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第6夜第4話
「……っぁ……やば…い」
根元まで挿入したソレが馴染むようにゆっくりと腰を揺らすと、捺くんが眉根を寄せて掠れた吐息を漏らす。
気持ちいい、と素直に淫らに俺に囁いて自ら腰を上下に動かしだす。
昔から快楽をそのまま受け入れる捺くんの身体はどんどん妖艶になっていっている気がする。
同じ男だというのに欲情しか感じない。
ほんのりと赤く染まった肌に吸い寄せられるように唇を寄せた。
「ゆ、うとさん……っ、泡、ついてる……から……っ」
もうジャグジーは止めているから泡は少しさっきよりも減ってはいるけれど捺くんの身体は泡まみれだ。
「いいよ、別に」
「よくない…って……ンッ」
バスバブルを投入するときに一応容器を見て植物性のだということは確認済だから多少口に入っても大丈夫だろう。
そう言えば、腰を動かし続けながらも捺くんは「ダメ」だと熱い息を吐きながら首を振る。
「でも、ここも勃ってるよ?」
赤く勃ちあがった胸の蕾を口に含んで吸いついた。
とたんに俺を咥えこんでいる後孔がきつく収縮する。
「……は……ッ……、ん」
捺くんはもう何も言わないで俺の髪に指を絡めて俺の腰の動きに合わせて腰を揺らし始める。
胸の愛撫を続けながら律動を速めていく。
だんだんとお湯の揺れが激しくなっていくが、止められない。
ギリギリまで引き抜くとそこから少しお湯が入り込んで巻き込むようにしてナカを突き上げる。
バスルームだから声が反響し、耳元で響く喘ぎと相まっていつも以上に煽られる。
「……ンっ……ぁ、きも……ち、いい……っ」
捺くんが甘く喘ぐたび、もっとその声を聞きたくなって激しく攻め立てた。
水面が大きく揺れて波打つ音も大きく響く。
身体もナカも小刻みに痙攣していて捺くんの絶頂がそう遠くないことを感じた。
「捺くん、ちょっと立って」
動きを止めて、捺くんの腰を持ち上げる。
抜ける感触に互いに小さく呻いた。
捺くんは言われるままに立ちあがり俺の意図を察しているようで、すぐにバスタブの縁に手を置くと俺に背を向ける。
その背中を抱きしめながら一気にまた腰を押し付けた。
お湯の中でも気持ちいいけれど、外での方がやっぱりダイレクトにお互いを感じられる。
捺くんの半身を握って扱きながら肌と肌のぶつかる音がするくらい腰を打ちつける。
泡ともお湯とも違うものが捺くんの半身から溢れて俺の手を濡らす。
泡や先走りを混ざり合わせるように塗り込みながら速めに手を上下すると、熱く脈動する半身。
それに連動するように後孔もひくつき一層強く俺に絡みついて締め付けてくる。
背中にキスを落としながら昇りつめるために律動を速める。
頭の中が沸騰しそうなほどの快感。
脳内に蔓延する捺くんの甘すぎる声と、結合部から伝わってくる痺れるような刺激。
吐射感が強まり、捺くんのものの先端を指先で強く押し擦る。
「うぁ……ッ、……ァあ、も……っん」
俺の手の中でさらに膨張する捺くんの半身。
前立腺を擦りあげながら根元まで挿るようにぐっと腰を押し付けると背中をしならせ捺くんは全身を震わせた。
熱い飛沫が手の中に吐き出される。
すべてを出しつくすように扱きつづけてあげながら俺も限界を感じ、腰を打ちつけた。
「……ッ、く」
何とも言えない解放感。
イったせいで締まりすぎる後孔の深い部分へと白濁を注ぎ込んだ。
そのあとお風呂に入りなおして上がった。
長湯をしたせいかベッドに倒れ込んだ捺くんはイオン飲料を一気に飲み干していた。
「大丈夫?」
濡れたままの髪を撫でる。
枕に横向きに顔を沈めていた捺くんはちらり俺を見て頷く。
「平気。あー、気持ちいい」
そう言って俺が彼の頬にあてた手に頬をこすりつけてくる。
ビールを持っていたせいで手が冷えていたんだろう。
サイドテーブルに置いた缶を手を伸ばしてとり、額にあててみるとくすぐったそうに目を細めて身じろぐ。
まるで猫のようだなと頬を撫でながら思う。
笑顔も甘えてくるのも全部自然で屈託がないのに、いつも翻弄されて、心の中をかき乱される。
それはもちろんいい意味でだ。
彼といて飽きることなどなくて、俺はずっとたぶんハマり続けている。
「俺もビール飲みたい。飲ませて」
上半身を起こすのも億劫そうな捺くんは額にあるビール缶に触れてそして俺を指さした。
交互に指をさし向けてそして自分の口元を指さす。
言わんとするところを察して、ビールを口に含むと捺くんの唇を塞いだ。
「……ん」
半開きになった唇からビールを移す。
あまり含んではいなかったけれど少し口端からこぼれてしまい、舌で舐め取った。
「……ぬるい」
「それはしかたないよ。自分で飲む?」
「めんどくさい。もーいっかい」
面倒臭いって、と苦笑しながらも請われるままに何度がビールを口移しで飲ませてあげた。
何度も渡していくうちに舌が遊ぶように絡まってきてビールのせいではない酔いがまわってくる。
俺をまた煽って翻弄してくる捺くんにもう空になってしまったビールの缶を振って見せた。
「はい、終わり」
「もう一回」
確信犯的な笑みを向けられ、俺があらがえる筈もなく今度はちゃんとしたキスを落とす。
静かな室内に舌と唾液が交わる水音が響く。
ほんの少し前に繋がったばかりなのにまた熱く疼きだす身体。
「……またシたくなるんだけど」
捺くんの顔を挟むように肘をつき、顔を覗き込めば何度か目をしばたたかせる。
「うん? まー、いいんじゃねーの。明日休みだしさ。今日お泊りだし」
俺は何回シてもシたりない。
と、言って俺の身体に触れてくる。
「若いね……」
「優斗さんだってまだまだ若いじゃん。だってここももう元気だよ?」
「……そうだけど」
「じゃあ、もう寝る?」
「まさか」
即答の俺に捺くんが声を立てて笑う。
俺の余裕なんて簡単に奪ってしまう捺くんの余裕を奪ってしまおうと激しいキスをし、その身体に手を這わせた。
本当に、何度シてもシたりない。
毎日のように一緒にいるのに、いない日は寂しさを感じずにはいられない。
「――捺くん」
再び捺くんのナカに半身を沈め、俺の下で汗ばみ喘ぎをこぼしている捺くんの手を握りしめる。
なに、と虚ろな目を向ける彼に、なんでもない、と笑う。
たまにふと――、一緒に暮さないか、と言いそうになってしまう。
だけどそうするには捺くんにとっての"負担"が大きくなる。
いまの半同棲でさえ彼にとっていいことなのかもわからないというのに。
「……優斗さん?」
不思議そうに俺を見つめるその目にキスを落とし、安心させるように微笑みながら律動を再開する。
ベッドが軋む音を聞きながら熱に溺れていく。
ただひたすらに睦みあうだけでも、俺にとっては幸せだった。
***
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