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第91話
「――もしもし」
ドキドキもしないくらいに心臓が重く緊張してる。
コール音が途切れて、向こうから声が聞こえて、俺は声を絞り出した。
「あの……話したいことがあるんだけど」
まじで胸が痛い。
だけどはっきりさせておかなきゃなんねぇ。
あの人に"好き"だって言う前に――あの人との関係をはっきりさせておかなきゃならない。
「うん。じゃあ……6時に」
そして電話を、切った。
***
12月だから陽が沈むのは早い。
夏だったら明るい時間でも冬はもう夜だし。
空気も全然違う。
ゆっくりとため息をつくように細く吐きだした息は白かった。
壁にもたれてぼんやり暗い空を見ていたら、よく知った車が俺の前に停まった。
ウィンドウが開いて、いつもと変わらない笑顔が向けられる。
「待った? 捺くん」
「――大丈夫」
俺も小さく笑顔を返して。
――優斗さんの車に乗り込んだ。
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