら戸野もくる。そっから何とか佐倉に…と考えるが、あっさりごんに却下される。
そもそもなんでごんの許可がいるのか。
「…じゃあ、宅飲みしたい。ほら、ね?ごんも一緒に飲もうぜ!」
俺はごんに抱きついた。俺はパンイチ、ごんは上半身裸だ。くっつくのは不快だが背に腹は変えられない。俺の様子に気を良くしたごんが、相好を崩す。
「じゃあ、先輩と俺の仲を皆にちゃんと言うなら良いですよ。」
「え。」
「ちゃんと、お付き合いしているって。」
「…。」
「それで皆の前で熱いキスでもして、ついでにそこでえっちします?なつ先輩が恥ずかしいなら俺が操ってあげるので、なつ先輩はただ居るだけでも良いですよ。」
ごんが口の端を吊り上げ恐ろしい事を言い放つ。
「…やっぱり、俺はごんと2人っきりがいい…です。」
「ふふ、そうですよね。」
こいつ、やはり天使よりも悪魔よりじゃないか?俺はこの先ずっとこのままなのか?
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結局どうしようもないまま夜になる。俺が風呂上り、リビングでどうしたものかと考えていると、ごんがニコニコと近寄ってきた。
「先輩!見て見て!レモネード作りました!」
「え?あ、うん。」
何故急に?
ごんはキラキラとした顔で俺にコップを差し出した。
「飲んでください!」
「ありがとう。…?何?」
ごんが俺をじっと見つめるので、思わず飲む手を止める。
「…先輩、久世先輩と飲めなくて寂しいですか?」
「ああ…まぁ、それはいいけどさ…いつかは俺を開放してくれるんだよな?」
俺の言葉に、パァぁという擬音がつく勢いでごんが笑い頷く。
「うん。勿論です!今は他にやる事があるから…だけど落ち着いたら!俺も、久世先輩は好きだから、一緒に呑みたいですし!あはっ、俺のは手、レモンで酸っぱいです。先輩も舐める?」
今やることってなんだ?
俺は内心首をかしげた。
しかし…ごんは邪悪の極みの癖して、本当にキラキラと笑う。昔の俺はこんなごんに騙されたんだろうな…。
まずい。これ以上関わると、現世の俺も騙されそうだ。早く離れなければ。
「ごん、ありがとう。美味しい。とりあえず、歯を磨いたら俺はもう寝るよ。」
俺はそう捲し立て、洗面所へ向かった。
「そうですね。俺も流石に、今日はいっぱい先輩と仲良くして、天使の精をあげすぎてちょっと疲れた〜。」
しかし当たり前の様にごんがついてくる。俺にすりすりと頭を擦り付け、張り付く。
『仲良く』って、また…。可愛こぶるな。
ごんは俺に正体をバラしてから、遠慮も何もない。万年発情期だ。
「先輩がしたいなら…また今夜も仲良くして良いですけど…。」
ごんが何故か生娘感を醸し出し、初々しく赤い顔で話しかけてくる。
「馬鹿。ほら、ごんも寝る前に歯を磨けよ。」
俺は何か言うごんの言葉を聞き流しながら、寝室へ入り電気を消した。
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