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第23話
「いや、あの、その! ちょっと、話をしに! ただ、話しをしただけですから! 俺まだそのときはちゃんと松原のことを好きって自覚しているようなしていないような感じで。だから松原と話しをしてみたら、なんかわかるかな……って思って。話しをしに!」
まぁ……媚薬持ってだけど。
「そ、それで、その……」
その、なんだ?
どう続けりゃいーんだよ!?
「それで捺くんは松原さんへの気持ちを確信して、そして松原さんは捺くんにNGを出したわけだ」
止まってしまった俺の言葉を優斗さんが引き継いでくれた。
簡単に言えばそれだけのことだ。
素直に頷いて、俯いた。
凹む気持ちと、それでもあの夜を思い出して疼く気持ち。
純粋に俺は松原のことを好きなのか。
それとも今だに引きずっているのはあの夜の……。
「それでもまだ好きなんだね?」
「……わかりません」
本当に、よくわかんねー。
どうすればいいのかも、わかんねぇ。
「捺くんはキスで松原さんが好きになったんだよね」
うだうだしてる俺にずっと優しい優斗さん。
そっと顔を上げると、もうスマホを手には持ってなくって、ただ俺のことを見ていた。
「……たぶん」
「告白したときは、松原さんとどんなことを話したのかな」
「……雑談です」
嘘ではない。
実際媚薬盛るまではずっと他愛のないこと喋ってただけだし。
うん、嘘じゃない。
……ちょっと後ろめたいけど。
「あのね……立ち入ったことかもしれないけど……そのとき何かあった?」
「……は?」
「ああ、ごめん。なんとなく、ね」
そう笑って言いながら急に優斗さんは立ちあがった。
どこに行くんだろうって思ってると歩きだした優斗さんはすぐに足を止めて、ソファに座った。
――俺の、隣に。
なんで?
ぽかんとする俺に優斗さんは俺をどん底に突き落とすようなことを――言い放った。
「なんとなく……なんかあったんだろうなぁと思って。だって捺くん」
目を細める優斗さんの微笑みは思わず見惚れるくらいにキレイで、そして……妖しくて。
優斗さんは俺の耳元に顔を寄せると、内緒話でもするように囁いた。
「さっきから、下……反応してるよね? 松原さんのことを話しだしてからずっと」
びくん、と身体が思わず震えて、とっさに距離をとるように優斗さんから離れる。
そして無意識に隠すように足をきつく閉じた。
そんな俺の行動を気にする様子もなく優斗さんはソファの背もたれにもたれかかると煙草を取り出して一本咥えた。
やっぱり、松原とは違う。
火をつける仕草や雰囲気が真逆って気がする。
だけど――。
紫煙をそっと吐き出しながら俺へとゆっくり視線を向ける優斗さんは変にっていうか異様な……色気が漂ってて。
視線があって、とたんに俺は逸らすこともできずに固まった。
「変な意味じゃないんだけど……俺ね……」
長い指に煙草を挟んで、優斗さんは首を傾げて俺を見つめた。
「興味あるんだよね、松原さんのセックスって。あの人、上手そうだよね。俺も自信ないわけじゃないけど……どう違うのかなって……。ね?」
固まってた俺は――さらに固まって、頭の中が真っ白になった。
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