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第二章~森(まどろみ)の中で/第一節 硝子のように美しい青年~

 千巻(ちまき)は、本業は作家ではなかった。  体を全体を構成するための組織、器官や細胞がどのように働いてくれるのかを日々研究していく学問である、生理学(※1)の全ての分野において、好きな男性から愛される行為を受けた際の、十八歳以上の成人男性の、体の内側の反応を研究し、とある難病を食い止めることができないか模索する、少しマニアックな研究者の顔が彼の本業である――。    国が近年導入開始の「ムーンショタ計画(※2)」の目標とするビジョンの、「性癖を隠さないことによる細胞活性化から、百二十歳まで健康に不安を感じることなく、人生を楽しむことができる社会の実現化」や、「その細胞活性化からもたらされる、脳神経のメカニズムの全ての解明」、「誰もが病気から夢をあきらめることなく、追求できる社会の実現化」にも繋がる研究でもあり、彼は密かに国に注目されていたりもするそうな......。  ――「ムーンショタ」という言葉は、少年や小さな男の子を愛してやまない、「ショタコン」で有名な、とある国の大統領の「月に純粋無垢な少年ばかりを集めた平和な楽園(観光施設)を作り、これから始動の月世界旅行を楽しく、やさしい心になれるものにしたい」というスピーチが由来である。それが少しずつでも成功すれば、多額の費用をかけつつも、強い影響力を周りにもたらすことが期待できると――壮大かつ一見不可能に思える目標や、それに対して挑戦していくとを意味する言葉である。  スピーチのあった西暦二千十四年から、建物の老朽化のため終わりを告げる二千四十年までの十五年間の間、百五十人近い少年が、宇宙飛行士と同じ訓練を経て月に旅立ち、月の裏側にある建造物を再利用した観光施設で暮らしながら、観光客の話し相手、遊び相手をしていた......。月に旅行に行った人たちはみな、今でも童心に帰ったように生き生きとした顔で「あそこは本当の楽園だ」と口をそろえて言う――。  だが、その詳細はプロジェクトの終わりと共に、「行った者のみのお楽しみ」として、全ての情報媒体をその国に回収されてしまい、今や知る人の数は限られている。  ――千巻は、老朽化は表向きの理由であることを知っている......。  西暦二千四十九年現在においての「ムーンショタ」は、「性癖を隠さず、明るい気持ちで快楽を得ることで健康面から人生を変えていき、『アバター』と呼ばれる、各個人の分身としての画面上のキャラクターを用いたり、マイクロチップの操作による脳内ビジョンの共有などの遠隔操作の技術面で様々な仕事を家にいながら同時に多くの仕事を受け持って仕事の効率化をはかり、また、高度な人工知能を搭載のロボットと一緒に家族のように仲良く暮らす、介護のための介助だけでなく、毎日の話し相手、料理の先生、一緒にゲームや運動をしてくれる遊び相手になってくれる、入浴を楽しくできるように浴室の隣で歌や音楽を聞かせてくれる、就寝時に寝付くまで読み聞かせやおしゃべりをしてくれる、子守唄を歌ってくれるなど日常生活のサポートをより身近にしてもらう、『共存』を通しての近未来化の生き方へ全人類が楽しみながら向かうという壮大な目標」から逆算しての研究が多方面で行われているのである――。                                        ★  その話を軽く耳にした聖夜(せいや)架也(かや)は交互に目をパチパチさせて、ポカーンとしていた。 「詳しくは知識不足でわかりませんが、千巻さんはそれはそれは、すごいかただったのですね......!」 「そこらへんの変質者じゃなかったんだね!」 「はははは。好きを仕事にしたら後から注目されただけだよ~って、『変質者』は余計だからね?」  二人は、年齢的には、研究対象の成年年齢ではあるものの、脳波など体内の変化を記録したり、調べるために必要なマイクロチップを脳へ入れる際に、幻覚や幻聴が起きる症状をおさえる効果やその逆も可能だという長年の研究成果、結果を踏まえて、二重人格から多重人格(※3)の場合に、治療ではなく人格を残したい場合の影響や効果がどのくらいあるのかをまだ長期に渡って調べる必要があるため、万一のことも考えて、その助手としてではなく、千巻の趣味の範囲における研究書の助手をしているのである。                     ★  ――今から、二十二年前の十歳の頃、千巻も親からの虐待に日々悩んでいた。  毎日酔った父親から服に隠れている部分にタバコの先端を押し付けられ、傷が絶えなかった。母親が毎日こっそり軟膏を塗ってくれたが、治る日数よりも増えていく傷の数が多く、治っていっているのか、なかなか判らなかった。 「千巻、ごめんね。ごめんね。熱くて、痛かったでしょうに......」  母親は、軟膏を塗る度に何度も謝ってきた。その度に、千巻も同じ返事をした。 「つらいのはお母さんも一緒だもん。これぐらい平気だよ~」  父親は一年前に母と再婚したので、千巻とは血の繋がりはなかったが、休みの日はキャッチボールを一緒にしてくれたり、空き缶を利用して缶ぽっくりを作ってくれたりと、本当の父親のようにやさしく接してくれた。  だが、ある冬の日、帰宅途中に居眠り運転のトラックにはねられてしまい、前のようには歩けなくなってしまったことで、フィギュアスケートのプロスケーターとしての人生をもう歩めなくなったと悲観し、酒に溺れるようになってしまったのだ......。  ――まだこの当時は、脳内へマイクロチップを入れる技術はこの国では導入されたばかりで、遠隔操作の技術も、脳内ビジョンの共有のシステムもまだまだこれからの状態であったため、家にいながらコ―チとして指導したり、その延長線上のリモートワーク型スケート教室を開くという道も閉ざされていたことも彼を酒に導いてしまったと言える。  泥酔状態になると、「なんだ、この料理は!」「なんだこの掃除は!」と、母親の家事がきちんとできていないと罵り始め、こいつがどうなっても良いのかと千巻を捕まえて虐待をし、彼女を精神的に追い詰めるようになったのだ。  千巻は父親のつらい気持ちを子どもながらに何となくは理解をしていたし、酒があのやさしかった父を狂わせてしまうのだとも分かっていた。だから、泣き叫ぶことはせず、いつも痛みに耐えながら、静かに涙を零した。  父親は、酔っている間の記憶はないようで、たまに酔いが回っていない日に、母親に深く頭を下げ、静かに泣きながら千巻の体に軟膏を塗ってくれたこともあった。  だが、弱い心に打ち勝つことができずに呑むことを止めることはできなかった。  千巻は、母親と家を出ることも考えたが、父親を一人にした場合、きっと荒れたまま孤独に死んでしまうのが目に見えていたので、しばらく耐える道を選んだ。  いつか悲観することをやめて、新しい職場を見つけようと前を向いてくれる日がきてくれるのではとも信じて――。  夏になる七ヵ月経っても、父親は堕落したままだった。  これまでの貯金がなければどうなっていたことだろうか。  相変わらず、母親の涙の本数と、体の傷だけが増えていく......。  この頃に夢精が始まり、何となく恥ずかしさを覚えた千巻は、背中など届かない部位以外は、自分で軟膏を塗るようになった。  家だと父親の目もあるので、毎日学校帰りに、一番近い森に入ってこっそり塗った。  塗りやすいように毎回服の下だけ脱いだ。  樹々に囲まれながら、そっとズボンも下着も脱ぐと、スース―する解放感と、木漏れ日でやさしく包まれる安心感から、いつまでも出したまま立っていたくなるような不思議な感覚になり、「俺のをもっと見て」と、樹々に、鳥たちに見えるように――自然と手はペニスを触っていた。  そして、気持ち良い触り方を発見し、自慰行為に目覚めるのは至極自然なことだった。  学校帰りに、毎日抜くようになると、だんだんマンネリ化してきたような物足りない気持ちになり、ある日千巻は下半身をさらけ出した状態で、少し森の散策をすることにしたのである。 「ふふふ。気持ち良いなあ」  いつもはほぼ入り口から近い場所しか行かなかったが、今日は、地図で気になっていた湖のある所まで歩いてみることにした。  ペニスもぶらぶら揺れながら、彼と一緒にそよ風を楽しんでいる。 「いつか、お父さんが元に戻ったら、一緒にこうしてお散歩してみたいなあ。あ、でも大人の人はここを隠さないとつかまっちゃうんだっけ?」  ――二十分ほど歩いた頃だろうか、千巻の目に、金色でやわらかな光が飛び込んできた。 「何だろう?」  誘われるがままに千巻の体は、光のある方へ吸い寄せられていった。  光を放っているものは、目的地の湖の奥にあるようだった。 「あれ? 湖に人.......?」  草むらからそっと覗き込むと、湖の中央にある大きな岩に背中を少し預けて、気持ち良さそうに水浴びをしている髪の長い青年が見えた。  硝子のように美しい色白の肌が眩しかった。  栗色の、肩の下まである長い髪が陽の光できらきらと輝いていると思いきや、その光は空からではなく、彼の腰元からあふれ出していて――。 「さっきのあのやさしい光?」  千巻が、もっとよく見ようとして体を動かそうとしたその時だった。 「誰か、いるの?」  口の中でミルクチョコレートをそっと溶かすような心地の良い甘さのある、おだやかな声がしたかと思うと、青年が千巻の方へ水を手でかきながら近づいてきたのである。 「あわわわわ!」  盗み見ていたことがバレたことと、予想外の展開に焦り過ぎた千巻は、足を滑らせてそのまま湖の中へドボンと落ちてしまった。 「大丈夫かい?」  すぐに助けてくれたようで、気が付くと、彼に抱きかかえられていた。   返事の代わりに水をげほげほと吐き出す千巻の背中をさすりながら、彼はなぜか、くすくすと笑い出す。 「ふふ、あは、あははは。きみ、なんて面白い格好をしているんだ。ズボンや下着はどうしたのさ? さては」 「ぜーはーぜーはー。断じて、野糞じゃないからねっ」  最後だけは言わせないように頑張った。 「あははは、きみ、面白いことを言うね。ぼくは、てっきり光合成中だったのかと」 「ええっ?」 「あはは、冗談だよ、じょ・う・だん。」  抱きかかえられたままだったので、鈴入りのやわらかな箱をコロコロと転がすような、楽しそうな笑い声が上からやさしく降り注いでくる。  ふいに、睫毛が長くて二重瞼の、おだやかそうな瞳と目が合う。  男の人なのに、とてもキレイだと千巻は思った......。  少しドキドキしながら見つめていると、ちゅっと、おでこに口づけを落とされた。 「あわわ、どういうこと?」 「口が良かったかな?」 「そういうことじゃなくて」 「冗談だよ。人に久しぶりに会ったからさ、温もりに触れて、ぼくは今はまだここにいるんだって確認したくなってね」  いたずらっ子のように舌を出して笑う彼の瞳は、なぜか切なげに見えた......。  だから、思わず尋ねてしまった。 「どういうこと?」 「ふふ。小さなきみには、まだ早いかもだから、ひみつだよ、ん」  うまくはぐらかされてしまい、千巻は頬を膨らませた。  ――俺を子どもだと思って! 何だかくやしい! 「あははは、表情がコロコロと変わって、可愛いね!」  青年は、千巻を抱きかかえ直すと、小鳥が木の実をついばむかのように、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっと、と全身に口づけを繰り返した。 「あ、やめて、くすぐった~い」  細いものの、自分よりも体も大きな年上の男の人から、今、いけないことをされているんだという認識も何となくはあったが、怖いという気持ちは不思議となかった。 「あ、そこは......!」  ペニスの上にもやさしく唇を落とされて、思わずビクンと体が跳ねてしまった。 「ここ、が好きなの?」  くすっと、笑うと、「ぱ、くん」と、彼は千巻のペニスを根元まで口に含んでしまった。 「ふぇ!?」  そのまま口の中で、舌でやさしく転がされて、どんどん硬くなっていくのを感じて、恥ずかしさのあまり、千巻はじたばた手足を動かして逃げようとしたが、 「だいじょうぶ。じっとして。やさしくするからさ」  と、甘い吐息と共に耳元で囁かれて、再び温かな舌に翻弄され始めた。 「あ、あぅ。お、俺、変になっちゃいそう......」  自分で触る時とは違う、うっとりするような気持ち良さに、いつしか千巻は静かに彼に身を委ねることにした。 「もうダメだよ、出そうだよ......!  あっ、ふあ、舌を止めて、お兄さんの口に出しちゃうよう」 「良いよ、そのまま出して」  加速する彼の温かな舌の動きに、すぐに千巻は頭の中が真っ白になり、意識を手放していた。  ぼんやり意識が戻ってくると、彼の腕の中にいた。  ぎゅっと抱きしめられながら、頭をやさしくやさしく撫でられているところだった。 「はずかしいよお」  千巻は、先ほどのことを思い出して、顔が真っ赤になってしまい、思わずその胸に顔を埋めて、ぎゅっと抱き付いてしまった。 「ふふふ。可愛い」  彼も、ぎゅっと抱きしめ返してくれた。  父親の精神状態がまだ良かった時に何度もやさしく抱きしめてくれたことを思い出して、その温かな胸の中で、千巻はそっと涙を零した。その間も、彼は、やさしくやさしく頭を撫で続けてくれた。  ――先ほど、彼が口づけをしてくれた場所は全て、父親から受けた傷がある場所だった。  温かな唇が触れる度に、温かな手で治療をする「お手当て」をされるように、痛みがすぐにやわらいで治りそうな、不思議なやさしい気持ちでいっぱいになった......。  千巻が落ち着いて顔をあげると、彼は、頬にそっとキスをして、唇にもちゅっとした。 「そろそろ夕方になるよ。夜のとばりが下りたら、森の中は危険でいっぱいになるから、そろそろ帰る支度をした方が良いよ」 「お兄さんは?」 「ぼくは、ずっとこの森で暮らしているから、帰らなくても良いんだ」  ――え? 森で? 地図では家みたいなものはなかったような......。 「さあ、さあ、下着とズボンをはいて」 「実はその......森の入り口の方に置いてあるんだ」 「ん? 入口? ははっ、遠いね」  赤面しながら、千巻は今日のことを告げた。 「やあやあ、露出狂くんでしたか~」 「ち、ちがうもん。大人のと一緒にしないで! って、お兄さんなんか全裸じゃないか!」 「そりゃあ、水浴びするのに服を着ている方がどうかしていると思うけどね?」 「う~。あ! それよりも、大事なことを忘れていたよ!」  千巻にガシッと肩を掴まれて、青年はキョトンとした。 「ん? なになに?」 「なんで、お兄さんの玉ちゃん、そんなに光っているの!?」  彼は、「あちゃあ」という顔になった。  やさしくされて意識がそちらへいってしまっていたものの、千巻は何となく気付いていた。二人のお腹の間で、あふれるように、あのやさしい光がずっと灯っているのである......。 「気付いてもらっては困るところに気付かれてしまったとは。一生懸命、見えないように抱きかかえていたのになあ。ただで帰して良いものだろうか?」 「き、急に変なことを言わないでよう」  何だか不穏な話になってきたので、ようやく知らない人といることに千巻がドキリとしてきたその時、 「なんちゃって。うそ、うそ。これは、持病のせいで光ってしまうんだよね。人前では服を着ていても光があふれ出すから、恥ずかしくて。だからあまり見ないで~」  と、股間を手で隠しながらも、やさしそうな笑顔に戻ってくれた。 「......なんて言う病気なの?」 「ま、まだひみつ。聞いちゃったら、きみはきっと違う行動を取るかもしれないから。今は、この楽しいままのきみと一緒にいさせてほしいなあ」  彼は、さみしそうな笑顔で、千巻の唇にそっと口づけをした。 「また、遊びに来てくれる?」 「良いよ。お兄さん、なんだか大好きだから。明日も来るよ」 「......うれしい、ありがとう!」 「あわわわ、苦しいよう」  力強くぎゅっと抱きしめられて、千巻はあばら骨にヒビが入ったと思った。  ――ほ、本当に、病気なのかな? いてててて。 「ごめん、ごめん。うれしくてつい。大丈夫?」 「う、うん」  千巻は痛みの余韻に耐えながら、うなずいた。 「ぼくの名前は、野薔薇 華都(のばら はなと)。きみはなんていうの?」 「せ、千原 千巻(せんばら ちまき)。か、漢数字の千に、巻物の巻を書くんだけど、ちまきって変な名前でしょう?」 「そんなことないよ。長い家系図の巻物が頭にすぐ浮かんだよ。きみが、千巻くんが長生きしてしあわせに暮らせるように大切につけられた名前なんじゃないかな?」 「あり、がとう。友だちにはバカにされたことしかなかったから......うれしい」 「ぼくの名前は、華やかな、栄えている都のように、お金に物に困らず、いつまでもしあわせに暮らせるようにとつけられたんだ。『はな』なんて入っていると、ちょっと女の子みたいで、子供の頃は恥ずかしかったけど、理由や文字の意味が分かるようになると、ちょっとずつ好きになることができるようになってきたんだ」 「な、名前のこと、今日お母さんにちゃんと聞いてみようかな」 「うんうん、きっと喜ばれると思うよ。さあ、陽が落ち始めている。急いで」 「うん。華都お兄さん、また明日」 「千巻くん、また明日」  湖から上がって、振り返ると、薄暗くなってきた湖の中で、華都からあふれ出す光がとても美しかった。  見えなくなるまで、手をいつまでもいつまでも振り合い、千巻は元の入り口付近へ向かった。  ――もう一度、軟膏を塗り直さなくちゃ。  その時、夜を呼ぶ、少し冷たい風が、千巻のペニスをそっと揺らした。  ――明日は、華都お兄さんのペニスを今日してくれたみたいにやさしくさわってあげたいなあ。  千巻は、すっかり冷えたペニスを両手でそっと包みこんだ。  そこにはまだ彼に舐めてもらった時の、舌の感触の記憶が残っていた。  ――今日のことは、夢じゃないよね?  思い出して、少しムラムラしてきた千巻は、そのまま手の中のやわらかいものを扱き始めた。                    ★                 「これが俺と、華都さんとの出逢いだよん。って、ちょっとお~」  眠る前に昔話をしてほしいと聖夜にせがまれて、話し始めたというのに、彼はぐっすり眠ってしまっていた。  すると、ふと目を覚ました架也が尋ねた。 「むにゃあ。......ムラムラし出した後、どうなったのですか?」 「え! それ聞く!?」 「はい~、知りたいです。千巻さん大好きですから、全部知りたくて」 「道の真ん中で堂々と果てる勇気はなかったからさ、近くの草むらで続きをしたんだけど、出した時にたまたま通りかかったおじさんの顔に飛んじゃって、恥ずかしい上に、見つかるとヤバいと思って、頑張って服のある場所まで走り込んだわ~。って、ちょっとお~」  いつの間にか架也も、再びぐっすり眠ってしまっていた。 「もう。可愛い寝顔だから聖夜ちゃんも、架也ちゃんも許してあげる」  千巻は、二人に上布団をかけ直した後、そっと頬へ口づけを落とした。  そして、自分のパジャマのズボンに手を入れると、傷痕がキレイになくなったペニスを取り出して、華都のことを想いながら、指を動かし始めた――。  カーテンの隙間から差し込む、やさしい月の光は、いつしかあの日の金色のやわらかな光になり、いつまでもいつまでも彼のペニスを温かく照らしてくれた。  千巻をそっと見守るかのように......。  

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