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第31話(マイク)

待ち合わせの19時丁度に店の前にもの凄い高級車が停車した。 まさかね?と思いながら近寄るとスモークになっている窓が空いた。 「お疲れ様」 アウディのスーパーカーR8のカスタムに乗っていたのはスティーブだった。 嘘だろ、スーパーヒーローって年収いくらだよ。年俸制?! 「乗って」 車の中いい匂いがする。 「迎えありがとう」 「どういたしまして」 「今日はどこへ?」 「それはお楽しみに」 スティーブが悪戯っぽく笑った。 「ok!楽しみ」 デートに迎えに行ったりエスコートした事はあったが、逆にされる側は初めてだ。 何だか少し気恥ずかしい。 次は俺が彼をデートに誘うのもいいな。 高級車の乗り心地は最高だ。加速が気持ちいい。 スティーブは運転している姿も男前だ。 「スティーブは食べ物何が好き?」 「う〜ん、割と好き嫌いは無いよ。強いて言えば最近ちょっと和食にハマってるかな」 「へぇ、和食。寿司とか?」 「そうだね。和食はヘルシーな物が多いからトレーニング中はよく食べているよ」 「そんなマッチョでもトレーニングしなきゃならないの?」 「常に実戦に耐えられる身体づくりだよ」 彼の体は隅から隅まで昨日拝ませてもらったが体脂肪率は0%なんじゃ無いかと思った。 お互いの好きなもの、面白かった話。 いつも通りの他愛のない世間話だ。 しばらくすると2人の穏やかなドライブは目的地に着いたようだ。 「降りて」 なにやら高級そうな高層ビルの前に着いた。 ドアボーイが車のドアを開けてくれる。 スティーブは車のキーを預けて、車の移動を頼む。 ビルの入り口に着くとエスコーターが声をかけて来た。 「いらっしゃいませ、ワイルド様。お待ちしておりました」 大理石の床に、モダンな高級インテリアのお洒落なお店だ。 10mはありそうな高い天井からは大きなシャンデリアがぶら下がっている。 正面にある幅広い螺旋階段を上がりスティーブと奥の個室へ案内される。 他の客とすれ違い様に、女性客のスティーブへの熱い視線を何度も感じた。 そりゃそうだろう。誰から見てもかなり良い男。 上から下まで女性達の熱い視線がスティーブに絡みつく。 隣を歩く俺なんて目に入ってさえいないのだろう。 男としては複雑だ。 ああ、かなり複雑。 「こちらへどうぞ」 案内された個室は全面ガラス張りの眺めの良い部屋だった。 半円形のソファーに隣同士座るカップルシートだ。 予め予約してくれていたコース料理が運ばれてくる。 ワインもお任せで選んでもらい、楽しい食事がスタートした。

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