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第39話(マイク)
黒髪の短髪、二重の強い瞳、筋肉質な身体に、偉そうな態度をした若い男が、3人の男達を引き連れてやって来た。全員、武装している。
「ヒル兄弟の身柄を引き受けます」
まさかまた彼に遭遇するとは。
彼とは一昨日、福祉施設の食堂で会っている。
救出チームのaチーム隊長だ。
「マイヤーズ隊長、ありがとう」
どうやら、マイヤーズというらしい男はマイクには目もくれずヒル兄弟を黒塗りのバンへ乱暴に放り込むとそのまま立ち去った。
ケイラが改めてマイクへ振り返る。
「マイク、隠していてごめんなさい。私はWIAの任務であなたを監視してたの。それから、こっちの失礼な男はエージェント•フォスター」
「今はWIAのエージェントじゃない」
「じゃあ、元エージェントのフォスター」
ケイラはウンザリした様子でため息をついた。
「マイクはエージェント•ワイルドの恋人なのよ。キスなんてしたってバレたら殺されるわよ」
呆れているケイラに対して、フォスターは笑っている。
「マイクあなたはエージェント•ワイルドとここ1年で複数回の接触があったから2ヵ月前から監視対象になっていたの」
確かにケイラが頻繁に店に花を買いに来るようになって2ヶ月ぐらいだ。
「監視って何の為に?」
「身辺調査よ。家族構成、交友関係、仕事関係、全て。テロ組織や危険人物との接触が無いかを徹底的に調べるのが私の任務」
「で、監視してみて結果は?」
「白って言いたいけど、まだ捜査中よ」
「こんな平凡な人間を捜査しても何も出ないと思うよ」
「そうかしら?平凡な人間は、スーパーヒーローの恋人にはならないと思うけど?」
いつものケイラの悪戯っぽい笑顔だ。
「それより、あなたの身柄も一度安全な場所へ移したいわ。何故あなたが襲われたのかも、調べないと。
エージェント•ワイルドの恋人になった事で襲われたのなら、人質に利用される可能性もある。
それに、WIAから内部情報が漏れているって事だし。
何度も申し訳無いけどWIAのニューヨーク支部へ連れて行きたいんだけど」
「それはやめておけ」
フォスターがケイラを遮る。
「WIA内には裏切り者がいる。今はまだ危険だ。
ニューヨーク支部より安全な場所がある」
「WIAより安全な場所って?」
「ワイルドの自宅だよ」
そんな流れで俺は今、さっき知り合った男のバイクで彼氏の家に連行されるという、何とも複雑な気分だ。
ケイラは破壊された俺の店の修復依頼と本部への報告で忙しくらしく俺はフォスターに預けられてしまった。
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