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第38話
「お前、興奮してるのか? 電車だぞ」
ようやく聞き取れるくらいの小声で喋ってる。
でも俺にはばっちり聞こえてるんですけど!
つーか、興奮って!?
「だ……だって、総介さんが触るから」
抗議するように真っ赤になった顔でインテリ眼鏡を達也が睨んでるけど。
……俺から見てもわかる。
そりゃ逆効果だろ。
案の定インテリ眼鏡はエロそうな笑いを浮かべてる。
いやいや、それよりどこ触ってんだよ!
「しょうがないだろ? お前が触ってほしそうにしてるんだから」
「そんな!」
「それに俺も触りたいからな」
「……っ」
……あ、甘い。らぶらぶカップル……甘すぎる。
男同士でもこんなに甘いんだな。
なんて変に感心してる場合じゃ……なかった。
「……あっ」
……あの。
「はっ……、あっ、だめ……」
俺は少しふたりに背を向けてる感じ。
俺の右側に達也がちょっとくっついてる感じなんだけど……。
びくん、びくんって身体が震えてる。
「だめ? こんなに硬くしてるじゃないか」
「……っあ、だって」
だ、だから……お前ら何やってるんだよ!!
明らかにインテリ眼鏡が達也のアレを触ってるらしい雰囲気。
ありえねーだろ!
電車だぞ!
ほかの乗客気づいてなくっても俺めちゃくちゃ気づいてますけど!?
「かわいい、達也」
「っん、やだ、総介さんっ、あっ」
ヤダはこっちだっつーの!
くっそ!
達也の押さえてはいるけど甘ったるい声と伝わってくる身体の震えに――俺まで妙な気分になってくる。
しかも相手の男は……インテリ眼鏡は優斗さんと同じ匂いだし。
昨日と今朝とさんざんヤりまくったから……だから、香水の匂いと、達也の喘ぎに、どうしようもなく思い出してしまう。
下半身が疼いて熱を帯びるのを感じて、慌ててふたりから顔を背けた。
「あ……っあ!」
「達也、声を押さえろ」
「……っん」
ああ、まじで最悪! どこか移動したい!
ふたりのエロい空気にあてられて、俺は唇を噛みしめながらできるだけさりげなく少しづつふたりに背を向けていった。
そしてカーブに差し掛かった電車が大きく揺れて、それを利用してふたりに背を向けるのに成功した。
んだけど――。
「っ、す、すみません!」
となりにいた男にぶつかってしまった。
その男もインテリ系の眼鏡男。でも年齢は達也と同じくらいで若かった。
軽く頭を下げて、いちゃいちゃカップルから意識を逸らそうとした俺の耳に、いきなり囁きが落ちてきた。
「羨ましい?」
「――……は?」
顔を上げる。
インテリ眼鏡の若い男はぞっとするような冷たい目で笑ってた。
「君の後ろのカップル、愉しんでるみたいだね? 君も、シたくなった?」
くすくす笑う男の言う言葉に、頭ん中が真っ白になった。
な……なんだ?
こいつ、なに言って――。
「……ッ!」
身体が硬直する。
俺の股間に触れてきた……その男の手。
「こんなに硬くして。君、変態だね? かわいいなぁ」
視姦するようにそいつは俺をじっと見つめてきた。
気持ちわりー!!
何だコイツ!!
ち、痴漢!?
慌てて逃げようとしたけどそいつの手が腰に回ってきて、やたらと強い力で身動きとれなくされる。
それと同時にそいつのもう片方の俺の息子に触る手がズボンのベルトにかかった。
「ふざけ……!」
「俺に触られて勃起させているの周りに知られたらどう思うかな? きっと痴漢だなんて言われても信じてもらえないよ? きっと俺と君だってそのカップルと同じようにいちゃついてるゲイのカップルだと思われるだけだしね?」
薄気味悪い笑みを浮かべたそいつの言葉に思考と動きが止まってしまう。
その隙にそいつは慣れた手つきでベルトを緩めて俺のズボンの中に手を突っ込んできた。
素肌を這うそいつの手は冷たくて鳥肌がたって、悪寒が走る。
腰をひいて、そいつの手を押しとめるように掴む。
だけど一瞬早く、その手はパンツの中まで侵入してきて。
「……っ」
指先で息子を触れられる。
「やめ、ろ!」
小声で男を睨んで、振り切ろうとした。
「……く」
ぎゅ、と息子を握られて次の瞬間には素早く上下に扱かれて――刺激に頭が真っ白になってしまう。
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