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一日目 ~迎え火~ ⑤

「お前も着いたばかりなんだろ、いいのか?」 「うん、どうせ母さんたちは俺のことなんて気にしてないし」 「そんなことは」 「だって出迎えもないんだよ。世間なんてこんなもの、世知辛い世の中だよ」 「悟ってるな、お前」  いや、元々こいつはこんなやつだったか。そんなことを思っていると、彼の首に腕が回され、唇が塞がれた。 「影彦ってば、汗臭いよ」 「日照りの中歩いてきたんだ、しょうがないだろ。それにそう思うなら、すんじゃねぇよ」  ぎゅうと抱きしめ返すと、文句を言った割りには機嫌よく、彼の胸元にすりと頬を寄せてくる。  夏生と影彦は、同じ年、同じ月に生まれたいわゆる幼馴染だ。人口の少ない村では、学校もひとクラスしかない。専業か、兼業農家がほとんどのこの村では、子供たちは皆一緒に育つ。気づけば二人はなにをするのも一緒で、二人一組で扱われるほどだった。  それが変化したのは、思春期を迎える高校に入ってからだ。

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