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第一章~星明かりの街(した)で/第三節 夢見る冷凍みかん~ 

 聖夜(せいや)が目を開けると、ソファーの上で、千巻(ちまき)に膝枕をしてもらって寝かされていた。どちらもまだ裸のままだった。  彼は、大きなバスタオルで体を拭いてくれている最中のようだ。今は、脇をやさしく拭かれている。  頭の真下には、千巻の大事なところがちょうどあって......。  ――千巻さんの「おちんちん枕」、やわらかいのにほどよくぷにぷにしていて、心地良いなあ。って、僕は何を考えて......。 「やっほ、聖夜君」 「あ、千巻さん。ごめんなさい。架也(かや)兄さん、うれしすぎてどうしたら良いのかわからなくて溶けちゃいそうってもどってきちゃった」 「おやおや。可愛い架也ちゃんには、俺の刺激が強過ぎたのね。ふ、ふーん♪」 「あんなに兄さんが表情をころころと変えて、心から笑う姿を見たことがなくて......僕、兄さんをあんなふうにできる千巻さんが何だか、うらやましい」 「あははは、とってもカンタンなことだと思うけどなあ。架也ちゃんは、聖夜君への思いが強いからね。君が楽しそうに笑っていたら、きっと彼も自然と笑顔なると思うよ?」 「本当に?」 「例えば、こんな風に。こちょこちょこちょお~」  突然、脇をバスタオル越しに、手で激しく撫で回されたので、驚いた聖夜は、体をよじってその手から逃れようとしたものの、 「ひぎゃあ、くすぐったい、やめて、あひゃっ」  わきわきとした動きでどこまでも追いかけてくる、“テクニシャン千巻様”にしばらく翻弄された。 「あひゃひゃひゃ、も、もうだめ......あ!」  聖夜は、笑い過ぎたせいか気が付いた時には失禁をしていた。  とっさに千巻がバスタオルで先端をぎゅっと包んでくれたので、ソファーに被害はなかった。千巻には少しかかったが......。 「ご、ごめんなさい。千巻さん、大丈夫?」 「これぐらい平気、へーき。それよりもどう、架也ちゃんの反応は?」  架也は、聖夜と一緒に笑い果てていた。  そして、うっかり失禁してしまったことを聖夜が思う以上に恥ずかしいと頭を両手でわしゃわしゃしたり、転げ回って「きゃーはずかしー」を連呼したりと、いつもの落ち着きがなかった。 「――に、兄さん落ち着いて......!」 「あはは、どんな状態か想像できるよ~。さて、続きをしますか~」  千巻は、傍に置いていた別のタオルでまた聖夜の体を拭き始めた。 「あ、あの自分で拭けるから」 「やあだ。俺が拭きたいの~」 「あぅ」  乳首をやさしく何度も撫でるように拭かれて、聖夜は何だか胸がドキドキしてきた。 「ふ、ふつうのひとは、そんな風にふくものなの?」 「もしそうだとしたら、どうする~?」 「えっと......。ひゃふっ」  聖夜が返答に困っていると、千巻が乳首をタオル越しにこね回してきた。 「かた~い♪」  自分でもわかるくらい、先ほどよりもコリコリしているのが伝わってきた。 「緊張しちゃってえ。心配しなくても、これは俺オリジナルの拭き方。他の地球人のみなさんは、もっとバババッと拭いて終わり。だから、よそで見せちゃダメだよ?」 「え? じゃあ、ふつうにふいてほしいんだけど......」  冷めた目の聖夜のツッコミは届かず、千巻は既にお腹周りを拭き始めている。  ――どうしよう。もうすぐおちんちん......。  ところが、おへその後は、股間は飛ばされて太ももから足の指の先までを丁寧にやさしく拭いていくのである。  ――あ、シャツのボタンの時みたいに最後にするつもりなのかも?  だが、聖夜の予想は外れたのか、足の指から離れたタオルが上へ戻されることはなかった。 「千巻さん。おちんちん、冷えちゃう」 「聖夜ちゃんのペニスちゃんは、これから綺麗にした後、やっぱりお仕置きするの~」 「え、お、お仕置き......。だ、大事なところだから痛くしないで」 「だあいじょうぶ。そういうのじゃないの」  と、ぬるま湯をしぼったタオルを持ってくると、聖夜のタオルの中で放尿した時に濡れた部分をやさしく、やさしく拭き出した。  そして、その動きは、いつの間にか上下に、竿の裏筋と亀頭の裏を行ったり来たりを繰り返すようになって......。 「千巻さん、それ以上したら、お、大きくなっちゃうよ」 「良いよ、ものすごく良いところでお仕置きしてあげるから、今はどんどん大きくしてねん」 「え、何それ。あぅ。だめだよ、そんなにたくさん動かしたら」  大きくなっていく局部を見ながら、どんな顔をしていたら良いのかわからなくなってきた。 「だめ、千巻さん。もう出ちゃう。はっ。はっ。あっふん」  息が上がり、自然と腰を動かし始めた聖夜だったが、千巻は急に手を止めてしまった。 「......え? どうして......」 「はい、ここで『お仕置きタ~イム』です♪」  そして、聖夜をソファーに放置して、何やら冷蔵庫から取り出してきて――。 「はい、冷凍みかん」  と、キンキンに冷えた一房を聖夜の亀頭の上にのせた。 「冷たっ!」 「おしっこを俺にかけたお仕置き。架也ちゃんのごほうびの冷凍みかんを、聖夜ちゃんのペニスちゃんが先に食べておあずけ状態を二重で食らうってお仕置き~」 「何それ? もうゆるしてくれたと思っていたのに......」 「だってえ、こうしたかったんだもん」 「あんっ」  千巻が大きな口を開けて、みかんごと聖夜の竿を根元近くまで入れたかと思うと、そのまま上下に何度も口を動かし始めた。  彼のやわらかい唇が裏側をこすり上げる度に、聖夜はうっとりとした気分になっていった。 「あふ、ん。はっ。はふ。あぅ......」  言葉にならない甘い吐息が、静かな銀河色の部屋に響く。  時々、器用に口の中で転がしながら、みかんで亀頭をこすられるのも心地が良かった。熱を帯びたところに、その冷たさもまた心地良くて――。  次第にみかんが、彼の舌や、口の中の温かさと同じぐらいの温度になる頃、聖夜は再びはち切れそうになっていた。 「はぁっ。はぁ。あんん。千巻さぁん。今度は、やめないでね?」 「そんなウサギのように可愛い瞳を潤ませて言うなんて、ずるーい。もっと意地悪したくなっちゃうじゃん~」 「あぅ、待って。こんなまま置いていかないで......」 「すぐ戻るから。ちゅっ」  聖夜の亀頭に口づけをすると、また千巻は立ち上がって、今度はハチミツのボトルを持ってきた。  そして、ビンビンになって待っている竿に、とろりと垂らしていく。 「このまま激しく舐め回されて絶頂をむかえるのと、俺のペニスをこすり合わせて一緒にイクの、どっちが良い~?」 「ち、まきさん......」  本当はすぐにでも熱を帯びて爆発しそうな下を何とかしてほしい気持ちが強かったが、聖夜の口は自然と彼の名前を呼んでいた。 「やだ、うれしい!」  千巻は、聖夜を押し潰さないように跨ってくれた。  彼の竿と温かくて大きな手が、聖夜の竿にそっと重ねられる。  どちらからともなく、自然と腰が動いていく。  そのうち添えられていた手が離されて、ぴったりと抱き合う形で腰を振り続けた。  また華奢な聖夜の体を壊さないように、千巻が体重をのせすぎないように気を付けてくれているのも伝わって、聖夜はうれしくてぎゅっと抱き付いて彼の体を引き寄せた。 「もっと、のっかってきて良いよ?」 「ありがとう、でも聖夜ちゃんの肋骨にヒビでも入ったら架也ちゃんに怒られちゃうから、このままで」 「千巻さん、とっても僕たちにやさしくて、だいすき!」 「んぅん」  聖夜からの突然の口づけに、千巻は目を見開いた。 「ありがと。俺も口づけしても良い?」  うなずき返すのをちゃんと確認してから、千巻の唇が重ねられた。 「ぅんん」 「んぅん。聖夜君の全部がほしくなっちゃう。架也君はがんばり屋さんな上に反応が可愛いくてだいすき。ん。聖夜君は無邪気で純粋なまま可愛くてたまらないんだ。んん。ペニスの形に魅かれて声をかけたけど、まだたった数時間なのに、俺は二人の心も体ももっとほしくてたまらなくなって――。んん、ちゅ」 「ん、はぁ。んん」  何度も降りそそがれるキスの嵐に、聖夜は心がとろけそうになっていた。架也が先ほど感じていた、しあわせな気持ちに自分もなっていくことがうれしかった。 「あふ、はっ。はっ」 「聖夜君、可愛い。はっ。はう。」  お互いの吐息が重なり合う度に、抱きしめる強さが増していく――。 「ちゅ、かぷ」  次第に、千巻が聖夜の両方の耳たぶを何度も甘噛みしたり、耳穴を激しく舌でぺろぺろと舐め始めた。 「あふん!」  甘噛みの度に、千巻の吐息と、ぴちゃぴちゃと舐める音がダイレクトに耳に届いて、恥ずかしいような何とも言えない気持ちになった。  耳穴を舐め回されると、 「あん。ああん」  ――何これ、たまらないよ。助けて、架也兄さん!  ――ひゃああ、こんな時に呼ぶのは反則ですよ! きゃー! もう恥ずかしすぎて、きゃー!  ――待って、兄さあああん!  思わず兄を呼んでしまうくらいに、下からこみ上げてくるゾクゾクした感じと、何だかすごくうれしい気持ちがいっぱいになって、全てがあふれそうな気持ちになった......。 「ぁあん。み、耳は、もうだめぇ」  全身がとろけそうになりながら、聖夜も、千巻の耳を同じように舐めてみた。 「ぅん。あ、ん。せ、いやくん......そんな気持ち良い舐め方したら、あん! ダメえぇ」  千巻の腰の動きがものすごく速くなってきた。  ハチミツの強いとろみとベタつきのおかげか、二本の竿が離れることはなく、先端からじわじわ出てくる液体のおかげもあってか、激しくこすり合わせても程良く滑り続けた。  そして、フィニッシュは二人同時にむかえた。 「......ぃくっ! イク!」 「俺もぉっ!」  脱力感が落ち着くまで待った後、密着していた体を離すと、お互いのお腹に、乳白色よりの半透明の液体がたっぷりと広がっていた。もはやどちらの精液かは見分けがつかない。 「あはっ、たくさん出たねえ」 「僕、こんなに、はげしいことしたの......初めて」 「じゃあ、後処理も初めてだったりして......?」  そう言うなり、千巻は、聖夜のお腹に広がる精液と、ハチミツをおいしそうにぺろぺろと舐め始めた。 「聖夜君の大事な『おちんちんちゃん』もちゃんとお掃除するからね」 「え!」  千巻は、また局部を口に含み、何度も舐め回していく――。さっきイッたばかりなのに、また元気になってくる。 「やだ、聖夜君ったら予想以上にHなのね♪」 「そ、そんなこと知らないよ。ち、千巻さんが上手だから......。こ、今度は僕が同じことを千巻さんにしたい」 「ありがと。でも精液はおいしくないから、無理はしなくても良いからね?」  聖夜が舌を這わせている間、千巻が頭をやさしくやさしく撫でてくれた。  初めて舐めた精液は、少し苦くて、ハチミツと混ぜるとほろ苦いカラメルソースのようなイメージの味になった。  聖夜と架也にとって、十数年間の世間的な情報は、リビングルームから漏れ聞こえてくるテレビ番組の内容だけだったので、食べたことがない食べ物も、知らない単語もたくさんあるのだ。 「やった。千巻さんのおちんちんも元気になった」 「ふふ。おそろいだねえ」  二人は竿と亀頭をまたくっつけ合った。 「ちゅってね」 「僕、千巻さんとの『おちんちんキス』好き。兄さんとかがみごしにする時は、気持ち良くなるためじゃなくて、今ここにいるんだって生きていることをたしかめ合うためにしていたから。だから、少しこすり合わせて大きくなってきたらまんぞくして――。こんなにも心から何かがあふれそうで、楽しくてうれしいことが始まるだなんて知らなかった」 「セックスは、楽しまなくちゃね。しかし『おちんちんキス』って良いね。ネーミングセンスが可愛い。今度から俺も使っちゃお」 「じゃあその時、架也兄さんとも『おちんちんキス』してくれる? これからは、楽しくてうれしいことは心の中の共有だけじゃなくて、同じ体験もしていってほしくて」 「俺は、聖夜君も架也ちゃんもどっちも大切に愛していくからね。安心して」 「ありがとうっ」  聖夜は、うれしくて、また千巻に抱き付いた。 「わーお♪」                       ★                                                               少し前の、兄と千巻の楽しそうなやりとりの間、聖夜は心の中にある、ひみつの森のベッドの中から、兄からあふれ出る思いの全てを一緒に感じ、一緒に涙した。  いつも辛いことは兄が共有を遮断する傾向にあり、虐待を受けていた彼の記憶は引き継ぐことがほぼできなかった。  それは、さみしくもあり、自分の無力さを思い知らされるようで、ずっと苦しかった。  本当はどんなことも共有してほしかった。一緒に耐えたかったのだ。  千巻に出逢ってから、うれしい気持ち、恥ずかしい気持ち、しあわせな気持ち、心からしあわせを求める感情は兄にとって初めてのことも多くて、整理が追い付かないのか、交代している間も隣で見守ってくれている間も、だだ漏れであふれるようにどんどん届くようになってきた。  聖夜はそれが心地良くて、すごくうれしかった。  ――兄さん、ありがとう。どんな時も僕のことを大切に考えてくれて。これからは兄さんも一緒にしあわせになろうね。  ――聖夜......。  ――だからどうか、いつまでも、いつまでもぼくのそばにいて。  ――ありがとう、聖夜。私もいつまでもあなたのそばにいたいです。あなたの兄としてもいつまでも。  ――僕にとって、兄さんは今も昔も、そこらへんに落ちている盾みたいな存在じゃなくて、いつでもたのもしくて、そばにいてくれると安心できて、僕が存在することをゆるしてみとめてくれるかけがえのない存在。僕は、架也兄さんが一緒にいてこそ存在ができるんだ。前のおうちで僕が生きることができたのは、兄さんがいてくれたおかげだから。  ――(盾はそこらへんに落ちてはいるものではありませんが......)私が存在できるのも聖夜がいてこそです。けれどもこれからは。  ――そう、これからは。   ――やさしくてステキな千巻さんがいる! ――やしくてステキな千巻さんがいますね!   聖夜と架也は、最後は、ほぼ同時にはずむ心で、『やさしくてステキな良い変質者』の名前を口にしていた。  ちゃんと自分たちを見てくれる誰かを、世界を、双子の兄弟は十二年間ずっと待っていたのである。  ――本当はお母さんに元にもどってほしかったけれど、もしそうなっていたら......。  ――彼に出逢う機会はなかったでしょうねえ。 「さてと、聖夜君。シャワーを浴びに行こうか。やっぱりハチミツのベタつきはヤバいわあ」 「僕、架也兄さんを通して覚えたんだ。だから、おちんちんの洗い方が合っているか、しっかり見てて。そんで合っていたら、僕も冷凍みかんをごほうびにほしいな!」 「急に意気込みがすごいんだけど、何事お?」 「すみません、弟が言葉足らずで。聖夜は、私と同じものを食べて同じことを覚えて経験して、気持ちの共有というか思い出として語り合えたらと意気込んでいるようなのです」 「別にあやまることじゃないよ。なるほど『おちんちんキス』の流れからの意気込みなのねん。よし、じゃあ聖夜ちゃんが架也ちゃんのペニスちゃんと、俺のペニスちゃん二本を上手に洗えたら、冷凍みかんだけじゃなくて、晩御飯の後に、大きなプリンも二人にあげちゃおう~」 「え、本当!? やったあ。あと、その兄さんの前だと僕に『ちゃん』つけて呼ぶのちょっと女の子みたいで恥ずかしいんだけど。上手にできたら、『君(くん)』に統一してほしいな」 「ええ、それは、や~だ。俺の自由だもん~」 「しょぼん」 「またウサギの瞳を使う~。やなものはやなの。ほら、冷凍みかんと大きなプリンのためにがんばって!」 「はあい」  ――五分後。架也のあえぎ声がお風呂場にこだました。  お風呂場に備え付けられている鏡の中の兄を見ながら洗ったのだが、ボディソープを付けた手が予想外に滑ってしまい、ほぼ自慰行為になってしまったのだ。 「自慰行為」という言葉と、「マスターベーション」、「オナニー」という外国語があることを千巻がついでに教えてくれた。 「じゃあ、架也ちゃんが落ち着いたらで良いから、今度は俺のを洗ってみて」 「うん、わかった」  ――五分後。千巻の悲鳴がお風呂場に響いた。  うっかりとボディソープに足を滑らせた聖夜が慌てて掴んだのは、千巻の玉袋だった。中身ごとしっかりガシッと握られたので、千巻が床にしゃがんで苦しそうにしている。 「ごめんなさい。僕のせいで、千巻さんの玉ちゃんが......」 「だ、大丈夫。まだ潰れていないから。うぅ。下腹部の鈍痛の方がヤバいんだわあ」 「すみません、千巻さん!」  架也もあの日の痛みを思い出して青ざめた。  千巻が落ち着いてから、聖夜がタオルで二人の体を拭いてあげようとすると、やんわり断られてしまった。 「なんで!?」                           ★  ソファーで、千巻が貸してくれたトレーニングウェア姿で、聖夜がもきゅもきゅと口を動かしている。  今日は不合格だったが、架也が冷凍みかんを分けてくれたので、聖夜も食べることができたのだ。 「兄さん、ありがとう!」 「うんうん、聖夜には笑顔が一番似合いますね」 「架也ちゃんはやさしいなあ。じゃあ、ごほうびに、『冷凍みかんキス』してあげる♪」 「あん」  千巻が口に含んだ一房の冷凍みかんを、架也に口づける際に舌で運んできた。  架也も同じように、舌でみかんを運びながら口づけを返した。  みかんを味わいながら、ころころとお互いの舌で転がし合って、濃厚なキスを繰り広げていく――。 「ストーップ! それ以上は、後にして! 僕もうお腹がすいた。お肉、早く食べたい~」  兄と千巻の股間が大きく膨らんだところで、聖夜が割って入ってきた。 「あはっはは。そうだよねえ。じゃあ、架也ちゃん、続きは後にしようか。『おちんちんキス』もしたいし」 「わ、私は今日はここまででじゅうぶんですよ? 睡眠時間も大切ですから......」 「そお? そんなら晩御飯の後は、お薬を塗っちゃおうかな」 「お薬ですか?」 「そう。傷、火傷の痕を元のキレイな皮膚の状態に近づけるお薬」 「千巻さん......!」 「まあた、涙ぐんでえ。たまたま持っていただけだからね?」  ――その後、焼肉パーティーをしたので、においから、もう一度三人でお風呂場に行った。聖夜に任せるのを恐れた千巻が、先に架也を全身洗ってくれた。 「わ、私は、自分で洗えますう」 「ね、念のため、な?」 「千巻さん、ひどーい! 千巻さんの体は僕が洗うー」 「え!?」  そして、またお風呂場に千巻の悲鳴が響いた。 「ぎゃっふん。何で同じ過ちを繰り返すんだ~。ぅううん。パタ」 「ご、ごめんなさいぃ!」 「すみません、千巻さん! しっかりしてくださいっ」  千巻の竿をちょんまげのように、自分の頭にのせるように、聖夜が足の間に入り込んだまでは良かったのだが、「ち〇まげ!」と有名な冗談を飛ばした後、またうっかりと足元のボディソープに滑ってしまい、千巻の玉袋を中身ごと再びしっかりガシッと握ってしまったのだった。先ほどよりも力が強かったのか下腹部を押さえたまま床にうずくまったままである。  架也が心配して、顔を覗き込むと、痛みに悶えながらも、千巻はくつくつと静かに笑っていた。 「――ち、〇んまげ......! まさか、聖夜ちゃんが酔ったオッチャンのように面白いことをするとは! あ、は、あははは」  大声で笑い出した千巻につられて、架也も笑い出した。 「ふふふふっ。私も、初めて聞きました」  銀河色のお風呂場は、温かい笑い声に包まれて、夜が更けていく――。

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