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第5話(マイク)
もう、5〜6回は彼に花束を作っている。
「今日の花束はどんな感じに?」
緊張しているのを悟られないよう平静を装って尋ねる。
スティーブは数ヶ月に一度、一仕事終わると来てくれる今や常連だ。
何度会っても、魅力的な彼の前では、こっそり緊張している。
黒い細身のパンツにグレーのシャツというシンプルな服装も、素材が良ければこうも魅力的になるのだろうか。
「君の好きな花で作ってくれるかな?」
「予算や大きさは?」
「君に任せるよ」
そう言われて、店内を見回す。
俺が切り花で好きな花は、、、定番だけどバラかな。
彼が持った時に映える色は?
白いバラを中心にグリーン多目で大人っぽく仕上げた花束はどうだろうか?
白いバラの花言葉は「純粋」「私はあなたにふさわしい」「相思相愛」。
自分の欲望が花束に出てしまった気がするが、仕上がった花束はなかなか上出来だった。
「お待たせしました!こちらでいかがですか?」
「すごく綺麗だ。ありがとう!」
支払いを済ませると彼は笑顔で花束を突き返して来た。
「?」
「これは君への贈り物」
「え?」
「今晩、一緒に食事へ行かないかい?」
花束を渡して食事に誘うなんて、、、
まるでデートの誘いみたいじゃないか!
まさか?まさか!そんな!
神さま、ありえない誘いだ!!
「o ok!」
不覚にも噛んでしまった。
「ありがとう」
スティーブは嬉しそうに笑う。
「店は何時まで?」
「19時閉店」
「じゃあ、19時にここへ迎えに来るよ」
「ok」
「じゃあ、また後で」
俺はスティーブから贈られた花束を持って彼を見送った。
え?
え?
えー!
まさか、食事へ誘われるなんて想定外だ!!!
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