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第49話(マイク)

何が何だかもうよく分からない。 顔も名前も知らないけど、俺の事を護衛するはずだったエージェントが亡くなったらしい。 皆んなは普段から人の生き死にに関わっているかもしれないけど、俺は一般人だ。 ショックだし、亡くなったエージェント•マクレーンって人にはもしかしたら奥さんや子供が居るかもしれない。 淡々と目の前で進められる話に付いていけない。 当たり前だけど、WIAの事情も、スティーブやブライアンの任務も知らない。 部外者は自分だけだ。 と思っていたんだけど。 「ああ、ハリスコはデウスを完成させる為にWIAから資料を盗み出し、モニカを狙った。 今日デウスの原材料となる古代種子から発芽した花と、古生植物学のグランド博士はニューヨーク支部へ移送した」 え?グランド博士?! 「え?グランド博士って、コーネル大学の植物病理学科のグランド教授の事?」 「マイク、知り合いか?」 「うん、グランド博士は古い知り合い。助手のクイックは同じ大学。修士課程で一緒だった。クイックは博士課程まで進んで今はグランド教授の助手」 「グランド博士とは、どんな関係?」 「植物の博士号を持ってた祖母が、昔グランド博士と一緒に研究してた事がある。だから家族ぐるみでの付き合いだよ。 グランド博士は誰かに狙われてるの?」 「グランド博士を狙っているのはメキシコの麻薬カルテルのハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオンだ。 デウスという危険な薬を作る為に古代種子から咲いた花と、グランド博士を狙っている」 「デウス、、、確かラテン語。古代種子、、、 もしかしたら、うちの祖母が死ぬ前に関わった仕事に関係があるかも」 アイヴィ•ビディ・アーリー。俺の祖母。 2年前に亡くなった、大好きなgrandma。 うちの家系は19世紀のアイルランド、クレア州に実在した偉大なハーバリストだったブリジット•アーリーの家系だ。 アイルランドに伝わる薬草療法を広めた女性。 祖母も博士号を取得するほど、植物に夢中だった。 俺がナチュロパシーを研究したのも祖母の影響。 2年前に亡くなった時、遺品整理を手伝った。 その時に見つけた研究資料にデウスに関する資料を見掛けた気がする。 「君のおばあ様の研究資料は今どこに?」 「確か実家にまだ保管されているから、イギリスのチェスターだ」 「すぐに、ロンドン支部へ連絡を入れよう」

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