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第24話

 ……な、なんて反応すればいいんだ!?  俺を見つめて煙草を吸っている優斗さんから目が離せない。  どういう意味なんだろう。  パニックな頭の中で考える。  これも実優ちゃん絡みでなのか? 実優ちゃんを取られて、エッチの内容が気になるとか?  まぁでも確かに松原は……上手そうだけど。  ドSだし変態っぽそうだけど……エッチは――……。  思考に引きずられるようにして思い出したのはあの夜のこと。  最後まではシなかったけど、でもあの日はじめての快感を味わった。 「松原さんと、シたのかな?」  意識が目の前の優斗さんから松原へと完全に移っちまって、あの日からずっと溜まっていた欲求に下半身がうずくのを感じていると、優斗さんの言葉が俺を現実に引き戻した。 「え――」 「実優が捺くんは小悪魔タイプって言ってたけど……、結構素直なタイプだよね? さっきから顔に出てるよ。いまなに思い出してたのかな」  優斗さんは微笑みながら灰皿に吸いかけの煙草を置いて、俺をどん底に突き落とす。 「すごくエロい顔してる」  からかうような口調だけど、俺にとっては笑えない冗談。  めちゃくちゃ顔が熱くなってまた顔を俯かせようとしたら、それを遮るように優斗さんの手が伸びて俺の頬に触れた。  びくり、とバカみたいに大げさに反応する俺の身体。 「捺くんは実優が好きだったんだし、もともとは女の子が好きだったんだよね? でも松原さんとシたんだ?」 「……っ」  どくんどくん心臓が激しく動いてる。  否定しなきゃなんねーのに、全然口が動かない。  でも、一つだけ……誤解されたままじゃ駄目だって思って、必死の思いで声を絞り出した。 「違うんです……俺が……その……媚薬を飲ませて、……無理やりその気にさせたんです。だから……松原は悪くない……」 「媚薬を? なるほどね、松原さんが実優以外に手を出すなんてなさそうだなって思ったけど、捺くんそんなことしたんだね?」  優斗さんの声は変わらず優しくって俺を咎めるような感じではない。  けど――、だから逆にわからない。  優斗さんの手が俺の頬から髪を撫でるように動いてる、その意味が。  肌に触れる指の感触に俺はぞくぞくしてしまってる。  こんなんで感じるなんてありえねぇ。  だけどずっと欲求不満だっから、敏感になりすぎてるのかもしれない。 「ねぇ、捺くん」 「……はい」 「松原さんとシたとき、ちゃんとイケた?」 「……え、と」 「そっか、ちゃんとイケたんだね?」 「……」 「でも松原さんとはその一回だけなんだよね?」 「……」  一回、だけ。  もう二度と松原と俺がキスもそれ以上もすることはないってはっきりわかってる。  優斗さんと視線を合わせることができなくって、優斗さんの腕のあたりを意味なく見ていた。  その腕が動いて、そのたびに俺の頬や髪を指が撫でていく。  部屋の中に充満してる空気が――経験から普通じゃないってことにはとっくに気づいてる。  やばいくらいに色のついた空気。  なんで、こんなことになってるんだ?  そう何度も頭の隅で繰り返してる。 「射精とは違うオーガズムに達したら……なかなか抜け出せないっていうけど、捺くんはどう?」  一瞬意味がわからなくて、理解したとたんまた下半身がうずいた。  後孔で味わったあの――。 「捺くん」  シュル、と小さな音がして見ると優斗さんが片手でネクタイを取ったところだった。 「捺くんは……満足できそう?」 「……なにが……ですか」 「またあの快感味わいたくない?」  優斗さんの手が頬から俺の口元に移動してきて、唇をなぞる。  暖かい指先がそっと触れる感触に、やっぱりゾクゾクしてしまう。  でも、でも――なんで。 「実は俺もちょっと溜まってて……ね。だから……よかったら捺くん」  優斗さんがキスできそうなくらいまで顔を近づけてきて、囁いた。 「俺と――シない?」  なんで、こんな雰囲気になってんだ……よ!  なんで、このひとが俺なんかにこんなこと言ってくるんだよ!  パニックになるけど、だけど俺はどうしようもなくゾクゾクしてて、なにも考えられなくって、なにも言えねぇで。  息苦しさに思わずギュッと目を閉じたら―――次の瞬間、暖かいものが唇に落ちてきた。

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