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第19話(マイク)
救助用ヘリの座席では、子供達が皆、青ざめた顔をしていた。
泣いている子供もいる。
ヘリは10分程飛行すると小さな公園の上で旋回した。
地上では古い小屋がゆっくりと左右に開き、下からヘリポートが競り上がる。
ヘリがゆっくり着陸するとヘリポートごとエレベーターのように地下へ降下した。
コンクリートと金属で出来た地下トンネルを降りて大きな鋼鉄のドアが開く。
地下の広大な戦闘機やヘリの駐機場が現れた。
子供達は驚いたように辺りを見回した。
そこへ黒いスーツ姿の男達が3名と、白衣を着た黒人女性が現れた。
「皆さんこんにちは。私はドクター·クラーク。宜しくね。皆さんの怪我の治療をするから医務室へ行きましょう」
強面な兵士やエージェントばかりで萎縮していた子供達もドクター·クラークの笑顔に安心したようだ。
マイクも一緒に行こうとすると、黒いスーツ姿の男に引き留められた。
「マイケル•バーンズさんですね。あなたは別室でお伺いしたい事がごさまいす」
ちょっと、殺されたりしないよねって不安になったが、心細そうに見つめる子供達に無理やり笑って見せる。
「大丈夫だよ。また後でね」
歩きながら、3人の男達の中で1番ボスっぽい男が話し始めた。
「私は特務機関world Intelligence Agency。通称WIAのニューヨーク支部の支部長補佐官エージェント•ハワードです。御足労頂きありがとうございます」
「WIA?」
「ええ、FBIやCIA、MI6、KGBのように有名では無い機関ですからご存知無くても仕方がないかと」
「WIAはアメリカ政府は勿論、どの国の政府機関にも属さない特殊な諜報機関ですので。
現在は100ヵ国以上の国や地域が加盟し、各国の都市に支部があります。国際的な危機や緊急事態を一国の政府や、様々な政治的干渉を受けず対処しています」
「私もエージェント•ワイルドも、WIAのエージェントです」
「そうなんですね、、、」
我ながらなんともアホな返しだ。それしか言葉が出てこない。
頭が現実に付いて行かない。
「スティーブは?!彼は無事ですか?」
そう聞くと、ハワードは少し驚いた顔をした。
「本当にエージェント•ワイルドの関係者なんですね」
その時、小さくピッと音がした。
エージェント•ハワードは右耳の通信機をオンにする。
「はい、こちらハワード」
「ワイルドだ。マイクや子供達は全員無事か?」
「ええ、皆さん無事ですよ。子供達はドクター•クラークと医務室で治療後、クリーンルームへ入ります。モニカ•アスナールはニューヨーク支部で保護します」
「マイクはクリーンルームへ行かせる必要は無い。僕がニューヨーク支部へ戻って全て処理するから調書が終わったら自宅まで送り届けてくれ。マイクには僕から全て説明する」
「分かりました」
通信を切るとハワードはマイクへ向き直る。
「エージェント•ワイルドは無事です。あなたには少しお話を聞いたらすぐに、ご自宅までお送りします」
「ありがとう。あと、子供達は?クリーンルームって?福祉施設は破壊されたけれど、どこへ連れて行くんですか?」
「クリーンルームとは、身体的な傷の治療後に短時間の記憶を操作する部屋の事です。
事件の事を覚えている事で重度の精神的な負担がある場合、機密事項を目撃した場合などにのみクリーンルームで処置します。
脳の記憶を司る海馬へ微量のATX47特殊電気信号を送り、約半日前後の記憶を消します。
子供達はその後に別な福祉施設で過ごす予定です」
「記憶を消す?そんな事が簡単に出来るんですか?!脳に電気を流すって安全なんですか!?」
「目覚めた時には新しい施設で、今日起こった事はおぼえていません。
米国では、このような情報操作は1960年代から日常茶飯事です。脳への刺激も電圧が低く健康被害や脳障害のなど後遺症などは心配はありません」
まさか、そんな事が出来るなんて、、、
正直、映画の世界。
「俺の記憶は?」
「エージェント•ワイルドからあなたの記憶は消さないよう指示を受けています」
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