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第38話(スティーブ)
ワシントン本部に到着すると長官室へ案内された。
スミス長官とエージェント•ハワード、チームブラックのダイヤモンド、レッドファイヤー、アイスマン。
そして見知らぬ若い膨よかな体型の白人女性がいた。
派手な金髪、紫のフレームメガネ、ピンク色のリップにピンク色のワンピースを着ている。
エージェント•ハワードが説明した。
「彼女は今日からチームブラックの新入りだ。名前はガルシア」
「Hi、よろしく、、、」
ガルシアは緊張している様子だ。
「彼女の能力は?」
「君たちのような超能力は無い。ただの新米分析官だが、一流のハッカーで環境活動。先週、超厳重なトム・コーヴィンのシステムにハッキングしてのけた。私が査定しWIAにスカウトしたんだ。
チームブラックには専属の分析官が居た方がいいだろう。
彼女はニューヨーク支部預かりだ。しばらくは私が監督する。君たちチームブラックも今後は私の管理下に決まった。拠点をニューヨーク支部へ移す予定だ」
チームブラックはスミス長官の直轄だった。
スミス長官が口を開く。
「セシリオ•カルバーリョから情報を引き出したが、WIA内の内通者は未だ不明だ。誰が裏切り者か分からない。私はしばらく内部調査とアメリカ政府高官や軍への対応に忙しくなる。君らの事はエージェント·ハワードに一任している。
それから、セシリオ•カルバーリョが福祉施設を狙っていた理由はモニカだ」
「長官、私が説明します」
エージェント•ハワードは、紙の資料ファイルをスティーブ達へ渡した。
資料ファイルには機密情報レベル7と書かれている。
「メキシコの麻薬カルテルのハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオンが狙っているデウスという薬は老化した細胞を活性化させる。
デウスは臨床段階とされていたが、裏でアスナール博士がすでに完成させていたんだ。
アスナール博士の娘モニカは急速な早期老化の病気、プロジェリア症候群(ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群)を患っていた。
博士は娘の為に薬を研究していたんだ。
だが、ハリスコからの襲撃時に完成した薬はアスナール博士の手で死の直前に廃棄された。
その為、セシリオ•カルバーリョは生きた検体として人体実験の為にモニカを連れ去る気でいた」
「当時、僕の救出任務では薬が完成している事も、モニカに投薬している事も情報が無かったのは、僕のアクセス制限レベルがレベル6だからですか?」
「ああ、そうだ、エージェント•ワイルド。レベル6の君には薬ではなく家族の救出が主たる任務だった。デウスの奪還は別な者の任務だ」
「ではあの時のデウス奪還任務はエージェント•フォスターですか?」
あの時の救出チームでレベル7の機密情報を扱えたのはエージェント•フォスターだけだった。
「エージェント•ワイルド、君が持ち帰ってくれた資料は薬の臨床データだ。
そしてあの時のエージェント•フォスターの任務は完成したデウスだった」
WIAでは機密情報のアクセスレベルによって任務や情報アクセス権限に差がある。スティーブにも知らされていない秘密は多い。
スミス長官は眉間に皺を寄せた。
「今、内通者の手によってアクセスレベル7の情報がハリスコへ流れている。
デウスの製剤化研究、薬効薬理研究、バイオマーカー、臨床データなど重要な資料が敵に渡っている。
次はデウスの原材料が狙われる可能性が高くなった」
「私が資料を!」
ガルシアがタブレットを片手に一歩前に出た。
「あ〜私はまだ入ったばっかりでWIAのアクセスレベルは1だから色々と開けないファイルが多くて!ファイルにアクセスするとすぐビービーってアラート鳴っちゃうの。でね、警備員が飛んでくるし、皆んな怖い顔して規則違反だとか審問会議だって
「ガルシア、資料を」
ハワードがガルシアを促す。
「あ、はい、すみません。
それで、WIAじゃなくってハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオンのファイルをハッキングしたらコレが見つかりました」
タブレットに映し出された白い花の写真を皆んなに見せた。
「この花は古代種子を発芽させた花で、 ワシントンにあるコーネル大学大学院植物病理学科菌学専攻の古生物学プログラムでグランド博士によって育てられたものです。
シベリア北東部のコルイマ川下流の岸辺で発見された3万年前の植物の種が花を咲かせたもの。
現在は絶滅しているナデシコ科の植物です。発芽したものは20株しかありません。デウスを作るにはこの花が必要なの。
だから次はグランド博士が狙われてしまう」
「ありがとう、ガルシア」
エージェント•ハワードが話を引き継いだ。
「チームブラックのメンバーには、グランド博士の緊急避難とこの古代植物を安全な場所へ移送する任務だ。
グランド博士には事情を説明して既に警備を厳重にしてある。いつ襲撃にあってもおかしく無い状況だ。
装備を整え20分後に出動する」
「分かりました」
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