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第5夜 第45話

「ちょっと正直そう言われて寂しさも感じたけど、そっかぁって思って。だから……ね。すっごーく嬉しかったんだ、あのとき」  声が最後弾んでいて、ちらり視線を上げたら実優ちゃんは満面の笑顔を浮かべてた。 「……あのとき?」 「ゆーにーちゃんが捺くんと付き合ってるって報告してくれたとき」 「……」 「いつ出会ってたのってびっくりしたし、男同士っていうのにもびっくりはしたけど、でもね、本当に嬉しかったし、すごいってはしゃいじゃったの!」  どんどん実優ちゃんのテンションが上がっていって俺はぽかんとすることしかできなかった。 「だって、すごいと思わない!?」  前のめりになって俺の顔を覗き込む実優ちゃんに「なにが?」ってぽかんとしたまま返す。 「だって! 私に"赤い糸"の話をしてくれた捺くんとゆーにーちゃんの"赤い糸"が繋がってたんだよ?」 「……」 「私の背中を押してくれた捺くんがゆーにーちゃんと出会って恋をしてってすっごく運命的っていうか、すっごくすっごく"奇跡"みたいじゃない? 私その話聞いたときテンション上がりまくって先生に"うるさい"って言われたくらいなんだ」  くすくす笑う実優ちゃんに、なんか胸のあたりがむずむずしてくる。  むちゃくちゃ恥ずかしい――けど、なんか……。 「ゆーにーちゃんもすっごく嬉しそうで、幸せそうで私ほんとほっとしたんだ。ゆーにーちゃんが特別に想う人が、ゆーにーちゃんのことを特別大切に想ってくれて嬉しくてしょうがなかったよ」  だって捺くんもすっごく幸せそうなんだもん。  そう言われて、胸のむずむずがどんどん増してって、視線を逸らしてしまった。  ……照れ隠し、だけど。 「ゆーにーちゃんのことを好きになってくれたのが捺くんでよかった、って本当に思うよ」  その笑顔は優しすぎて、その言葉は気恥ずかしくて、素直に"ありがとう"と言えないダメな俺。 「……でも……俺……ぶっちゃけ……実優ちゃんに嫉妬したり、した。ごめん……」 「あ、やっぱり?」  ふふっと実優ちゃんは全然気にしてない様子で笑う。 「いいよ、別に。私も捺くんにヤキモチ妬いたし」 「……へ?」  ――実優ちゃんが俺に? なんで?  口半開きにして驚く俺に実優ちゃんがわざとらしく大きなため息をついた。 「だってね、ゆーにーちゃんっていーっつも捺くんのことばっかりなんだもん。先週だって、ほら平日に捺くんがお見舞いに来た日があったでしょう? 夕方帰ったとき」 「……ああ」 「あのときねゆーにーちゃん、6時前に帰ってきたんだ。それでちょうど帰って来たとき私キッチンに飲み物取りに行ってたんだけどね。ゆーにーちゃんってば私のこと見てまずなんて言ったと思う?」 「……なに?」  なんだろ。  普通に体調の心配とかだと思うけど。 「"捺くんは?"だって」 「……」 「もう帰ったよって言ったら、なんで引き止めてくれなかったんだ、なんて言うんだよ」 「……」 「待ってて欲しいんだったら、直接そう言えばいいのに! 捺くんにはカッコ悪いところ見せたくないのか大人ぶりたいのか知らないけど! それにひどくない? 私高熱出してるのに、捺くん何時頃帰ったのとか散々訊いて、そのあとようやく思い出したように大丈夫とか訊いてきたんだよ?」 「……」  な、なんて言えばいいんだろう。  そうなんだって……いうか。  ――……やばい、どうしよう。  予想もしてなかった裏話。 「……あ、ニヤニヤしてる」 「……えっ、あ、いやこれは」 「ほんとゆーにーちゃんと捺くんってらぶらぶだよねー。ゆーにーちゃんは捺くん溺愛しちゃってるし」 「で、溺愛って」 「だっていっつもゆーにーちゃんの話って捺くんのことばっかりだよ」 「……」 「電話で話しててもすーぐ捺くんのことに流れるんだよね。ほら捺くんってモテるでしょ? この前も告白されてたみたいだけど、前も何度かあるでしょ? 一度ね、軽く今日告白されてたよー、なんて言ったことがあって」 「え」 「そしたらもう心配しまくりなの! "捺くん可愛いからモテてもしょうがないんだけど"なんて言ってたけど」 「……」 「もうどんだけノロケって感じだよね? 先生もたまに呆れてるもん」 「……」  や、やばい。  ニヤニヤ通り越して恥ずかしすぎる。  いや、嬉しい。  嬉しいけど、妙に恥ずかしい。  けど……嬉しい。  勝手に緩みそうになる頬をさりげなく抓ってたら、バチッと実優ちゃんと目があった。  まだなんか出てくるのかなって焦る。  だけど実優ちゃんは笑顔を優しくして――。 「ゆーにーちゃん、捺くんと付き合えて本当に幸せそうだよ。捺くんも幸せそう。だからね、私すっごく嬉しい。ゆーにーちゃんには世界で一番幸せになってほしいから」  嘘偽りない、本心からの言葉。  ――優斗さんは俺といて幸せ? 「ゆーにーちゃんは、なにもしてほしいとか思ってないよ。強いていえばずっと捺くんにそばにいてほしいってことくらいじゃないかな」 「……いるよ……?」  無意識に出た言葉。  それに「うん」って実優ちゃんが微笑む。 「過去のことを話したのはゆーにーちゃんなりに考えがあることだろうし、それにそれは捺くんにとっては重いものかもしれないけど。でも、私は全部ひっくるめて二人は大丈夫だって信じてるよ。だって大好きでしょ?」 「……好きだよ」  なにがあったって――俺が優斗さんを好きだってことは変わらない。  きっとずっと、一緒にいるってことも。

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