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第41話(マイク)

「ちょっ!ちょっと!飛ばし過ぎー!スピード落としてー!」 ニューヨークの混雑した道路を有り得ないスピードで走るバイク。その後部座席でエージェント•フォスターの分厚い胸板にしがみ付く。 「ははは、落ちるなよ」 エージェント•フォスターは楽しそうに笑うだけで取り合ってくれない。 さっきのキスといい、この人、どうかしてる!!頭、どっかおかしい!! さっきからスピードメーターは時速50kmを切らない。 渋滞したタクシーやバスを縫うように走り抜けている。 冷や汗が止まらないし、人や車にぶつかりそうになる度に目を閉じている。 20分はこの恐怖のドライブに耐えた。 段々と交通量が減り、静かな場所に出た。 小高い丘を登っていく途中、道を外れて獣道に入って行く。 少し進むとコンクリートの大きな扉が現れた。 「ちょっと待ってろ」 エージェント•フォスターはバイクから降りると、扉の右端にある小さなボタンを押す。 すぐにドアがゆっくりと開いた。 「行くぞ」 コンクリートの扉は10メートルほどのトンネルに続いていた。 トンネルを出ると開けた庭に出た。 きちんと手入れされている庭で、テニスコート2-3面ぐらいはありそうだ。 庭の先には大きな家が見える。 グレーの石造りスタイリッシュな一軒家だ。 大きなガラス張りの窓が天井まで続いている。 入り口の前に行くと、フォスターはチャイムも鳴らさず勝手に玄関ドアを開けた。 「お待ちしていました。エージェント•フォスター、バーンズさん」 人が中に居るとは思っていなかったマイクはビックリしてしまった。 「久しぶりだな!サラ!」 そこには、初老のサラと呼ばれた上品な女性が立っていた。

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