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第40話(スティーブ)
ワシントンにあるコーネル大学大学院植物病理学科菌学専攻がある研究室は東棟の二階だ。
古生植物学のグランド博士のラボはその最奥にある。
エージェント・ワイルド率いるチーム・ブラックが到着した時には、すでに警備は厳重だった。WIAのエージェントがすでに付近の警備にあたっている。
警備は外に2人、入り口に2人、屋上に1人。
ラボには白衣を着た50代ぐらいの資料写真でみたグランド博士がいた。
他にも、特徴的な丸メガネの若い助手が1人。
「WIAのエージェント•ワイルドです。あなたをWIAのニューヨーク支部へお連れします」
「ああ、宜しくね」
緊迫した状況とは裏腹にグランド博士は呑気にコーヒーを啜っている。
「古代種子と開花した20株の花も移送します」
「種はもう持ってるよ」
グランド博士は白衣のポケットに無造作に入った種を見せた。
「花はあっちだ」
指差した方には温室のような作りになっている1メートル四方のガラス張りのケースに花が20株ほど咲いていた。
「温度と湿度に敏感な花なんだ。ケースごと移動してくれ」
「分かりましたケースごと移動します。花にはWIAの科学班が帯同し管理します。
グランド博士は私達と屋上のヘリポートへ」
「はいはい。じゃあクイック、後は頼んだよ」
クイックと呼ばれた助手は小さく頭を下げた。
屋上に移動しながら、ワイルドはグランド博士に確認する。
「種は博士のポケットにあるものが全てですか?」
「このラボが所有しているのは、これで全部だ。この種は私がシベリア北東部で見つけたものだが、あの近辺にある永久凍土の中にはまだ沢山あるはずだ。
種自体を手に入れる事はそう難しくはない。
発芽させ花を咲かせる事が難しいんだよ」
アスナール博士はデウスを数年前には完成させていた。
そうなると材料に必要な古代植物の花をどこかで手に入れているはずだ。
「博士以外にも、花を咲かせられる人物はいますか?」
「そうだな、、、私以外に花を咲かせられる人間が居るとしたら、、、魔女だよ」
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