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一日目 ~迎え火~ ⑦
「振られたな」
「相変わらず馬鹿だよな」
背後を振り返ると、麦わら帽子の少年と、しわだらけの半ば頭髪の禿げた老人が、縁側から彼の方を眺めている。
「じぃさんと、みつる。なにしてんだよ、こんなところで」
「晩飯がそうめんやって言うからさ、ご馳走になったろかと思て」
先ほどの邂逅で気まずくなっていた影彦の心中など気づいていないのか、みつるはなにごともなかったかのように、彼に屈託のない笑顔を向けた。
「ほれ、おまはんもなっちゃんにばかりやらせんと、手伝いに行かんか」
それより先におかえりの挨拶ぐらいあるんじゃないのか。そうは思ったが、祖父に言われて影彦は苦い顔をする。都会から何時間も掛けてやってきたのだ、もう少しくらい休んでもいいじゃないか。
そんな彼の表情を読んだのか、祖父はにやりと笑う。
「あんまり孫孝行をさぼっとると、ばぁちゃん、なっちゃんがおるからおまはんはもういらん言うかもしれへんぞ」
「なっ!?」
祖母がそんなことを言うはずはない。そうは思ってはいるのだ。影彦の慌てぶりにみつると祖父はげらげらと笑い転げた。
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