15 / 69

第15話(マイク)

マイクは福祉施設のエントランスで子供達へミニブーケを配っていた。 子供達の笑顔に毎回癒される。 いつも通りの光景だった。 いつも通り花束を渡すだけ。 それだけのはずが 突然、物凄い爆破音がした。 金属音と悲鳴が聞こえる。 交通事故?ガス管の爆破か?? そう思いエントランスのドアを開けて音のした入り口の門を見る。 「な、、、なんだ?」 入り口の鉄格子の門はきれいに吹き飛び、警備員が倒れていた。 ゆっくり砂埃から現れた大男は銃をこちらへ向けて数発、発砲した。 マイクは慌てて子供達を建物の奥へ避難させる為に叫んだ。 「みんな逃げろ!!」 エントランスの半開きのドアからは男がゆっくり近づいて来るのが見えた。 目が一際ギロりと強いラテン系の顔立ちに、ウェーブした長い白髪混じりの黒髪は一つに束ねられている。 顔の右側には大きな切り傷が額から頬まで三本もある。 ガッチリした体躯に、胸元には金属のプロテクトガード。肩から二本の金属のアームが伸び、銃を構えている。 両腕にも銃のような物が固定されているため、四丁の銃を向けられていた。 マイクは、一瞬にして非日常的な空間へ足を引っ張られたような感覚だった。 これは、、、目の前で起きている事は現実だろうか? テロリスト? そもそも、目の前に居る男は本物なのか? 子供達を出来るだけ建物の奥へ誘導する。 「急いで奥へ!」 騒ぎを聞きつけた、施設のカウンセラーが飛び出してきた。 よく見かける馴染みのカウンセラーは、銃を構えて応戦し始めた。40代ぐらいの小太りで愛想の良いカウンセラーだ。 そこへ更に二階から銃を手にした黒人男性医師も駆けつける。 正直、なぜカウンセラーや医師が銃で応戦出来るのか分からない。 非現実的な光景だ。 だが、考えている暇は無かった。 「君!早く子供達を奥の食堂へ」 マイクはカウンセラーに言われるまま、子供達を引き連れ食堂へ向かう。 子供達を全員中へ避難させ振り返ると、モニカだけがまだエントランスに立ち尽くしていた。 マイクは、慌てて踵を返すとモニカに向かって走り出した。 ドォーン ダダダダダダ まるで戦争だ。銃撃戦の嵐にモニカは立ち尽くして向かって来る男を見つめていた。 応戦していたカウンセラーは被弾し、血を流している。 嘘だろ。 もう既に血の生臭い臭いが立ち込めている。 すでにエントランスは銃撃で粉々だ。 嘘だろ?! 応戦していた医師にも爆弾のような威力の球が命中し破裂した。 医師は吹き飛び壁に血を流しながら叩きつけられる。 ゆっくりと男が近く。 「モニカーー!!!」 マイクはモニカを庇うように抱きしめた。 死ぬかもしれない。 ダダダダダダ 乱射する銃の音に、死を悟った。 最後に頭に浮かんだのは親でも友人でもなくスティーブだった。 彼ともっと、、、 そう思った瞬間だった。 身体をグッと抱きしめる逞しい腕が伸びた。 「大丈夫か?」 黒い戦闘用の強化スーツに、黒いゴーグルをした金髪の男がいた。 彼は腕から盾のようなシールドを出し、マイクとモニカを銃弾から守っていたのだ。 フワッと香る香水。 まさか、、、 「スティーブ?」 名前を呼ぶと彼はゴーグルの左側に触れて、レンズを透明にした。 間違いない。スティーブだ。 「マイク。昨日は本当にすまない」 申し訳なさそうに目尻を下げる。いつもの彼だ。 「事情があるんだとは思ってた、、、」 まさかこんな事情があるなんて思ってなかったけれど。 「後で説明させてくれ!君はモニカを連れて突き当たり奥の食堂へ避難を。裏口から救出チームが来る」 「スティーブは?」 「僕はこいつを倒す」 そう言うと、スティーブは近くにいた美しい女性へ叫んだ。 「ダイヤモンド、2人を奥の食堂へ」 「ok」 ダイヤモンドと言われた女性は、俺とモニカの背後に付いて援護してくれた。 そして何故か肌が本当にダイヤモンドのように輝いていて銃弾を弾き飛ばしていた。 「私の背後に居れば銃弾は当たらないから安心して」 悪戯っぽく笑う。 食堂へ入る時に振り返って、スティーブを目で探した。 身体を捻り空中を回転し、敵の右前方で銃弾を躱しながら大男を飛び越え背後から銃を空中で射つ。 ゆうに3メートルは跳躍している。 華麗に着地すると後ろから肩に飛び乗る。  首元を抑え身動きを封じる。 「アイスマン!今だ!」 青白い肌の男が両手を翳すと氷りの柱が現れた。まるで檻のように四方八方に氷の柱が現れる。 身動きの取れない男は柱の隙間から銃を乱射し始めた。 「レッド•ファイヤー!銃を溶かせ」 赤い髪をした男の体が突然発火した。 「任せろ!」 赤い髪をした燃える男は、スティーブが絞め上げるアームに向けて手を翳して炎の火柱出す。 マイクが見られたのはそこまでだった。食堂の扉は閉じられマイクは子供達と一緒に隅へ移動した。

ともだちにシェアしよう!