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第三章~初恋の丘の秘めごと(やくそく)を/第一節 弓斗とユミコ~ 

 弓斗(ゆみと)と出逢ったのは、聖夜(せいや)が六歳になった夏頃だった。  母親が働きに出ていた頃に、一緒に留守番をしてもらっていたのである。  彼は、いつも母親からは「ユミコ」と呼ばれていた。大学時代の親友らしい。  足首まである長い黒髪がいつも艶やかで美しく、落ち着いた雰囲気の女性の服を毎回着てくるため、まるでかぐや姫様と一緒にいるような気持ちになり、子どもながらに、ドキドキしたことを覚えている。  彼は毎日朝から夕方まで、リビングルームか物置部屋で、おままごとを一緒にしてくれたり、積み木でお城の作り方を教えてくれたりと、家でのんびりできる遊びをたくさん教えてくれた。  この頃は、聖夜はまだ白銀色の髪ではなく、黒髪だった。  どの部屋も、カーテンが普通に開け閉めされて、明るい家だった――。  彼とは、母親よりも一日を長く一緒にいることが多かったように思う。母親でも父親でもない、お兄さんかもしくは友だちのような感覚で、毎日会える時間が楽しみだった。  そんなある日、彼は聖夜に自分のことをそっと打ち明けてくれたのである。 「わたしはね、体は男性だけど心は女性なのよ」 「そうなんだ。だからいつもキレイで、かぐや姫さまみたいなんだね」  小さかったこともあるかもしれないが、驚くよりも納得をした。 「まあ。キレイだなんて。うれしいわ、聖夜くん」 「じゃあ、僕も、『弓斗さん』から、女の子として『ユミコちゃん』ってよばなくちゃね」 「ありがとう! うれしいわ~。でもね、悩んでいることがあるの」  うれしそうに笑っていたかと思うと、急に彼女はつらそうな顔を聖夜に見せた。 「どうしたの?」 「お金がたまって、性転換手術を受けられるようになったのに、手術の前後の痛みを思うと勇気が出せなくて、ずっと悩んでいるの」 「僕も、ケガをしたらイタいの、すごくイヤだからなんだかわかる」 「ありがとう。聖夜くんは小さくて何もわからないから言っちゃおうって思ったけど、ちゃんと聞いてくれるのね。うれしい」  彼女は、ぎゅっと聖夜をくまのぬいぐるみのように、抱きしめた。 「僕、ユミコちゃん、いつもやさしくてだいすき。ユミコちゃんがかなしいかおをするのはイヤだなあ。ぼくでよかったらいつでもおはなしきくよ?」  聖夜も彼女を同じように抱きしめ返した。 「やだあ、イケメン紳士~。ありがとう」  彼女は、そっと涙を零しながら語り始めた......。 「子どもの頃から、体は女の子に憧れていて、おちんちんの存在感は気になってしまうものの、痛い思いをしたくない不安でいっぱい。触れば普通に気持ち良くなるし、わざわざ痛いことをして無理に女の子にならなくても、このまま女の人の服を着続けて女装をして暮らす方が良いのではって、どんどん痛みの恐怖で押しつぶされそうになるの......」 「う~ん。僕は、今のままのユミコちゃんでもじゅうぶんキレイだとおもうよ?」 「聖夜くんったら......」  顔を赤らめて照れる彼女はとても可愛く、聖夜はそっとその頬へ口づけをした。  自然に体が動いたのである。 「......うれしい」  女性として扱われているうれしさを感じ、彼女は涙した。 「ねえねえ、ユミコちゃん。きもちいいことって、どんなふうにするの?」  唐突ではあったものの、聖夜の素朴な疑問に、彼女は 「一緒にやってみる? お母さんには内緒にしておいてね」  と、そっと下着を脱いでくれた。  聖夜も、自分の下着とズボンを下ろして、待機した。 「普段、わたしのおちんちんのことはね、『クリトリスちゃん』って呼んでいるのよ。女の人の足の間には、おちんちんの代わりに、クリトリスというビンカンで小さなものがついているから」  てのひらで隠していた局部をそっと見せてくれて、彼女は微笑んだ。 「じゃあ、ぼくも今日から、ユミコちゃんのおちんちんは、『クリトリスちゃん』って呼ぶことにするよ」 「ありがとう、すごくうれしいっ」 「ちょっとだけ、ユミコちゃんのクリトリスちゃんをさわってみてもいい?」 「良いわよ。やさしくね。そっとね」  聖夜は、人差し指の腹で、真ん中をそっとツンツンと触れてみた。 「お父さんのとなんだかちがう。さわりごこちが、きもちいいねえ」 「ほんとうに? うれしいなあ。聖夜くんならいつでも触って良いよ」 「ほんとう? やったあ」  聖夜は爪を立てずに指の腹を使い、ふにふにふにふにと、揉み始め、触り心地の良さから止めることができずにいた。 「ああん、そんなに触ったら元気になっちゃう~。ストップぅ~!」  彼女の局部は、触り心地が変わり、硬く、ピンッとなってきた。 「これ、どういうこと? さっきまでとちがう」  きょとんとしながらも、揉む手を止められない聖夜の手を止めようと両手でおさえながら、彼女は教えてくれた。 「わたしのクリトリスちゃんを刺激したり、気持ち良いことをすると、こんな風に大きくなっちゃうの。このまま気持ち良いことをすると、先っぽにある『亀頭さん』から、『精液』が飛び出しちゃうのよ」 「ここが『キトウさん』?」  聖夜が先端の色が違うところ指差して聞いた。 「そうよ。揉み始めた時よりも顔を出しているでしょう? 大きくなるとひょっこり顔を出すのよ」 「ひょっこりだって。かわいいねえ」 「でしょう? 『亀頭さん』はビンカンな場所だからやさしく触ってね。ここと、裏側をやさしく触られるとドキドキしちゃうの」 「こんなかんじ?」  聖夜は、先ほどの、揉んでいた指の動きのまま、器用に撫で回した。 「あん、それ以上はストップストップぅ」  予想外の気持ち良さに、彼女は潤んだ瞳で停止をお願いしてきた。 「もう、聖夜くんったら気持ち良すぎるぅ」 「でも、『せいえき』でないねえ」 「『精液』を出すにはちょっとコツが必要なのよ」 「コツ?」  そして、彼女は、自分の局部で実演しながら、扱き方をフォームから丁寧に教えてくれたのである。 「はあはあはあ、聖夜くぅん、ティッシュを持って来てぇ」  脱力感と戦いながら、彼女は、ティッシュの中に出した、『精液』を聖夜に見せてくれた。 「大人の体になるにつれて、こんな風に聖夜くんもいつか『精液』を出せるようになるからね」 「うん」  そっと指で触ってみた『精液』は生温かくて、舐めると苦い味がした。 「あんまりおいしくないね」 「食べ物によって味が変わると聞いたことがあるけれど、食べるためじゃなくて、大人になって結婚した時に赤ちゃんを作るのに必要なものだから、仕方ないかも」 「ヨーグルトジュースみたいな、みためなのにねえ」 「ふふっ、そうねえ」  二人はくすくすと笑い合った。 「今のが、自分でおちんちんを触って気持ち良くする、『ひとりH』のやり方よ。他にも色々な呼び方があるけれど、可愛いからわたしはそう呼んでいるの」 「じゃあ、僕も『ひとりH』ってよぶ~」 「くれぐれも、お母さんには内緒だからね? バレたら、もうここには来れなくなっちゃうかもだから」 「大丈夫だよ。ぼくは、くちがかたいから」 「なら安心ね~。じゃあ、聖夜くんもやってみる?」 「うん!」  まだ体の作り的に、聖夜は射精まではできなかったが、 「えへへ、したのくちも、かたいみたい」 「やだ、誰がうまいことを言えと? ふふふっ。おもしろ~い」  彼女と同じように勃起をしてイクことはできたので、うれしかった。 「聖夜くん、ひとりでできたね、えらぁい」  彼女は頭を撫でた後、そっと、聖夜の小さなペニスを口に含んで、上下に唇を動かし始めた。 「やだ、やだ。きもちいいよお」  そして、彼女は聖夜にまたがると、片手で、自分の竿の裏側と、聖夜の竿の裏側を合わせると、こすり合わせ始めた。  唾液で滑りが良くなっていたので、だんだん動きが激しくなっていった。  そっと彼女が耳元でささやいた。 「ひみつのセックスだよ。聖夜くんにだけ教えてあげる」  聖夜は、「ひみつ」というフレーズだけでもドキドキしたが、耳元で囁かれること自体が初めてだったので、胸がキュンとなり、彼女をひとりじめしたい気持ちになってしまった。 「ユミコちゃん、すきっ」  聖夜は、局部を押し付けるように、彼女をぎゅうっと抱きしめた。 「聖夜くん......!」  彼女も同じように、抱きしめ返してきてくれた。  うれしくなって、聖夜も、耳元へ囁いてみた。 「もしもね、ユミコちゃんさえよかったら、僕とけっこんのやくそくをしようよ。そしたら、ユミコちゃんはずっと女の子でいられるでしょう? ぼくがお父さんみたいにいっしょうけんめいはたらくよ」  それを聞いて、彼女は涙を流しながらうれしそうに微笑んだ。 「うそ、わたしと婚約をしてくれるの? やだ、うれしすぎて、死にそう......!」 「けっこんしたらね、そこにある、ユミコちゃんがだいすきな、おおきなかがみをあげるね」  彼女は、木枠にコデマリが彫られて装飾が美しい大きな姿見に、女装をした自分を映すことが大好きだった。 「いいの? うれしいなあ。お城にあるようなデザインのこの美しい鏡に自分を映すとね、なりたい自分になれるの。女の子にもなれるし、お姫様にもなれたような気分になるんだ~」 「じゃあ、僕がいっしょにうつったら、ユミコちゃんの王子さまになれるかな?」 「まあ、それはステキ! 一緒にやってみましょう」  二人は鏡の前に立つと、くすくす笑い合った。 「ぼく、もっとおおきくならなくちゃね。これじゃあ、お姫さまとポチみたいだ」 「ふふふ。いつか魔法がとけたら、ポチはわたしのステキな王子様になって、むかえに来てくれるのよね?」 「うん、その時は、白馬にのって、むかえにいくよ」 「ステキすぎる、それえ」  聖夜は、目をキラキラさせて可愛く笑う彼女の頬に、キスをした。 「あ!」 「ユミコちゃんには、いつでも、えがおがにあうよ」  頬を赤らめる彼女に、聖夜は爽やかに笑ってみせた。  ――今から考えますと、本当に歯が浮きそうなくらいキザなことばかり言っていて、恥ずかしいですぅ。  それ以来、留守番の度に、二人は「ひみつのSEX」をするようになった。局部を重ね合う度に、彼女への想いが強くなっていくのである。  姿見を使った「ひみつのSEX」や「キス」の練習の仕方も教えてくれたので、彼女のいない日はそれで我慢をした。  鏡に映しながらは、より恥ずかしいことも知ることができた――。 「こんど、ふたりでするときも、かがみのまえでやってみようかな?」                     ★      ある日、聖夜は、そっと彼女に囁いたことがる。 「ユミコちゃん」 「なあに?」 「このまえ、ユミコちゃんのひみつをたくさんおしえてくれたから、ぼくのひみつもおしえてあげるね」 「聖夜くんのひみつ?」 「ぼくね、ひみつのなまえがあるんだ」 「どういうこと?」 「おかあさんは、ぼくのこと、『せいや』ってよぶけれどね、ぼく、だれかにずっと『かやちゃん』ってよばれていたこと、おぼえているんだ」 「不思議な話だね。誰に言われていたのかしらね?」 「わからないけど、すこぉしまえだとおもうよ」 「夢の中かしら? じゃあ、今日から二人きりの時は、『かやちゃん』って呼んでも良い?」 「うん。ユミコちゃんによんでもらえるなら、すごくうれしいっ」

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