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第3話(マイク)
まるで、恋する乙女だ。
男性に一目惚れ?
そんなの、ありえない!
これで何度目だろうか?自問自答する。
昨日の客が忘れられないのだ。
名前はスティーブ。
輝くブロンド、美しい肉体、甘いマスク。
誰もが振り返るようなイイ男。
まあ、残念な事に知っているのは彼の名前だけ。
連絡先もSnapchatもFacebookもTwitterのアカウントも知らない。
もしかしたら、永遠に逢えないかもしれない彼の事が昨日から頭から離れないのだ。
馬鹿馬鹿しいと思いながらも、延々と彼の姿を脳内再生する。
彼の声、ほのかに香った香水。
あの逞しい腕に抱きしめられたらどんな気持ちだろうか?
あの逞しい胸板に顔を埋めたら、、、
自分は、完全なる異性愛者だと思っていた。
今まではどんなに逞しく筋骨隆々な男性を見ても、抱きしめられたいなど思った事は一度も無いのだ。
むしろ、柔らかそうな女性の身体を抱きしめたいと思っていた。
正直、自分のアイディンティティが崩壊して行くような気分だ。
自分が性的な意味で彼を意識してしまっている。
「また会えたらいいな」
そう呟いた時、入り口のドアが開いた。
「いらっしゃい」
マイクは驚き口を開けて彼を凝視した。
「やあ!今日こそは花束を買いに来たんだ」
そこには、昨日から何時も脳内再生したスティーブが居た。
彼はそれから、休暇の度に花を買う常連になった。
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