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第一夜「性少年の苦悩」第1話

 昔から可愛い顔してるってよく言われてた。  でも俺は男で、可愛いなんて言われたって嬉しくもない。  だけど女は可愛いものが好き。  だからそれを逆手にとって近づいて女遊びだけはいっぱしにしまくってた。  女は柔らかいし気持ちいいし、いいにおいがする。  可愛い顔に似合わず凄いんだね、なんて言われることがよくある俺の息子と女を食いまくってた俺に――まさかの緊急事態が発生したのは、高校二年へと進級する春休みのことだった。 *** 『ん、っ………ふ、ぁ』  携帯の画面に映し出されているムービーは激しいキスシーン。  響いているのはキスの合間合間に漏れてる喘ぎに似た声。  俺―――向井捺(むかいなつ)はベッドに寝転がって、それを凝視してた。  ありえねぇ……。  そう何度だって思ってんのに、何度も見てしまってるムービー。  キスシーンをしている片方は……俺。  だけど、甘ったるいいかにも感じてますな声出してるのも……俺。  そして俺はキスをしかけている側じゃなくって、ただ貪られるようなキスを受け止めることしかできてなかった。  普段の俺なら考えらない状況。  そしてさらに問題なのは、キスの相手。  俺の顎をつかみ上げて、平然と余裕そうな表情で長いまつげを伏せ、俺にキスをしているのは――やたらと顔の整った、大人の男……だった。  しかも、そいつは俺の通ってる学校の元教師。  まぁ直接習ったことはないけど、とにか美形で、でもってクールで冷血漢って有名な教師だった。 『……ん……っ』  携帯から聞こえてくる"俺の声"に頭をかきむしって枕に突っ伏す。  ありえねぇ、まじでありえねぇ!!!  男とキスなんて、ありえねぇ!!  でも事実としてムービーにそれは残されてる。  なんで残されているかっていうとこのキスは人生ゲームの罰ゲームだったからだ。人生ゲームでゴール4位と6位がディープキスをするっていう最悪な罰ゲーム。  俺は4位になってしまって、6位(ビリ)だったこの男・松原とキスをする羽目になってしまった。  松原は、俺が好きな女の子・実優ちゃんの彼氏だったりする。  松原と実優ちゃんは春休みから同棲を始めてて、俺は友達の和たちとこの日松原のマンションに遊びに行っていた。 『……ふ……ぁ』  枕に顔を伏せてても、俺の甘ったるい声は耳に付きまとう。  罰ゲームなんだし本気でする必要もないのに、あの松原は容赦ない本気のディープキスを俺にしてきた。  俺だってだてに女経験積んでるわけじゃねーし、返り討ちにしてやる、なんて絡まってきた舌にそう思った。  だけど、そんなのすぐに打ち砕かれて……むちゃくちゃ気持ち良くなってた。  相手は、男なのに。  しかも好きな女の子の彼氏だってのに。 「ありえねぇよ……」  なのに……。 「なんでだよ……、くそっ!!」  ようやくムービーは終わったらしく音はもうしない。  でも、そのムービーのせいで……あの時のキスを思い出したせいで、俺の身体は……下半身は馬鹿みたいに反応してしまってた。 「ありえねぇだろ!!」  最悪だ!  なんで、男とキスしたムービー見て発情してんだ、俺!?  変態かよ!!  横向きになって、そろそろと下半身に触れる。  ズボンの上から触れたそこは硬くなってて。  どうしようか、と思ったけど……。  まだ10代で性欲旺盛な俺がいきり勃ってる息子を放置しておくなんてできるはずねぇから……。  そっとズボンの……トランクスの中に手を突っ込んだ。  あんなムービー見てオナるなんてありえなさすぎる。  だからズボン履いたまんま、隠すようにして俺は息子を手で扱いた。  熱く脈動してる息子を亀頭からにじみ出てる先走りを塗りこむようにして摩擦する。 「……ん、……ッ、う」  激しく上下に擦りあげながら、思い出すのはやっぱりあの時のキス。  熱く絡みあった舌とか、俺の咥内を這いまわってた舌の感触だとか。  俺の後頭部を引き寄せてた松原の掌から伝わってきた体温とか、あいつから匂ってたちょっと甘いけどスパイシーな香水だとかで。  そんなどう考えてもありえねぇことに俺の手の動きは一層強まっていってしまう。 「……っふ……ぁ、あ!!」  腰がガクガク揺れる。  手で限界ってくらいに扱きながら腰を揺り動かして―――。 「んっ、く、あぁっ!!」  ほんの数分で俺はあっけなく絶頂に達した。 「……っは………あ」  掌に吐き出した白濁液の熱さを感じながら、気持ちよさにホッとして……。 「うあ!! やべ!!!」  慌てて起き上がった。  夢中になってて忘れてたけどズボンも下着も履いたまま。  ティッシュも用意してなかったから手に受け止めはしたけど、受け止められなかった粘着質なそれはべっとりとトランクスについてしまってた。 「……サイアク」  男とのキスシーンに勃起して、あげくにオナって。  でもって―――……ひっそりとトランクスを洗う俺は間違いなくバカだった。 ***

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